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プログラム開発

「デートDVを防ぐには~効果的な方法と実践~アウェアのデートDV防止プログラム」(2009年11月10日)

第2回KFAWデートDV防止プログラム開発 公開講演会(講演要旨)
「デートDVを防ぐには ~効果的な方法と実践~
アウェアのデートDV防止プログラム」


  • 日 時    2009年11月10日(火)18:00~20:00
  • 場 所    北九州市立男女共同参画センター5F 大セミナールーム
  • 講 師    アウェアDV加害者プログラム&デートDV防止プログラム
           代表・ファシリテーター 山口のり子
  • 参加者   37人

 デートDVは誰にでも起こりうる身近な問題です。デートDVはどのようにして起こるのか、どうしたら防げるのか、起こってしまった場合どうしたらよいのか。自称「女男平等・協働参画社会クリエーター」として女性をエンパワーするために活動し、DV加害者プログラム、デートDV防止のためのプログラムを実施している山口のり子さんにお話しをお聞きしました。



【報告】
1.DVは「力と支配」
暴力の種類
① 身体的暴力…殴る・投げつける・突き飛ばす・蹴る
② 言葉による暴力/精神的暴力…怒鳴ったりしてこわがらせる・勝手に決める・馬鹿にする・無視
  する・他人と連絡を取れないようにして孤立させる・携帯のメールをチェックしたりアドレスを勝手
  に消す・監視して行動を制限する・馬鹿、死ねなどとメールをしてくる・自分の暴力はたいしたこ
  とはないとして相手の所為にする
③ 性的暴力…相手が望まないのに性行為を強要する、応じないと不機嫌になる・いやがるのに
  ポルノを見せる・避妊しない
④ 経済的暴力…お金を貢がせる・お金を払わせる・借金をさせる・アルバイトをさせるあるいは辞
  めさせる・お金を取り上げるなどがある。

2.デートDVの特徴
① 若い人たちの交際中におきるDV
② 嫉妬を理由にDVする
③ カップル幻想(カップルでいたら周りから認められる)
④ 仲間からのプレッシャー
⑤ 恋愛についての思い込み ⑥ 支配も嫉妬も束縛も愛情の表現だと思い込んでいる
⑦ 暴力容認度が高い  暴力=愛情表現
⑧ ジェンダー(彼女・彼氏役割の期待と縛り)にとらわれている
⑨ 彼を悪者にしたくない、彼をかばいたい。
⑩ 性的暴力を自覚できない、避妊をしないSEXを強要する
⑪ 自分のことを知られているので別れるのが怖い
⑫ 親に相談しない。するとしたら友だち
⑬ 大人たちに理解してもらいにくい
⑭ 誰に相談していいかわからず被害者が一人で悩む
⑮ DV被害者のための相談機関があることを知らない
⑯ 知っていても行けない
⑰ DV防止法に適用されない(配偶者、元配偶者が対象)
⑱ 被害者支援が難しい、その家族への支援も必要

3.デートDVの要因
① 力と支配…家庭には児童虐待、学校には体罰や部活のしごき、いじめがあり会社ではセクシ
   ュアルハラスメント、パワーハラスメント、リストラがあり力を持つ人は持たない人を力で押さえ
   つけようとする。
② 暴力を容認する風潮…社会に暴力が溢れているため暴力で問題を解決していこうというメッセ
   ージが社会に充満している。
③ ジェンダー・バイアスと男女平等・共同参画でない社会…ジェンダーとは社会や文化によって
   つくられた社会的な性別で、バイヤスは偏見である。男らしさとは勝つ、泣かない、感情を外
   に出さない、自分は正しい、リーダーシップを持っているなど自己中心的で攻撃的で独占的。
   女らしさは優しい、控え目、おとなしい、かわいい、か弱い、気がきくなど受動的。
 以上のような危険な価値観のある家庭や社会で、子どもたちは見て、聞いて、体験して学習しながら大きくなっていく。このような環境で育った若い2人が出会いつきあうようになると、男の子は、リードしなくてはならない、言うことを聞かせなければならないと考え、自己中心的で自分が優先されてあたりまえと思い、攻撃的、威圧的になる。
 一方、女の子は甘えたい、頼りたいと考え、はっきりと自分の考えを言わなくなる。2人の間に力の差ができ、関係性は対等、平等ではなく支配し、支配される関係、すなわち主従の関係になる。しかし、愛し愛されているからと思いこみ、デートDVだとはなかなか気がつかない。支配も嫉妬も束縛も愛情の表現だと思い込みやすい。デートDVがエスカレートすると、ストーカーや監禁や殺人なども起きる。
 被害者は自信を失い、自尊心を失くし、自己肯定ができなくなり自分らしさを失い心が深く傷ついて混乱する。このような状況から回復するには時間がかかる。

