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KFAWアジア研究者ネットワーク開催セミナー

KFAWアジア研究者ネットワークセミナー 2009年度 第4回(2009年9月13日)
「大地から食卓へ―ジェンダーの視点で食の安全を考える」

KFAWアジア研究者ネットワーク 第4回研究会
第2回KFAW日韓国際シンポジウム(要旨)
「大地から食卓へ-ジェンダーの視点で食の安全を考える」

  • 日 時    2009年9月13日(日)13:00~15:30
  • 場 所     北九州市立男女共同参画センター5F 小セミナールーム
  • パネリスト
            塚本 薫子 地元農業女性
            田原 幸子 グリーンコープ生活協同組合ふくおか理事長
            大石 紀代子 北九州市食生活改善推進員協議会会長
            閔庚子 (Min, Kyong-ja) 元韓国忠清南道女性政策開発院研究員
  • 参加者     40人



食料の安定供給と安心・安全な食物の生産・流通は市民の暮らしの重要な課題の一つです。生産地から消費者の食卓までの安心・安全な食料供給がどのような仕組みと考え方で行われているか、日韓比較の形で検証しました。また講演の後は、地元北九州産の野菜の販売や、韓国料理のチヂミの試食会なども行われ、楽しみながら食の安全について考えることができました。




【報告1】 地元農業女性 塚本 薫子

160年続いている農家で夫の父、夫と3人でこかぶ、みずな、小松菜、ピーマン、枝豆、いんげん、トウモロコシなどの野菜を栽培している。現在は冬野菜を植える準備中である。映像で見ると納屋が優雅にみえるが自分にとっては野菜を束ねるきつい労働の場所である。台風でビニルハウスの天井が破れたが張り替えると採算が取れなくなるので夫がテープを貼って修理した。これが現状である。
消費者との交流会で「安心、安全に気をつけているか」という質問を受けるが、この質問には戸惑うとともに、落胆する。家族の夕御飯のおかずに安心、安全な食品を提供することと同じ感覚で、安心、安全な野菜を栽培している。真剣に作っている姿を発信していかなくてはならないと思っている。虫に食われた野菜はこれ以上食われまいと苦い成分を出して美味しくなくなるので、農薬は適度に使用している。

後継者については、3人の息子がいるが現在の状況では継がせたくない。泥を扱うのは楽しいが、生活をしていけるだけの収入がない。 1




【報告2】 「グリーンコープ生協ふくおかの食べもの運動」
グリーンコープ生活協同組合ふくおか理事長 田原 幸子


1.グリーンコープ生協ふくおかについて(2009年4月現在)

  • 組合員数    171,797人
  • 出資金      72億3千4百万円
  • 事業内容    供給事業(共同購入・店舗)、福祉事業、生活再生事業など
  • 総事業高     290億920万円
  • 役員 理事・監事    52人
  • 職員       正規職員263人、定時職員592人、組合員事務局123人、ワーカーズ1,893人
  • 事業施設    共同購入センター(18)、店舗(21)、福祉センター・用品店舗(17)


2.グリーンコープは「自然と人の共生」「人と人の共生」「女と男の共生」「南と北の共生」という4つのテーマのもと、助け合う仕組みを作ることで連携している。


3.食べもの運動のあゆみ

(1)安全・安心を求めるために進めてきた8つの約束

  1. 生産者と手をつないでいきます。
  2. 日本の農業を守り、食料の自給率の向上をめざします。
  3. 手づくりの拡がりをめざします。
  4. 多様化にも応えていきます。
  5. 添加物の点検を徹底します。
  6. 放射能の検査を実施し状況に対応していきます。
  7. プラスチック包材を減らします。(環境ホルモンが溶出しない包材に切り替えています。)
  8. リサイクルに取り組み、貴重な自然と資源を大切にしていきます。


(2)組合員による商品開発、リニューアルの取り組みは商品開発リニューアル委員会やGREEN Kid,s委員会、Ms.グリーン委員会で行う。


(3)組合員による産地・生産者との交流は体験田、料理会、若とりの捌き方講習会、「グリーンあさくら」に出向く、牛乳生産者女性部会と交流を持つなど積極的に取り組んでいる。



