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KFAWアジア研究者ネットワーク開催セミナー

KFAWアジア研究者ネットワークセミナー 2016年度 第2回(2016年5月29日)
「イランの婚活―イランにおける社会変化と結婚事情―」

1.日時 2016年5月29日(日) 10:00~12:00
2.場所 北九州市大手町ビル5階 小セミナールーム
3.講師 森田 豊子(鹿児島大学グローバルセンター特任准教授)

講演要旨

 イランは国民のほとんどがイスラーム・シーア派の約8000万人の人口を抱える中東の大国です。特に第二次世界大戦後に西洋化、米国化が進められ、1963年には女性参政権も認められました。女性議員たちを中心に、イスラーム法から女性を守る家族保護法が制定されたものの、革命後にはその運用も停止されました。革命後はヴェール着用の義務化など社会のイスラーム化が進みました。
  しかし、イランの女性たちは地道な活動を通じて、自分たちが置かれている現状を少しずつ変化させてきました。夫からの恣意的な離婚を防ぐための法改正、イスラームで4人まで認められている一夫多妻を制限するための条件付けなど、革命前の家族保護法で一時的ではあったが認められていた権利の獲得のために運動を続けました。
 伝統的に、イランでは家族などからの紹介による結婚がほとんどでした。地方では高等教育を受けることなく10代で結婚する女性が多くみられました。しかし、現在のイランでは女性たちの高学歴化、社会進出が進み、他方で若者の失業が多いため、これまでのようにみんなが結婚できる社会ではなくなってきています。晩婚化、少子化、離婚の増加などの問題解決のために、政府は新しい家族保護法の制定を開始しました。この制定にあたっても、女性たちは自分たちの要求を通すために運動し、一部の法改正に成功しました。この運動では、イラン国内の女性たちの中でもイスラームへの信仰が深い人も、西洋的な文化を好む人もどちらも協力することに成功しました。

KFAWアジア研究者ネットワークセミナー2016年度第2回(1) KFAWアジア研究者ネットワークセミナー2016年度第2回(2)

 革命後にイスラーム化した社会の中で、イランの女性たちは抑圧されているただの客体ではなく、主体的に社会にかかわり、社会を変えていこうとしていることがわかります。「何もしないでただ耐えている女性」というステレオタイプを壊し、イスラーム世界における女性の多様なあり方を知り、今後、多様な形の協働のあり方に思いを馳せる時間になったのではないでしょうか。