4.デートDVの予防
 デートDVする人は、相手を自分の思い通りに動かそうとして、相手の心へのダメージだけでなく、生活、部活や勉強、友人とのつき合いなどにもダメージを与える。また避妊をしないSEXを強要することで、妊娠させる恐れもある。望まれず生まれた子どもへの虐待につながる可能性もある。
 デートDVは親密な関係の人への暴力である。デートDVは人権侵害であり、虐待であり、犯罪である。デートDVは、力と支配や暴力容認、ジェンダー・バイアスなどの危険な考え方、価値観から起きることなので、まずそれに気づいて捨てる、すなわち、学び落とす(unlearn)ことが重要である。そして自分らしさを大切にする、つき合う相手を対等、平等な人として尊重する、相手の気持ちを思いやり、共感する、自己決定権を尊重するという価値観を学んでいかなくてはならない。誰にでも起こりうる問題なので、子どもたちには、自分のことだと感じてもらえるようなやり方で、授業として防止教育を広めていく必要がある。学校、教育、社会全体の問題として考えなくてはいけない。

☆    親を含めてまわりの人はどうしたらいいのか(被害者に対して)
① 根気よく話を聞きましょう
② 批判的にならないようにしましょう。あなたのせいではないと繰り返し伝えましょう
③ 質問攻めにするのではなく、対話を通じてやりとりしましょう
④ 「はい」「いいえ」で答えてすんでしまうような質問ではなくて、「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「な
  ぜ」「どのように」など、次の話題につながるような質問をしましょう
⑤ 怒りを表すのではなく、心配していることを表わしましょう
⑥ 加害者を悪者扱いしたり、別れることを強いたりしないようにしましょう
⑦ 身の安全を確保するための計画をいっしょに立てましょう。緊急事態が発生した場合にどうした
  らよいか理解しているか確認しましょう
⑧ 助けが必要な場合はいつでも(できる範囲で)連絡を取ってかまわないと伝えましょう
⑨ ふたりの間に実際は何が起きているのか、相談するのに一番よい所はどこかなど、情報を収
  集しましょう。
⑩ デートDVの情報をできるだけ伝えましょう
⑪ 警察やDV被害者専門機関へつなげましょう
⑫ 近所の人たちや家族や学校の職員たちに気をつけてほしいことを伝えておきましょう
⑬ 別れる場合、別れない場合、それぞれどうするのか、自分で判断するよう力を貸しましょう。そ
  して何らかの判断を下した場合はそれを応援しましょう
⑭ その人をコントロールしたり、アドバイスを押しつけたりしないようにしましょう
⑮ 自分の長所に目を向けて自信を取りもどしたり、交際相手以外に友人や家族がいることや、
  交際を始める前の生活などを思い出したりするよう働きかけましょう
⑯ どなったり、命令したり、最後の条件(別れないなら勘当だ!など)を出したりしないようにしま
  しょう
⑰ その人の力を信じましょう