4. いのちを育む食べ物を通して日本の農業・環境を守るとり組みへ繋げていく。





【報告3】 消費者から見た食の安全―ボランティアとしての食育推進活動を通して―

北九州市食生活改善推進員協議会会長 大石 紀代子

北九州市食生活改善推進員協議会は昭和47年に発足した。「私達の健康は私達の手で」をスローガンに、地域に根ざした食育活動をすすめている。毎年、各区役所で養成教室を開催し、修了者が食生活改善推進員となる。会員数は2,070人で各区協議会の中に各地区グループを構成し、市民センターや公民館を拠点に活動している。


北九州市食生活改善推進員協議会の食育活動

  • おやこの食育教室
  • 親子ですすめる食育教室(北九州市事業)
  • スポーツ少年(サッカー)と食育教室 スポーツをしている小学生と保護者にスポーツにおける食を中心に食育活動を行う
  • 地域農産物を活用した親子体験料理教室
  •  子どもと共に学ぶ食生活とふるさとの食文化
  • 子どもの手作りおやつの提供と食育
  • よい食生活をすすめるためのグループ講習会
  • 牛乳・乳製品料理講習会
  • 味噌料理講習会
  • ふれあい昼食交流会65歳以上の高齢者を対象に会食を通して食生活改善と生きがいづくりを行う
  • シニア料理教室(北九州市事業)
  • 在宅介護食ボランティア講習会家族の家庭介護を支えあうため、会員自らが学び、地域での活動を広げていく
  • 食育月間推進事業
  • 食育の日普及啓発イベント

食育基本法により定められた6月の「食育月間」と毎月19日の「食育の日」に、食育普及を図る

※ 食生活改善推進員は食育アドバイザーで「消費者一人ひとりが食に対する知識を深め、食を選択する力を高めることが、食の安全・安心に繋がる」ということをアドバイスし、「作る人と食べる人の顔の見える関係をつくることは、食の安全・安心につながる」という信念に基づいて地産地消の推進に取り組んでいる。
人は食事に始まって食事に終わり、愛撫に始まって愛撫に終わるといわれている。この二つの行動を限りなく優しく、美しく、心をこめてできる人を育てることが食育と考えている。食生活改善推進員も食育の基本である「家庭」を支える地域のパワーとなり、北九州市が健全な食生活を取り戻し、健康で元気なまちとなるように活動していく。



【報告4】 「食品安全と農業、女性:韓国の事例」

元韓国忠清南道女性政策開発院研究員 閔庚子 (Min, Kyong-ja)

1. 韓国の食品に対する不安の実態

韓国も食品安全の問題が深刻である。食べ物は豊富でも安心して食べられるものは非常に少ないのが現実で、食卓の安全性が最大の関心事として取り上げられ、食品安全に関する研究や市民運動が展開されている。特に主婦たちの不安は大きく、問題解決のために環境に優しい農産物の生産および流通に関心を持ち、安全な食品づくり運動に参加している。

(1) 食品問題の事例
1980年代からほぼ毎年、豚肉口蹄疫の発生、豚肉ダイオキシン、鳥インフルエンザ、魚から発がん性物質マラカイト検出、中国産菓子からメラミン検出などと食品問題が起こっている。2008年アメリカ産輸入牛肉の狂牛病問題によって国民の不安は最高潮に達した。「狂牛病ろうそくの火文化祭」といわれる大規模な輸入反対デモは女性学生や子育て中の母親も参加した。

韓国農産経済研究院の調査によると、食品安全事故関連に対して政府の発表を信頼しないという回答が、国民の47.2%(2007年)、農産物購入に際し安全性を考慮するという回答が63%であった。生産過程に対する信頼度は48%、?通過程に対する信頼度は32%、輸入農産物に対する信頼度は9% となっている(2008年)。現在、飲食店では顧客を安心させるために食材の原産地を明記するように義務付けられている。

(2) 食品問題の背景
世界農食品体制の問題が指摘されている。新自由主義のグローバル体制のもと生産、流通構造が世界化されて少数の超国籍食品企業(transnational agrifood complexes)が全世界の食糧を支配するようになった。韓国も例外ではなく1995年の世界貿易機構体制の発足により、農水産物市場が全面的に開放され、食品の75%を輸入に依存するようになった。

