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国連

第59回 国連女性の地位委員会(CSW59)帰国報告会(2015年5月15日)

1.日時 2015年5月15日(金) 18:30~20:00
2.場所 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ 5階
小セミナールーム
3.プログラム 1. 「CSW59 北京+20について」
2. 「女子差別撤廃委員会(CEDAW)とジェンダーに基づく暴力(GBV):北京会議から20年の成果と課題」
4.講師 堀内光子(公益財団法人アジア女性交流研究フォーラム理事長)

   (公財)アジア女性交流・研究フォーラムは、国連経済社会理事会(ECOSOC)より与えられた協議資格に基づき、毎年、国連女性の地位委員会(CSW=Commission on the Status of Women)に参加しています。第59回目の開催となる今年は、当財団の参加資格により公益財団法人アジア女性交流・研究フォーラム理事長 堀内光子が参加しました。


CSW59 北京+20について

Seminar_20150515-1.JPG  まず、理事長の堀内から国連女性の地位委員会(CSW)についての説明がありました。1946年に発足し、2015年現在54カ国が加盟しているCSWは、国連におけるジェンダー平等政策策定・推進についての実質的な中心的決定機関(UN Womenは事務局)であり、国連経済社会理事会(ECOSOC)の下部機構となる機能委員会の1つです。経済社会理事会において、諮問的地位を持つNGO(非政府組織)は2014年の時点では、4045団体あります。CSW59 は、2015年3月9日から20日まで開催され、参加者は約8600名、参加したNGOは1100を超えました。CSWでは、本体会議と並行して、政府・国連機関が主催および共催する200のサイドイベント、NGOが主催する450のパラレルイベントなど多くのイベントが開催され、どのパネルディスカッションも非常に賑わいを見せたとのことでした。


Seminar_20150515-6.JPG CSW59の議題は北京+20で、第4回世界女性会議で決まった北京宣言および行動綱領と、女性2000年会議での成果文書についてのフォローアップが中心となりました。北京行動綱領とは、女性のエンパワーメントに関してこれから進めるものとして12重大関心領域を設定したもので、国連特別総会「女性2000年会議」政治宣言とは、北京行動綱領の完全実施に向けて更に行動をすることを誓約したものです。その流れから今回のCSW59では、それらの進捗状況の評価をすると同時に、現在の問題想起とジェンダーの主流化の状況を検討しました。また、世界の地域・国レベルでCSW59の準備として、166カ国での評価実施や、地域会合も開催されたことも中心議題に上がりました。また、国連が作成した北京+20のプロモーションビデオが紹介され、セミナーの参加者には20年前の北京会議の雰囲気を味わっていただきました。

 

  2015年は以下の4点において節目となる重要な年です。 ①第2次世界大戦終了かつ国連創設70周年という節目の年であること ② 北京(第4回世界女性会議)+20の年にあたること ③先進国と開発途上国両方を含めての課題となるポスト2015年開発課題を策定しなければならない年であること。貧困削減は今秋に開催される国連会議の重要課題であり、2015年に終了するミレニアム開発目標(MDGs)と持続可能な開発目標(SDGs)を統合させなければならない ④日本国内の出来事としては、女子差別撤廃条約批准30周年の年にあたること


  CSW59の成果として、1つの政治宣言と2つの決議が出されました。政治宣言では具体的な目標値として50-50 by 30、つまり2030年までに男女平等を完全に実現することを誓約し、これに向けて国連は努力を進めていくことになりました。具体的行動に以下の6点が挙げられました。 ① 法・政策・戦略の実施強化 ②ジェンダー平等制度的メカニズム(組織)の強化・支援強化 ③差別的批判や、今でも大きく残っているステレオタイプの変革 ④資源ギャップ縮小のための顕著な資源の拡大 ⑤現行コミットメント実施説明責任強化 ⑥能力構築向上、データや統計の収集、監視、評価の向上・改善


  この20年間の評価として、ジェンダーの問題に関して進歩はしたものの速度は非常に遅く、格差は解消していません。ジェンダー平等政策を推進していくためには、⑥ のように監視をしたうえでのデータ収集や統計が、今後の優先課題として必要不可欠です。 1つ目の決議として、国連女性の地位委員会の今後の作業の組織と方法が全会一致で採択されました。CSWの北京会議、2000年女性会議のフォローアップを主要責任と再確認し、ポスト2015年開発課題フォローアップの貢献を確認しました。ただし、NGOに関しては経済社会理事会の諮問的地位であるとの位置付けに変更はないままに、NGOの最大限の参加を奨励しました。2つ目の決議では、パレスティナ女性の状況と支援が投票で採択されました。 


女子差別撤廃委員会(CEDAW)とジェンダーに基づく暴力(GBV):北京会議から20年の成果と課題について

  続いて、3月9日に行われた「女子差別撤廃委員会(CEDAW)とジェンダーに基づく暴力(GBV):北京会議から20年の成果と課題」のCSW59サイドイベントに関しての報告がありました。スピーカー5名のうち2名は国のハイレベルの有志者、3名はCEDAWの現あるいは前委員という構成で、理事長の堀内がモデレーターを務めました。


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 女子差別撤廃委員会は、ジェンダーに基づく暴力の予防あるいは被害者の保護を通じて女性のエンパワーメントに重要な役割を果たしており、今回のサイドイベントではその女子差別撤廃委員会および各国政府の取り組みについて議論を行いました。国連女子差別撤廃条約とは、女性の人権の幅広い分野をカバーし、法律だけではなく慣習・慣行の修正・廃止まで呼びかけた女性の人権に中心を置いた条約です。1979年に国連総会で採択され、日本は今年で女子差別撤廃条約批准から30周年となりました。ただし、条約が出来た当時、女子差別撤廃条約に暴力の明示規定がなかったため、1992年のCEDAW11会期で女性に対する暴力の討議・研究が行われ、1993年国連総会で「女性に対する暴力撤廃宣言」が出来ました。


 北京会議から20年の成果として、1999年に国連総会で採択された選択議定書では、個人通報や調査制度が設けられたことが挙げられました。今後の課題は、女子差別撤廃条約と北京宣言および行動綱領の実施と、ポスト2015年開発課題におけるジェンダー平等の中で暴力問題を取り込むことの2点となりました。


  KFAWとしても、完全なジェンダー平等の実現に貢献できるよう、日々情報発信に努めてまいります。