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スタディツアー

KFAW仙台スタディツアー2016報告会(2017年3月15日)

1.日時 2017年3月15日(水)13:30~15:00
2.場所 北九州市大手町ビル5階 小セミナールーム
3.プログラム ①報告 仙台スタディツアー2016コーディネーター 西村 健司
((一社)コミュニティシンクタンク北九州 理事/事業統括)

②パネルディスカッション 仙台スタディツアー2016参加者
4.参加者 47名
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 KFAWでは、2016年12月に実施した仙台スタディツアーで学んだ被災地の貴重な経験を多くの方に伝えるために報告会を開催しました。まず、本ツアーのコーディネーター西村 健司さんより全体の報告があり、その後、ツアー参加者によるパネルディスカッションが行われました。

【報告要旨】仙台スタディツアー2016コーディネーター 西村 健司さん

  私たちが現地に行って感じたのは、「平常時にできないことは災害時にできない」ということです。そのために日頃から次の3点が特に大切であることを学びました。

①地域づくりが必要
②意思決定の場に女性の参画が急務
③女性リーダーが欠かせない、女性リーダーの育成が必要

①地域づくりが必要

 宮城野区岩切地区の住民は、震災前に「岩切・女性たちの防災宣言」を作成していました。これは、防災訓練に本当に来て欲しい人たちに参加して欲しいという思いからでした。仙台市では昭和53年に宮城県沖地震が発生し、30~40年に一度大地震が来るという認識が広まっており、防災意識が北九州市に比べて高かったのです。2011年の震災時、防災宣言を作った方々が自主的に避難所に集まって支援活動を行いましたが、支援物資の配布などをめぐりさまざまなトラブルが生じました。この経験を経て、新たに「岩切・女性たちの防災宣言2015」が作成されました。



 青葉区片平地区では、震災前からまちづくり活動が活発でした。「片平地区平成風土記」の作成がきっかけとなり、まちづくり計画や組織的な防災対策へと取組みは広がっていきました。地域のまとまりができていたので、震災翌日には災害対策委員会を立ち上げることができました。現在は、今までまちづくりに関わりのなかったマンション住民や若者を巻き込みながら、地域の防災体制の強化を図っています。



 宮城野区中野地区は、津波ですべての家が流された地域です。避難所では、地域でまとまって、声を掛け合いながら生活していました。仮設住宅に移るときも、同じ町内で入居できるようにお願いしました。仮設住宅では防音が十分でなくトラブルもありましたが、あいさつなど普段からの関係づくりやコミュニケーションで解決していきました。また、住民たちがもともと住んでいた場所を忘れないように石碑を建てました。

②意思決定の場に女性の参画が急務

 震災時、(特非)イコールネット仙台では、洗濯代行ボランティア、物資支援やサロン活動など女性のニーズを掘り起こすための活動をしていました。
その活動を通じて、次のような課題が明らかになりました。

・運営リーダーのほとんどが男性で、女性の声がなかなか届かなかった。
・避難所ではプライベート空間(仕切り、更衣室、授乳室)がなかった。
・食事は女性が作るものと考えられ、調理室で休みなく調理していた。
・女性に必要な物資(下着・化粧品・生理用品など)が届かなかった。

 また、エル・パーク仙台館長の加藤さんも、避難所においても、復興の過程でも、リーダーとなった女性は少なかったと語っています。

 このような課題を解決するため、次のことが重要です。

・避難所で女性の要望をつなぐための女性リーダーの存在
・避難所内の最低限のプラバシーを確保するスペース
・性別による役割分担意識の変革、「誰もができることをやる」という意識づくり
・避難所での多様なニーズ(帰宅困難者、外国人など)に対応するための窓口や施策

③女性リーダーが欠かせない、女性リーダーの育成

 岩切地区の菅野さんは、震災時、リーダーとしての知識や判断力が不足していたために、避難所運営で困難を感じたそうです。その後、リーダーとして判断力をつけるための養成講座を受講し、現在、女性防災リーダーとして活動しています。防災リーダーとして活動を継続することで、地域の人が認めてくれるようになったとのことです。

 東日本大震災が発生したのは昼間だったため、地域に残っていたのはほとんどが女性たちでした。女性たちはリーダーとしての訓練を受けていなかったので、なかなか自ら行動を起こすことができませんでした。女性がリーダーとして力を発揮するためには、女性リーダーの育成が必要です。

 このスタディツアーに参加し強く感じたのは、日頃の地域活動に女性の視点が必要であり、判断力を求められる女性リーダーを増やすには、日頃からリーダーを育成する必要があるということです。また男女を問わず、災害時には自分のできることをするという意識変革が大事であり、男性も女性も常日頃から地域活動に関わって、防災への備えをしておくことが求められているということです。

【パネルディスカッション】

 地域、女性団体、行政で活躍されている参加者がパネルディスカッションに参加し、ツアーで学んだこと、またそれをどのように自分の活動に活かしていくかなどについて発表を行いました。

Seminar_20170315_3.jpg 八幡東区高見自治区会会長 山﨑 嘉武さん

  震災で一番苦痛を味わったのが女性、身体障害者、子供たちです。このような人たちの視点から避難所運営をどうするか、女性のリーダーをいかに育成するかは難しい問題です。決定権は男性にあって、女性はついていくものという夫唱婦随の精神が日本人の中に染みついています。これを打ち破るには、女性自身が変わることが必要で、そのためには男性も変わらないといけません。高見自治区会では防災会議を立ち上げ、このツアーの成果を今後のまちづくりに活かしたいと考えています。