☆    まわりの人はどうしたらいいのか(デートDV加害者に対して)
① 話をよく聞きましょう
② 相手にも責任があるなどと言って、暴力を肯定しないようにしましょう
③ 暴力をふるわれた相手の痛みや苦しみに気づくよう促しましょう
④ 加害者はたいてい自分の暴力を正当化し言い訳をします。暴力は自分で選んだことだとはっき
  り伝えましょう
⑤ 交際相手への暴力も犯罪であり、逮捕される可能性があることを伝えましょう
⑥ 暴力は問題解決の方法にならないし、ふたりの関係を壊すだけだと伝えましょう
⑦ 相手に会うのをしばらくやめるよう勧めましょう
⑧ 女性蔑視の考えをもっているようであれば、その考えを捨て女性を尊重するように話しましょう
⑨ その人の人格を否定するようなことや全面否定をしないで、暴力行為を人としての価値とは切
  り離して見ましょう
⑩ 暴力や虐待は学んでしまった価値観からすることであり、暴力的・虐待的態度や行動が習慣
  化しているということに気づくよう働きかけましょう
⑪ 自分のDV行動について責任をとること、つまり相手の決断(別れるなど)を受け入れたり、自
  分を変える努力をしたりするよう助けましょう
⑫ 暴力をふるうような態度・行動は、本人が決意し努力したら変えられるということに気づくよう助
  けましょう
⑬ その人の怒りや落胆などの気持ちにも耳を傾けましょう
⑭ デートDVの情報をできるだけ伝えましょう
⑮ その人が信頼できる大人や専門家に助けを求められるよう支えましょう

おわりに
DVは社会が起こしている問題。人々の間違った意識、価値観がDVを生み出している。一人ひとりが自分の問題だということに気づいて価値観を変えなければ、DVはなくならない。



相手の暴力的態度の見分け方

デート相手は…
? 1. あなたのことを「きたない」「バカ」など人をおとしめるいやな言い方で呼びますか
? 2. あなたが他の用事で会えなかったりすると、自分を最優先にしないと言ってふてくされたり
   怒ったりしますか
? 3. あなたが誰と話すか、家族や友だちの誰といっしょにいるかなど、何でも知りたがって聞
   いてきますか
? 4. しょっちゅう携帯に電話してきて、あなたがどこで誰と話したり会ったりしているかチェック
   しますか
? 5. 怒ったとき物にあたるなど、あなたが怖いと感じるような態度・行動をしますか
? 6. あなたへ怖い態度や行動をしたあと謝ることが多いですか
? 7. すごくやさしいときと、すごくいじわるでいやな態度のときとが極端ですか。具体的には
   「俺(私)には君(あなた)しかいない」とやさしく言ったかと思うと、「おまえ(あんた)は本当に
   ばかだ」とばかにしたりするなど
? 8. ふたりがけんかしたとき、あなたが怒らせるようなことを言ったからだとか言ってあなたを
   責めますか
? 9. あなたが何かについて話そうとすると話をそらしたりして、あなたの話をちゃんと聞いてく
   れないことが多いですか
? 10. よく約束を破りますか
? 11. あなたの携帯を勝手にチェックして、男(女)友だちのメールやアドレスを消せと命令した
    り消してしまったりしますか 
? 12. 「僕(私)のことが好きならいいだろう」とあなたが気が進まないことをさせます
? 13. あなたの希望や考えを尊重しないで勝手に決めることが多いですか
  
*****ひとつでも該当する項目があったらデートDVではないか考えてみましょう*****
  
  


自分が暴力的な態度をとっていないかチェック

あなたは…
? 1. デート相手が自分の意見に従わないといらいらしたり怒ったりしますか
? 2. 相手が自分だけでなく、他の人とも仲良くしているのに嫉妬して責めたりしますか
? 3. 相手がどんな人とどんな話をしているのかとっても気になって聞いたりしますか
? 4. 相手に何をするか、誰と話すか、どこへ行くか、何を着るかなどについて指示し、それは
   相手のためだと思っていますか
? 5. 相手に向かって「俺(私)とあいつ(ときに人、物、ことがらなど)のどっちが大事なんだ!」
   という言い方をしますか
? 6. 腹を立てたとき、相手の目の前で物をたたいたり、壊したり、投げたりしますか 
? 7. 腹を立てたとき、相手の腕や肩をつかんだり、押したり、たたいたりしますか
? 8. あなた自身の問題や自分がいらいらしていることを、相手のせいだと責めますか
? 9. 相手がしたことをとがめるとき、相手をたたいたりしますか
? 10. いつも相手をリードしなければと思っていますか
? 11. 二人のことでも、相手の考えや希望を尊重しないで、自分ひとりで決めることが多いで
   すか
? 12. 相手は自分より劣っていると思いますか
? 13. 付き合っている相手を「自分のもの」だと思っていますか

