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KFAWアジア研究者ネットワーク開催セミナー

KFAWアジア研究者ネットワークセミナー 2017年度 第2回(2017年12月15日)
「それでも息子がほしい ネパールの男児選好の現在」

1.日時 2017年12月15日(金)14:00~16:00
2.場所 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ5階 小セミナールーム
3.講師 佐野麻由子(福岡県立大学准教授)
サンギータ・バンダリ女史(ネパール NGO Sunrise Orphanage代表)
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講演内容

  ネパールでは、都市部、農村部、社会的階層の上下に関わらず、広く行われている女児の中絶が社会問題になっています。このセミナーでは2015年~2017年に実施した調査結果をもとに、その実態と社会的背景を紹介しました。
  ネパールでは、1985年以降、女性100に対する男性の割合が105から107と高く、女児を中絶しているのではと疑われています。近年男児選好が顕著になった国の特徴として、①過渡期的な発展段階にある、②出生率の急激な低下がみられる、③出生前スクリーニング検査が一般に利用でき中絶手術が普及している、ことなどが挙げられます。ネパールでも、2002年に中絶が合法化され、以後顕著になっているという指摘もあります。2016年10月から翌年3月に実施した調査では、65.8%の人が男女同数の子どもを理想としている、息子が必要と回答した人は47%、20.2%の人が性別判定を受けた経験を持つ、性別判定後に中絶した人は16.6%でした。分析結果では、都市と農村を比べると、都市部の人々の方が男児を選好する、相対的に貧しい人、低学歴者、低カーストの人々が男児を選好しているようです。
  サンギータさんから、ネパールでは「娘は不運とともに生を受ける」「男児の誕生は天国行きを約束する」といったことわざが紹介されたほか、「外では息子じゃなくても良いと言うが、心の中は別」、「息子が欲しくて、離婚して新たな妻を持つ人がいる」、「教育がある人でも男児ができやすいとされる妊娠時期を見計らう」といった補足がなされました。また、男児を望む理由として、父系社会であるため、家やカーストの存続には男性が必要、相続の優先順位は息子に与えられている、息子の嫁は両親の面倒を見てくれるが、結婚したら娘は他家の一員になってしまう、火葬の際に火をつけることができるのは男性、娘が嫁ぐ際のダウリー(女性から男性への持参金)が重荷になっている、といったことが考えられるそうです。
  佐野麻由子先生は、当フォーラムの客員研究員として、2014-15年度の2年間調査研究 をしていただきました。ネパールから日本へ雇用や留学を目的に入国する人々は年々増えており、2014年度末時点で、在留ネパール人は4万2千人超、男性2万8千人、女性1万4千人、都道府県別では東京1万4千人、福岡4千人、愛知3千人、以下千葉、神奈川などで、福岡で暮らすネパール人は、2006年の240人から8年間で17倍に増えているそうです。客員研究員研究で佐野先生には、こうした日本へ在留するネパールの人々の渡航理由、渡航手続き、日本でのネパール人コミュニティや保健医療などの状況について調査をしていただきました。

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  今回のセミナーでは、佐野先生が交換留学生として滞在したネパールで出会ったサンギータ・バンダリさんと共同で調査されたネパールの子どもたちが置かれている状況について、詳しくお話しいただきました。
  ネパールの人たちは、留学生や社会人として身近に暮らしています。このセミナーが、ネパールの人々や文化を少しでも理解する一助になればと思います。