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KFAWアジア研究者ネットワーク開催セミナー

KFAWアジア研究者ネットワークセミナー 2009年度 第2回(2009年7月15日)
「八幡東区における高齢者の居住問題」

KFAWアジア研究者ネットワーク第二回研究会(講演要旨)
「八幡東区における高齢者の居住問題」

  • 日 時   2009年7月15日(水)18:00~20:00
  • 場 所   北九州市立男女共同参画センター3F 会議室
  • 講 師   九州国際大学副学長 湯浅 墾道
  • 参加者  12人

北九州市の中でも特に人口流出と高齢化が進む八幡東区の現状と、今後どのような問題が発生するのか、それに対し行政や自治組織はどのように対応しようとしているのかについて発表していただきました。



【講演要旨】


問題点

1. 人口減少
2035 年の北九州市の人口は83万人になると予想されている。モノレール地区、折尾地区(学研都市)以外の地区の人口は減少している。人口は将来、都心から拡散し2地域に集積されるだろう。八幡東区は55,000人で2005年の人口の73%になると予想される。



2. 少子高齢化
八幡東区の老人人口の割合は2005年は28.3%であったが、2035年には37.5%となる。老人が老人を支える状況になっている。大蔵・皿倉校区などの10年間の推移を見ると世帯数は変わらないが人口は減少している。これは独居老人数が増えているためである。唯一、高見地区の人口が増加しており、これは新日鉄の旧幹部社宅跡地の再開発の成果であると考えられる。



3. 地形・急斜面地住宅
八幡東区には急斜面地住宅が多い。少ない平野部の大部分を製鉄所などの工業地帯が占め、平野部住宅地は新日鉄社宅などが利用し、民間利用余地が小さい。人口増加に伴う都市化の圧力は、山裾から斜面地へと移動し、高度成長期に開発された斜面住宅地の多くは道路基盤が脆弱であり、現在の建築基準法では建て替えが不可能である。特に枝光地区では空き家・空き地が増加しているが、犯罪の温床になるので行政の費用で菜園として貸し出すなどの取り組みがなされている。



4. 安全で安心な治安へ向けた枠組み
平成20年度の八幡東署刑法犯認知件数は999件と公表されており、人口比で割ると最も治安が悪い地域も示唆される。地域住民による空き地対策や、町づくりには限界がある。しかし自治体財政悪化のため、地域に行政コストを投入することも難しい。中期的に考えるとこの地域に暮らす住人に、平地に降りて来てもらわなければ対応ができないが、現在の法令上、高齢対策のために集団移転するというスキームはない。小泉政権以降の規制緩和のため行政サイドから規制をかけて集団移転させることは困難である。何らかのインセンティブをつけて移転してもらうということが考えられる。




対応へ向けた枠組み

1 住み替えインセンティブ意識調査
(平成18年度全国都市再生モデル調査「長寿命ストック型市街地地形の事業化調査」に関する意識調査のデータから 八幡東区内事業所に勤務する住民を中心として実施)

  • 経済力の状況…世帯収入の状況は中央値が500万円~800万円
  • 「郊外志向」が強く、中心市街地志向は弱い
  • マンションに対する意識は、低層階は最も否定的で高層階は評価が二分される
  • 定住意識は強い
  • 自然との親和性の重視

などの結果がでた。住み替えはなかなか簡単にいかないことがわかる。

2 エリアマネジメントについて
定義は「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者などによる主体的な取り組み」(国土交通省ガイドライン)である。
ディベロッパーが快適で魅力に富む環境の創出や美しい街並みの形成、資産価値の保全・増進など、町全体の維持管理をし、ブランド力の形成、安全・安心な地域作り、伝統・文化の継承など、ソフトな領域や住民の自治活動など、地域全体のマネジメントを行う。日本では千葉県佐倉市のニュータウン、ユーカリが丘が最大規模である。八幡東区の桃園地区では新日鉄土地開発が新日鉄のアパート群跡地を再開発し、戸建分譲をし、管理をしている。(エリアマネジメントによる戸建分譲)



3 交通対策(平成21年度地方の元気再生事業)」
幹線交通を補う交通手段の工夫が必要である。




自治のあり方と多世代型の町づくり

1 団地・ニュータウンの失敗
全国的に都市の中の「限界集落」が問題になっている。高度成長期時代の団地やニュータウンでは65歳以上の高齢者が50%を超える地域も出てきている。(千里ニュータウン・多摩ニュータウンなど)。
北九州市企画市民局は「開発から数十年が経過したニュータウンを中心に、世代の偏りが顕著になっている。高齢化で弱まりつつある地域の機能を下支えする対策が必要になっている」と指摘している。



2 ワンルームマンション規制
東京23区ではワンルームマンション規制を打ち出した。地域に住んでいる住民の町づくりの担い手としての役割を考えた際、単身者は地域活動に参加しない傾向がある。エリアの年代が均一化すると地域の人口活動がいびつになってきて町づくりが成り立たない。そのために世帯人口構造の均質化を防ぐ方策が必要になってくる。