市場論理に立脚した政府の政策が食品の市場化を強め、地価は上昇し、都市中心の生産・ 競争が加速化され、小規模な農家の没落や農村共同体破壞を加速化させた。その結果、国内の農水産物の価格が下落し、農水産物、農漁村、農漁民が没落の道を歩むことになった。輸入農産物だけでなく、国内の農食品の安全性も脅かされ、バクテリア、遺伝子組み換え、残留農薬、抗生物質などの不安も生じている。食糧自給率は51.6%、穀物の自給率は27.2%、米以外の穀物の自給率は5%と深刻な事態になっている。


2. 食品の安全政策と民間の対応

(1) 政府の対応

  1. 07年「農業農村および食品産業基本法」を制定し安全な農産物の安定的な供給に取り組む。
  2. 08年「食品安全基本法」により安全な食品の管理体制を構築。
  3. 08年 アメリカ産牛肉の無制限輸入に対する国民の不安と抵抗により、食品安全総合対策をたてる。
  4. 08年 食品安全管理先進化法案を成立。
  5. 09年 3月22日から学校関連の不良食品から子どもを守るために「こども食生活安全管理特別法」を 施行。

(2) 民間の対応
国民の健康は国民自らが守るという民間運動が活発に展開された。消費者が良い食べ物に固執すれば生産者・流通業者も変わるという考えに基づき、安全な食品を安定的に供給することで農村の経済を向上させ、農村共同体を回復させる、消費者中心・直接取引中心・地域中心の戦略を選択した。

民間レベルの代表的実践事例は生活協同組合(生協)運動と、地域食品運動 (local food system)である。

  1. 生活協同組合(生協)運動
    生協は安全な食品消費運動組織であり、同時に環境に優しい農産物の安全?通の代表的な組織として、安全な食品の生産者と消費者を繋ぎ、食品に対する消費者の不安を解消している。1986年、ハンサリム運動から始まり、2000年代に急成長した。環境有機食品?通認證協会(生産者、物流センタ―、消費者管理)と生産?通認證システムを導入し、生産者と消費者が出会う都市と農村交流プログラムや直接取引システムを運営している。

  2. 地域食品運動 (local food system)
    生産者と消費者の距離が食品の安全を左右するという観点から始まり、大都市を中心に多様な集団で様々な実験がなされている。その一つが食品安全と農協保護のための社会協約運動で、消費者・生産者・企業が事実的に協約を提携し、食品加工・流通・外食産業を発展させるというもので、全羅同で18の公共機関・生産者・消費者・市民団体が参加した国産麦の消費の社会協約が実験的に推進されている。



3. 食品問題と?性との関係について

ジェンダーによる分業体系により、女性の主な活動の舞台は日常的な生活の場である。子育てや家族の食生活の責任を負う役割である女性は食品安全問題の最大の被害者であると同時に最大な関心を持っている。また、食品問題は女性のみの問題ではなく男性を含む社会構成員すべての問題である。

食品問題の本質は何か、社会的背景は何かを考察するとき、深刻な社会問題すなわち権力および資源の配分問題、そして人間と自然の関係の問題と関連することが分かる。

女性は子どもを育て、家族の食生活の責任を負う役割を持っているため、人間と自然の調和を主張する女性が、自然の破壊によって発生した食品問題を女性によって解決するという主張は説得力を持つ。

問題意識と解決能力を持つ?性が、このような内的関連性による考察を通して、人間と自然の関係、社会的関係を変化させる主体になることができる。生協全体の組合員の中で 專業主婦の比?が約50%程度、活動家は全て專業主婦ということはこのような内的関連性を反映していると思われる。

このような理由によって女性は生産・流通販売・消費者運動など多様な活動を通して環境に優しい食品を消費者に提供し、繋げる重要な役割をしている。

環境に優しい食品を消費者に提供する生協活動と産地で加工食品を消費者に販売するgreen tourismの観点から女性の役割を紹介する。

(1) 女性運動と生協
1989年、’韓国?性民友会’が生協を組織し、女性運動と生協運動がつながった。

生協運動と女性運動の共通点は協同の価値、エコロジー的価値、生命安全に対する価値、および社会的弱者を守ることでこれらの共通の価値を中心に專業主婦の社会参加を促進させ、変化と成長を誘導し、女性を專業主婦から社会の主婦へと変身させた。このような変身を通じて学校給食運動を主体的に行いながら草の根運動の主役として成長した。

