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KFAWアジア研究者ネットワーク開催セミナー

KFAWアジア研究者ネットワーク 2010年度前期セミナー第3回(2010年8月31日)
「グローバル化の中の韓国経済の現状と課題」

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KFAWアジア研究者ネットワーク 2010年度前期セミナー第3回 要旨

「グローバル化の中の韓国経済の現状と課題」

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日 時  2010年8月31日(火)18:30~20:00


場 所  北九州市立男女共同参画センター5階 小セミナールーム


講 師  筑紫女学園大学 教授  裵 海善(ベ ヘション)


参加者  19名


 KFAWアジア研究者ネットワークでは、2010年度前期に「東アジアの経済の動きと女性の政治参画」を取り上げ、計3回セミナーを開催いたしました。
 第3回の今回は、「東アジアの経済の動き」として、ベ先生に韓国経済のこれまでの政策の流れと現状、そしてその諸問題についてお話いただきました。


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【講演資料より】


第1章 経済政策の60年間の流れ

解放直後の混乱期
 ? 日本人が放棄していった財産(帰属財産)の払い下げによる民族資本家の誕生
 ? 1949年2月、アメリカからの援助物資始まる。 


朝鮮戦争
 ? 1950年から朝鮮戦争が勃発
   わずかに残された工業生産設備もその70%が破壊される。
 朝鮮戦争は150回会議を開き、53年7月27日、休戦に至る。

 

援助経済
 ? 韓国経済は戦禍で廃墟になり、自主的な成長可能性を失う。
 ? その後から60年代初めまでの韓国経済は完全にアメリカの援助に依存する。
 ? 韓国の経済的要求とは関係なく行われたアメリカの経済援助
 ? アメリカの余剰農産物の払い下げの特権を得て、「三白産業;砂糖、小麦、綿花」が興こる。
 ? 払い下げの段階で既に特権的企業家グループが出現
 ? 「三星;Samsung」「ラッキー(現在のLG)」「双龍;Sangyong」などがこの時期にスタート。

 

4.19と5.16
 ? 1960年4月19日に政治腐敗に抗議する学生運動によって李承晩政権が打倒される。
 ? その後、経済混乱に乗じて61年には若手軍部による「5・16軍事クーデター」によって朴正熙将軍が

   政権を掌握する。


第1次経済開発5ヵ年計画(1962~66年)
 ? 外向的開発政策
 ? 積極的に外資を導入して鉱業原材料や機械・プラントを買い、安くて良質の労働力を使って生産した

   製品を輸出して外貨を稼ぐ方式
 ? 国家―銀行―財閥という韓国経済を特徴付ける基本的な構造関係が生まれる

 
第2次経済開発5ヵ年計画(1967~71年)
 ? 典型的な政府主導による開発独裁
 ? 財閥、国策企業を通じ、重工業にカネ、モノを重点的に投入する ? 輸出志向の工業化が本格化


60年代の後半に出現した財閥
 ? 長期資金は政府や銀行が支払い保障をおこなうという形にし、設備投資が「特権企業」を中心に行われる。
   「現代」「韓進」「鮮京」「東亜建設」 「韓一合繊」「斗山」「大宇」などの財閥が出現。
 ? これらは朴政権から指名されて出現した。


第3次経済開発5ヵ年計画(1972~76年)
 ? 「重化学工業育成計画」
  浦項製鉄所、石油化学 、4大核心工業(重機械、造船、特殊鋼、鋳物鉄)を基幹産業として

  育成・発展させること。

  
第4次経済開発5ヵ年計画(1977~81年)
  基本目標;自立的な経済構造確立、技術革新と能力の向上 


朴政権の経済政策の成果
 1979年10月26日に朴大統領が暗殺される
 朴政権18年間(1961-79年)に、 1人当たり国民所得200倍に、 輸出は400倍になった。
 主な輸出品目として軽工業製品よりも重化学工業部門の比重が上回る。
  ? 輸出品目にテレビ等の家電製品が登場、造船が日本の強力なライバルになる。

 

第5次経済開発5ヵ年計画 (1982~86年)
 ? 目標;「科学と技術を通じて80年代中に先進国になる」
 ? R&Dの比率を
 ? 1980年GNPの0.2%から、86年には2%にまで高める。
 ? 1983年から85年にかけて「10大戦略産業」を育成する方針。

プラザ合意と3低
 ? 1985年のプラザ合意以降の「3低」により、 高度成長続ける。
 ? 3低好況

 

第6次経済開発5ヵ年期間 (1987年~1992年)
 ? 87年6月29日、大統領直接選挙を含む「民主化宣言」を行う
 ? 6.29宣言と共に労働組合運動の自由化が進む

 

1980年代後半から周辺東アジア諸国への対外投資活発
 ? 1985年プラザ合意以降の円高で、日本企業は海外に輸出用生産拠点を移し、韓国も、競争力を獲得する

   ため、海外投資を急増させる。
 ? 資金調達は海外でおこなわれた。
 ? 海外での資金調達については韓国政府はほとんど 干渉しなかった。

 