3 自治基本条例
自治基本条例が各自治体で作られ、北九州市も検討している。
住民の高齢化や、役員のなり手がないために解散する町内会も出てきており、地縁的団体による自治に限界が生じている。自治体は財政危機により自治体サービスの水準を下げているため、住民自治を促し、町づくり参画に責任を持つように条例に謳われている。自治基本条例は行政サービス低下の部分を住民参加で補うという方向性を持つ。




質疑応答・意見

(Q=参加者からの質問、A=湯浅先生回答、O=参加者の意見)

Q1 住み替えインセンティブ意識調査において中心市街地とマンションの低階層が不人気なのはなぜか。
A1中心市街地を繁華街とイメージしたのではないかと思う。マンションを好まないのは自然の豊かな所に住みたいという戸建て志向があるからだ。調査対象の中央値が50代だったので、もう少し世代を広く調査する必要があったと思う。30代の住居の決め方は子どもの学校の環境問題が重要な課題だ。

Q2 コンパクトシティのエリアサイズは。 A2 歩ける範囲、自転車で動ける範囲、公共交通機関で移動できる範囲などが考えられる。
コンパクトシティの考え方はヨーロッパからの直輸入で、城塞都市が基礎にある。
日本ではなかなか根付かないが、富山市と青森市が熱心に取り組んで成功している。富山市は路面電車の活用、青森市は市民を中心地に呼び戻すことを目的にしているが、成功の一因は両市とも積雪地域だということだ。除雪という行政サービスを通して地域拡大を防止している。
コンパクトシティの考え方の基礎は。

  1. 中心市街地空洞化防止
  2. 行政施設を集めて利便性を高める
  3. 道路コストがかからないようにする ④ 自然や環境保護のため低炭素社会を強調する、などである。

Q3 エリアマネジメントについてお聞きしたい。自治会や町内会の機能が限界に達したと言われ、子ども会も解散している現状で、民間のディベロッパーにマネジメントを任せるとなると財源はどうなるのか。
A3 タウンマネジメント、エリアマネジメントなど、お金をかけてマネジメントをすることによって地価が上がり、財産価値が出てくる。高所得者が入ってくることが前提で開発している。新日鉄都市開発の戸建分譲は高所得者が対象となっている。月々の管理費もかかるが新日鉄がマネジメントをするということに安心感があって5000万円以上の戸建がよく売れている。東田地区も高見地区も同様で、マネジメントを上手にやれば、売れる。しかし開発する会社が潰れれば町は破綻する。

Q4 住宅は資産の一部だが、住み替えをする時の資産の値踏み、保障はどうなるのか。
住み替えたあとの資産価値はないに等しいため、火災時の消防車の進入や救命救急も困難だと感じていても、住み替えに至る道筋が見えずに住み続けている状況だと思うが。

A4 固定資産税税制の見直しも必要になってくる。世代間ローンの場合、現状では住み替えの第一世代の負担が大きい。災害対策のスキームで考えなければならないという問題もある。

O1 北九州市の女性史を編纂した際、平地の少ない地域に官営の製鉄所を作ることについてさまざまな討論がなされたと聞いたが100年経った今、こういう形で露呈しているのかと思う。
O2 限界集落では医療や介護スペース、ライフサイクルの機能が限界に来ていると思う。

Q5 国土や、森林を守り災害を防ぐためにも、山村、過疎地に住み続けるべきだと思う。
山村、過疎地への行政サービスは市町村合併によって減少している現状で山村、過疎地の住み替えについてのお考えを聞きたい。

A5
  1. 日本では国土が対などな条件で競争することは不可能だと思う。平野部に立地している大都市から何らかの財源を移転しなければ地方は自立できない。
  2. 自治体レベルで山村を保全している例がある。(例:横浜市の水源がある山梨県の道志村に、横浜市は財政支援をしている。)都市部の環境を守るためには山村保全の必要がある。都市は自立できないということを知ることができる。
  3. 限界集落の問題は人口の再生産ができるかどうかという点にある。大都会、特に東京は再生産ができていない。高齢世代が居なくなると廃村になるというのではなく、持続可能な集落であることが重要だ。限界集落が出てきたのは近世になってからで、江戸時代初期には耕地面積が限界に達したそうだ。人口圧力が減少すれば人が集まらなくなるのが自然とも言える。


Q6 有人離島が急速に無人離島になることは国土安定の視点から、どのように思われるか。
A6 離島と山村地域の問題は分けて考える必要がある。無人離島は安全保障上の問題のためにも国が費用を投下していく必要がある。

O3 かつて、入り会いという制度があった。山里を共同で運営しながら生き延びてきた。特別、贅沢をしなければやっていける。そういう仕組みを見直す時ではないか。生きるという意味を見直す必要がある。
O4 むしろ、離島や過疎山村は医療保険サービについて緊急に意思決定しないといけない。医療者は人権を侵害する問題だと考えている。
O5 外国に流失している資金を国内の再整備のために還流できないかと思う。
O6 住民自治活動は引き受ける仕事が多すぎる構造になっている。やる気以前の問題で育児、仕事をしているものにはかなりの負担になる。
O7 行政がすべきことと住民がすべきことの洗い直しが必要だ。



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