(2) green tourism事業を通して女性は農産物の直接取引および加工食品の販売の主役として活躍している。
1980年代から進められてきた農村を生き返らせなくてはならないという意識ある若者たちの運動は帰農運動、生協運動などに繋がっていった。農村の競争力を高めるための様々な努力が進められ、その一環として農村の経済的基盤を生産だけでなく観光、加工、販売などに発展させていった。
green tourismは一次的には都市の人たちに休息と自然体験の機会を提供する一種のサ―ビス産業であり、副次的には地域の特産品の現地販売および加工食品販売をしている。
食品安全問題が社会的関心事となることで、農村の食品生産者としての価値が浮き彫りになり、green tourismが觀光産業だけでなく地域食品体系形成の一つの手段にならなければならない。
green tourism事業の一環としてのfarm-stayプログラムは全国276か所で運營されている。farm-stay機能は、宿泊以外にも農家経営体験、農産物直接取引および加工食品の生産・販売、伝統食品体験などがある。 農家の主婦たちが主体となって現金を確保する主要な手段である。


おわりに

食の問題は?性たちに不安と同時に社会参加、経済活動および意識の拡張の機会をもたらすきっかけとなった。?性は食の問題を中心として共同体の価値の回?、持続可能な発展を追求する主体となっている。
食品安全問題の解決を通じて、?性の力で安全な世の中、平等な世の中を作ることを共に期待しよう。



【質疑応答】
Q1 韓国?性民友会について。
A1 韓国?性民友会は1989年、生活資材に対するエコロジー的接近を通じ社会改革をするという目的で設立され、多くの政治家を輩出している。女性主義的な緑の生協として女性の健康や生活に適した生活材の供給に主力を置き、?性組合員の要求に適した商品の開発をしている。食品問題はグローバル化による政治社会的問題と深く繋がっているという認識を共有している。 生活材に対するモニタリングや改善法案の提示などを通じて安全性の確保に取り組んでいる。
食品問題だけではなく環境問題(ごみ問題、水汚染問題等)にも関心を持っている。

Q2 韓国の子ども食生活安全管理特別法について。
A2 2009年3月22日から施行された法律。小・中・高校の半径200m以内を子どもの食品安全保護区域としている。この区域では子どもの肥満や栄養の不均衡をもたらす食品は売ることができない措置をとっている。高カロリーで栄養の低い食品、すなわちパンやお菓子、ピザ、ハンバーガーなどがその対象である。これには限界があって食品業界から反発があり規制対象から外れた店が営業していることもある。

Q3 紹介された韓国のgreen tourismを推進している地域は、その発祥の地なのか、今も続いているのか。
A3 模範的な地域で発祥の地ではない。農林水産省の役人が初めて訪れた地域である。観光の場、癒しの場でもあるが食品問題が浮き彫りになった現在、安全のための学習会を重ねた結果、さらに食べ物に対する安全性への取り組みを強めている。

Q4 行政をバックに韓国でも食生活改善運動は行われているか。
A4 政府は関心を持っており、地方公共団体のもとで農協の女性団体が安全な食品を作り流通する運動を進めている。

Q5 塚本さんに近所の農家や農業従事者の状況、農業委員会について質問したい。
A5 21年間、農業をしているが100軒あった専業農家が現在は2軒になった。女性は農業の仕事もするが、家事もするので男性は休憩できるが女性はできない。以前は女性は内にこもっていたが、現在は意見を聞かれることもあるし、自分は農業女性アドバイザーとして
福岡県の会議に出かけて行く。男性の視点は野菜の作り方という技術面になりがちだが、食などの安全性を考える女性の視点も必要だと思う。

Q6 女と男の共生をどのように考えているか。
A6 共生とは人が人を支配しない、征服しない、お互いを認め合って、命を大事にするという視点を持つことだと考えている。



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