第7次経済5ヵ年期間 (1993年~1997年)
 ? 1990年代に入ると米国からの金融・資本市場開放の圧力が強まる。
 ? 1996年のOECD加盟への条件整備として、経済の自由化と国際化の速度を速める。
 ? 世界貿易機構(WTO)などからも輸入規制・市場参入制限の撤廃などの圧力が強まり、段階的に

   それに応ぜざるを得なくなる。

 

金泳三政権(1993~1997年)時代の自由化政策
 ? 1989年から、海外旅行自由化
 ? 1993年8月12日「金融実名制度」の実施
 ? 企業の事業の規制緩和により、財閥も自分の従来の守備範囲を逸脱する。

1997年IMF経済危機原因
 ? 過剰な設備投資
 ? 金融の自由化を背景に、各財閥は海外から低利の融資を受け、積極的な設備投資や、海外投資を行う。
 ? 過剰な設備能力を抱える韓国企業の利益率は低かった
 ? 1年未満の短期債務が多かった(48.2%)ことも悪化を加速化させた。

 

金大中政権の下での構造調整
 ? 韓国経済はこれまでの財閥主導の経済発展方式が限界に呈し始め、経済の根本的な構造改革に取り組む。
 ? 構造改革については、金融、企業(財閥)、公共部門、労働の4大革命を推進。

金大中政権の経済再建政策
 ? 財閥に変わって今後の韓国経済を担う新しい企業の発生や知識集約的産業への転換が強く認識される
 ? 特に知識基盤経済への移行の牽引役としてベンチャー企業への政策的支援が強化される。

 

危機克服
 ? 2000年、韓国とタイはIMFの支援体制を脱し、韓国では外貨準備高は史上最高の800億米ドルを

   超えるなど、深刻な危機から完全に脱する。
 ? 2001年になると、IMFからの借入金の返済を終える。

 

李明博政権の経済政策(2008年から)
 ? 「発展と先進化」を理念(「7・4・7ビジョン」)
   毎年7%の経済成長率を実現し、10年以内に一人当たり所得4万ドルにし、

   さらに10年以内に世界7大強国に浮上する。
 ? 企業対策;

   ①産業銀行の民営化、

   ②金産分離(企業等産業資本が銀行を所有できないように規制している制度)の緩和、

   ③大企業出資総額制限制度の廃止、

   ④中小企業金融制度の改善、

   ⑤持ち株会社規制の緩和、

   ⑥企業相続等、企業関連税制の改編等

 
第2章 図表で見る韓国経済実態
実質国内総生産
  2009年現在、全世界の約0.07%の地理面積を有し、世界総人口の0.71%を持つ。
  韓国経済はGDP規模では2008年世界で11番目の経済規模を持つ。

 

1人当たり国民所得
 1962年103ドル
 1989年 一人当たり国民所得は5556ドルで、5000ドルを突破
 1995年、ついに韓国の1当たりの国民所得は11735ドルで、1万ドルを超える。
 2007年には、21695ドルで、2万ドルを超える
 グローバル経済危機の影響で、2009年17175ドルで、2万ドルを下回っている。

 

輸出
 64年1億ドル
 77年100億ドル
 1995年10月27日 輸出1000億ドル達成
 

OECD主要国のインターネットの利用者数(100人当たり)
 韓国のインターネット利用者数(100人当たり)は1999年23.6人であった。
 2000年41.0人でOECDの中で9位
 2008年は77.8人で、OECDの中で7位である。

 

第3章 グローバル化と韓国経済
韓国経済のグローバル化の背景

2000年代に入って、企業の海外事業の拡大に伴い韓国経済のグローバル化が急速に進んだ。韓国企業が海外、とくに新興国での事業(輸出と海外生産)を積極化させた理由は、
2000年狭い国内市場(GDP規模は日本の約5分の1)、2000年代前半のクレジットカード債務問題に起因した消費不足、少子高齢化の進展など

 

グローバル化の指標
 輸出比率は2001年35.9%から2009年49.9%、
 対外直接投資比率が同期間に0.6%から1.8%へと上昇。


海外事業の拡大による企業ならびに経済全体へのプラス効果
 世界の薄型テレビ、半導体、自動車市場において韓国製品のシェアが上昇した。
 シェアの上昇によりブランドの認知度が高まった。
 企業収益に貢献している。
 輸出が成長の牽引役となっている。
 国際収支の「投資収益」が黒字に転換した。

 

高まる貿易依存度
 高まる貿易依存度と共に韓国経済の対外不確実性が大きくなる。
 2007年までは韓国経済の貿易依存度が80%を越えたことはなかった。
 グローバル金融危機下の2008年から韓国経済の貿易依存度は急激に上昇、2009年82.4%。

 

貿易依存度が高いと、ショック発生時に経済の変動性を高める脆弱要因
 南ヨーロッパ発財政不安など対外悪材料が続けて発生するような時は、ファンダメンタル健全性とは無関係に、