若松区畠田まちづくり協議会会長、自治会長 古川 裕子さん

  私たちの地域は、土砂災害危険区域に指定されていますので、日頃から地域の方々に呼びかけ、学習会や避難訓練を続けていました。このような中、スタディツアーに参加し、特に二つ学ぶものがありました。一つは、自治会の役割とは人の命を守ること、つまり住民の安心・安全のために日頃から地域の人が顔見知りになり、絆を深めて、お互いが結び合って、いざというとき命を助け合う仲間になるための活動であることに気づいたことです。二つ目は、災害時に女性が我慢するような社会を作ってはいけないということです。そのためには、女性のリーダーが必ず必要だということを学びました。私も女性リーダーの一人として、この仲間をもっと増やしていく努力をしていきたいと思いました。

若松区畠田公民館館長 古野 陽一さん

  私の住む地域は土砂災害危険区域を抱えているため、防災をきっかけに地域づくりをしようと考えました。公民館の活動は恐ろしくマンネリ化しています。日常やっていないことはできない、ということは日常やれていることはできるわけです。マンネリの中にこっそり防災意識を組み込んでいくと、いざというときに役に立つのではないでしょうか。毎年4月に自治会名簿を確認しますが、避難困難者であるとのメモを入れる工夫をすることなどを考えています。防災実行委員会を立ち上げ、意識の高い人に集まってもらって、ほんの少し変えるだけでやっていく取組みを行っています。

ピース26 守恒市民センター館長 小牟田 尚美さん

  今回のツアーに参加して、防災の必要性を感じ、はじめて防災訓練を実施しました。小さい子供のいるお父さん、お母さん、年長者に集まるように呼びかけました。市民センターに集まってきた人たちに、ワンポイントアドバイスをしました。「やってもらってうれしかった」という声を聞き、みなさん危機感を抱いていることがわかりました。また、ツアーで被災地で実際に起こった厳しい現実の話を聞き、それを伝える必要性も感じました。人の道徳観に訴えるような伝え方をしていきたいと思います。

八幡西区女性団体連絡会議 市民防災会 理事 岡本 悦子さん

  まちづくりをしている団体の代表のほとんどは男性です。当然、まちづくりの意思決定の場に女性は少なく女性を引っ張り出していくのはとても難しいことです。家の中でこまごま動いているのは女性なのに、責任は亭主が取ります。女性は普段から責任を取るのに慣れてないから、責任を取ることを重く感じる人が多いのです。 手に職を持つ女性たちが増える中で、現役時代に地域の行事に参加して、顔を売って、必要とされる存在になり、自分がそうなったときに次の人をどんどん引っぱっていくことが大切です。女性は誘い合わせが上手です。一人よりも三人、まずは女性が意思決定の場で数の力でがんばってみれば、女性の力をもっと発揮できるのではないでしょうか。

小倉南区女性団体連絡会議 小倉北区担当社会教育主事 梶 初美さん

  ツアーで印象に残った言葉は「平常時にできないことは災害時にできない」 ということと、「防災を学ぶこととリーダーになることは別だ」ということです。また、具体的な地域の人材の発掘の方法やどんな人たちがリーダーになる必要があるのかを学びました。九州でも熊本や行橋で地震が発生し、今だからこそ、災害に対する意識が昔より高まっていると思います。直接被災して復興に携わっている人の生の声を私たちが語り部になっていろんなところで伝えていくことも必要です。女性団体連絡会議で、女性の視点に立った避難所運営というテーマで学習するのもいいと思いました。社会教育主事としては、市民センターの生涯学習事業の中で親子から地域につなげるような防災活動をしていきたいと思います。

北九州市役所市民スポーツ文化局地域ひとづくり部生涯学習課 上坪 智子さん

  私が一番印象に残ったのは、仙台市片平地区の取り組みです。この地区では、まちづくりを進める最初の活動が地域の平成風土記の作成でした。すべて自分たちで情報収集し、編集し、町内という枠を越えてさまざまな機関と関わることで、まちづくりの骨格ができ、安心安全の確保とコミュニティの活性化、歴史環境の保全の3本の柱が決まり、まちづくり計画が進んでいきました。片平地区では、地域のみんなを巻き込み、地域全体で一つのことに取り組み、人と人がつながり、課題解決を通してもっとこの地域をよくしていきたいという思いでまちづくりを推進していきました。地域の問題が山積する北九州市で、このような取組みを進めるような働きかけをしていきたいと思います。

北九州市役所男女共同参画推進課 西 千鶴さん

  ツアーの中で、一番強く感じたのは、市民の持つ力は計り知れないということです。行政がどんなにがんばって計画を立てたり、シミュレーションをしていても、災害の現場や避難所の運営では、そこで活躍している市民の力にはとても及びません。市民の底知れない力によって、まちも人も復興が進むことを本当に実感しました。では、行政は何ができるのでしょうか。市民が持ち前の力を発揮して、自ら立ち上がれるような仕組みづくりや取組みをきっちり整備していくことが行政に与えられた役割だと認識しました。北九州市では、地域防災計画に則した避難所運営マニュアルを男女共同参画の視点から見直し、災害が起こったときに活用してもらえるようにする予定です。