*****ひとつでも該当する項目があったら自分の態度・行動を見直しましょう*****




【質疑応答】
Q1 加害者にはDV家庭に育ったというように被害者体験があると聞くけれど、そういう問題はどのように取り扱っているか
A1 アウェアの加害者プログラムは間違った価値観を改めるための教育だ。精神的な病気で、あるいは心因的な問題をかかえているからDVをするのではない。虐待を受けた人が必ずしも加害者にはならない。虐待された経験を反面教師としてDVをしない人もいる。子どもの頃に虐待されたことがトラウマになっている参加者には、1対1のカウンセリングなどを勧めるが、アウェアの加害者プログラムはそれがメインではない。


Q2 加害者はアウェアの加害者プログラムにどのようにしてたどり着くのか
A2 ① 社会の介入…アメリカ(ex.カリフォルニア州)ではDVは犯罪である、大きな社会問題であるという事で40年間取り組んできている。通報があればポリスが飛んできて、状況証拠があれば積極的に逮捕するように義務づけられている。逮捕された加害者は、裁判所命令で更生のプログラムに参加しなければならないようになっている。アメリカでは社会が加害者に更生を迫る。残念ながら日本には社会からの突きつけはない。
② パートナーからの突きつけ…被害者が支援を受けて自立し、変わるか離婚かどちらかしかないと加害者に突きつけなければ、加害者は更生プログラムを受けにきたりしない。


Q3 加害者のまわりの人とはどういう人を想定しているのか
A3 デートDVの場合は仲間や親、教師など。そういう人たちが介入しないといけない。


Q4 中学校、高校で限られた時間内に効果のあるデートDV防止教育を実施する時、どこに重点を置けばよいか
A4 日本の教育現場では、防止教育を90分という時間内に、学年全体あるいは学校全体、ときには1,000人を対象に実施するのが現状。これがベストであるとは思わないが、やらないよりやった方がよい。充分ではないが気づきのきっかけになるのではないかと思う。ロールプレイをしたり、グループで話し合ったりして、子どもたちに自分の問題として考えるようにしてもらう。デートの経験のない子どもにも情報を与え、気付いてもらう。予防接種のようなものである。


Q5 体育館で1,000人を対象にDV防止教育を実施する時場合、どのようにするとよいか
A5 1,000人位でも男女ペアで出てもらってロールプレイをする。100人ぐらいだったらグループワ-クをして意見を交換し合う。あとで子どもたちの意見を拾う。話すことは意識変革につながるので有効である。グループワークができない時は用意した台詞を読んでくれた生徒に意見を言ってもらう。アウェアは、人数が多くても具体的に分かりやすく実施することを大事にしている。


Q6 DV防止教育を実施している時、男子生徒は下を向いたり、眠ったりまじめに聞いていないようだが、男子生徒を引きつけるにはどうしたらよいか。
A6 男子生徒だけを責めるように話さないよう工夫する。しかし統計では加害者は男性の方が多いという事実を伝え、なぜそうなのかを知ることが大事だとも伝える。参加態度はあまり気にしないでいいと思う。子どもたちは交際やSEXには興味も関心もあるし、学ぶ必要のあるテーマである。テーマに関心があるから私語も多くなるが、結構、耳を傾けている。しかし実施者の工夫は大切である。


アウェアの加害者プログラムについてお知らせ
 アウェアでは加害者プログラムも実施しているので、関心のある方は東京で開催する講座にぜひご参加ください。
 アウェアの加害者プログラムに通って気づきを重ねた加害者の男性たちの中には、一般の人たちの前で自分の体験や気づきについて話してもいいと思うようになる人が出てくる。また、取材も受けていいと思う人も出てくる。なぜこのようなことを私が男性たちに勧めるかというと、DVをした人はパートナーに山のような責任があるけれど、社会にも迷惑をかけていて、社会に対しても責任があるから。社会に対する責任の取り方の一つとして、体験談を話すなどして周りの人や社会を変える努力をしてほしいし、それができる人になってほしいと男性たちに常に話している。
 なおデートDV防止教育プログラム・ファシリテーター養成講座は、東京と関西で毎年開催しているので、そちらにもぜひご参加を。


PDF版は、こちらからダウンロードできます。

c aware アウェア DV加害者プログラム  (無断で転載・コピー等しないようお願いします。)
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