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国際理解促進事業

国際セミナー「シンガポールの女性はいま」を開催 (2009年10月26日)

 さる10月26日、シンガポール共和国大使館と共催で、国際セミナーを開催しました。今回の企画は、アジア太平洋地域24カ国の在京大使館の大使夫人を中心に構成されるアジア婦人友好会の大島初子理事の協力により実現したものです。

1.日時 2009年10月26日(月)15:00~16:45
2.場所 北九州市立男女共同参画センター・ムーブ 5階 大セミナールーム
3.講師 モーリーン・タン(駐日シンガポール共和国大使夫人)
4.参加者 80名
5.共催 シンガポール共和国大使館
Singapore Seminar 2009-1
共催したシンガポール共和国大使館のスタッフたち

 約80名の方が参加する中、シンガポール共和国モーリーン・タン大使夫人は参加者からの質問に答えながら、現在のシンガポール女性が置かれている状況について講演しました。

 冒頭、モデレータ役の当財団理事で北九州市立大学教授の田村慶子さんから、シンガポール共和国の概要について紹介がありました。淡路島ほどの面積に約500万人(2009年499万人)が生活する多民族国家で、男女間賃金格差、政府や企業での女性管理職の割合等の統計からはシンガポール女性の社会進出は進んでいるものの、出生率の低下と未婚率の上昇も進んでいるそうです。


 初めに、モーリーン・タン大使夫人からシンガポールで女性の社会進出が進んでいる状況について報告がありました。彼女によれば、シンガポールでも男性は家族の大黒柱として働くべきで、女性は夫のよき伴侶として子育てや教育に役割を果たすべきだという伝統的な観念が残っており、ジェンダー平等な状態ではないといいます。

 働き続けたいと女性が思っても、現実には、母親になると仕事をあきらめる人が出てきます。多くの女性は育児と仕事の両立で困難を感じているのが現状です。政府によるインセンティブはありますが、それでも母親になると仕事をやめる女性が多いのです。若い時は仕事を頑張っても、一度離職してしまうと、同じポジションに戻ることは難しいからです。

 タン夫人は教師として35年間勤め上げ、2人の息子を育てましたが、若い時同様の問題に直面しました。しかし現在政府は、若い女性に働くよう奨励しています。彼女の経験では、子育ての最初の10年間にある母親は常に自分の子がきちんと面倒をみられていないのではないかという気持ちと仕事のこととの間で引き裂かれる気持ちになるといいます。

Singapore Seminar 2009-2
右:シンガポール共和国大使夫人
モーリーン・タンさん
左:一等書記官クー・シャオフォンさん

 この最初の10年を受け入れることができれば、大丈夫だと言います。子どもが8~10歳になれば学校から帰って誰かに面倒をみてもらえるからです。

 タン夫人は家事労働者の存在があればこそであったと振り返ります。シンガポールでは、外国人家事労働者を住みこみで雇用することができます。家事労働者に従事する外国人を招くのは簡単ではありませんでしたが、この状況は変化しています。

 子どもを出産後職場に復帰するかは個人の選択の問題です。しかし、シンガポールでは働く女性に対するインセンティブ制度も導入され、シンガポールでは卒業から定年まで勤め上げられるような体制を作り上げているのです。タン夫人自身、35年間、教師を務め上げました。


 第2の論点として、シンガポールの女性の社会進出は進んではいるものの、女性の平均労働力化率では日本並みでそれほど高くはないという現実があります。現在、シンガポール政府が実施している政策について、クー・シャオフォン一等書記官から説明がありました。

 天然資源に乏しいシンガポールは、「人(ひと)」が重要な国家資源であると、政府は考えています。男性には18歳で兵役義務がありますが、女性の兵役への参加については政府は否定的です。というのは女性にはもっとさまざまな形での社会貢献を奨励しているからです。

 伝統的な男女の役割についての考え方を改めるため、政府は、女性の権利を政治、社会、経済的に保護する「女性憲章(チャーター)」を1951年に制定しました。さらに1996年には、女性や子どもに対する保護を手厚くするよう改正しました。

 教育における男女機会均等により、大学入学者の約55%が女性となるなど、女性の教育向上に伴い、女性の労働力率も20年前に50%であったのが60%に向上しました。政府系投資ファンド会社テマセクホールディングス、シンガポール最大の電気通信会社シンテルなど、企業のCEOへの女性就任もみられるまでになりました。

 中でも水処理システムで世界的に事業展開しているハイフラックスのCEOであるオリビア・リムさんのサクセスストーリーはよく知られています。

 また、シンガポール女性の政治参加についても、女性国会議員数で20年前に4名であったのが今は22名に増加しています。


 しかし、このようなシンガポール女性の社会進出とエンパワーメントは意図せぬ社会的影響をもたらしています。経済的自立を得た女性は、これまでの伝統的役割に満足できなくなるとともに、男性の意識もそれについていけなくなってきたのです。こうしてジェンダー平等政策の推進により晩婚化が進むとともに、子どもをもたない夫婦が増加し、出生率が低下するなど新たな社会問題を生んだといいます。

 これに対して政府は、現在、次のような政策を実施しています。

  • ベビーボーナス制度の導入
    1,2人目の子どもに対して、それぞれ4千シンガポールドル(SGD)、3,4人目に対して、6千SGD(1SGD=約63円;09年12月)を政府が支給。
  • 16週の有給育児休暇の付与(8週分は雇用者負担、8週分は政府負担)
  • 育児負担軽減のための幼児・育児サービス補助金の毎月支給
  • 出産や働く母親等を対象とする所得税軽減措置
  • 外国人家事労働者雇用のときに課税される税金の軽減措置
  • 保育施設(現在750施設で5万人収容)の増設

 講演後の質疑応答では、民族の違いによる女性の社会進出状況のほか、福祉、医療や子育て支援など、さまざまな角度からシンガポールの女性が置かれている状況について考えました。

 参加した方からは、自分自身しっかりした考え方と目標をもって生活しているシンガポール女性に感心するとともに、日本人も学ばないとアジアの発展から立ち遅れていくという危惧が聞かれました。改めて経済成長の源泉としての「人(ひと)」の大切さを考えさせられるセミナーとなりました。

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