 経済全般に不安を与える副作用を抱えている。
 実際、2008年と2009年のグローバル危機時、韓国経済はふらつき、経済成長率も急落した。

 

第4章 韓国のグローバル企業
経済危機前の5大財閥
 三星(1938年開業)、 現代、大宇、LG, SKは戦後開業

 

経済危機後の5大財閥
 三星、現代・Kia、SK, LG, Lotte

景気回復期に最も有望な韓国の5大企業

NHN、LG、三星電子、KB金融、POSCO
NHNとはNext Human Networkの略で、1999年創立された韓国のインターネットサービス企業で、韓国のGoogleとも言える。
LGはROIC(投下資本利益率)が最も優れた会社である。LGグループは、金融危機以後、持続的に企業支配構造改善とM&A戦略、系列者構造調整と財務構造の健全化のために努力
三星電子の場合、「韓国最高のグロバール企業」
KB金融は、韓国で支配的な銀行業財務構造を構築している。
POSCOは、インフレイションヘッジが可能な企業

 

韓国グローバル企業「Fortune Global 100」(2010)
 三星電子、LG電子、現代自動車、ポスコ等
 三星電子32位。(Sony 67位。Toshiba 89位。)、LG 67位、現代自動車 78位。


三星電子;世界第2位の電機・電子部品メーカー
 1969年創立
 1980年代初め、半導体事業への本格参入したのが躍進の転機
 1990年代後半から本格的に海外展開
 三星のブランド価値は、ソニー、パナソニンクのブランド価値より高い。
 特に強みを持つのは、半導体、カラーテレビ、液晶パネルなど。

 

現代自動車 
 1967年設立
 設立当初はフォードと提携してノックダウン生産(製品の主要部品を輸入し、現地で組み立て、販売する方式)
 1970年生に三菱自動車との技術提供で初の国産車を発売。
 1976年国産自動車初輸出
 1986年1月20日、現代自動車のPONY, EXCEL アメリカ進出
 「10年10万マイル保証」のような販売促進プログラムを展開し、市場シェアを拡大する。
 現在では200近い国と地域で販売している。

 

第5章 韓国国内経済問題
低経済成長率と失業率
 グローバル経済危機以後成長率は低下しており、特に若年層の失業率が高い。 

 

高齢化と出産率低下

韓国の合計特殊出産率は1.19で、OECD国の中でも最も低い。
人口構造で見るならば韓国は日本よりも速いペースで高齢化が進んでいる。高齢化社会から高齢社会へ行くのに日本は24年かかったが、韓国は18年かかっている。高齢社会から超高齢社会へ行くにも最も短い日本が12年かかったが、韓国は8年かかることと推算している。

 

国内の投資率減少
 グローバル化及び情報化時代の中で経済的不確実性が増加し、投資率が減少している。
 1980-1990年代の投資率は35%を超えたが、2001年以降は30%以下に減少している。
 1997年の金融危機以後、外国資本の韓国経済に対する影響は著しく増加している。

デジタル・デバイド(digital divide)
 情報及び知識型経済では、デジタル・デバイドは韓国及び世界の他の地域で生じる減少となる。

 デジタル・デバイドは、放置しておくと所得不平等を悪化させる。


 



【質疑応答】
Q.「毎年7%の経済成長率を実現し、10年以内に世界7大強国に浮上する。」 とあるが、その前提となる南北統一について、韓国人は統一を望んでいるのか。

 

A.韓国人のほとんどが統一を望んでいる。しかし、今現在の政権下では、南北統一の実現は難しいと思われる。


Q.サムソン電子はの半導体の次に韓国経済をけん引する産業は何か。また、サムソンなどの韓国企業が不況下でも投資できたのはなぜか。

 

A.サムソン電子は半導体だけではなく、カラーテレビ、液晶パネルなどでも特に強みを持つ。韓国に限ることではないが、「ナノ産業」への投資がこれから伸びるともいわれている。不況のなかでも投資ができたのは、企業のオーナーの先見の明であり、そのカリスマ性が今日のサムソンの結果につながっている。


Q.メディアでは韓国の有名人の自殺をしばしば耳にするが、この自殺は経済の動きと関係あるか。

 

A.報道される俳優などの有名人の自殺の原因は、経済の動きや社会現象と関係があるとは思わない。インターネットの普及率上昇と共に、過大反応を見せていることもあると思われる。


Q.韓国ではなぜ多くの若者が大学に行くのか。大学に進学する意味とは?

 

A.韓国は日本以上に学歴社会である。主な経済的理由は、高卒と大卒との学歴間賃金格差は大学志望の大きな要因の一つであると言える。また、韓国の高度成長と共に大学教育への需要が増え大学と大卒者数は過去40年間急増してきた。他に、韓国は儒教社会で勉強する人を敬うことも要因のひとつである。
労働と関わる国民性と関連して、韓国は朝鮮時代から儒教の影響で文官支配が続き、知的労働が絶対優先され、もっとも優秀な人は管理職や研究職に就き、手を汚す仕事は蔑視されてきたといえる。一方、日本人は、古来より自ら手を動かし手を汚す労働を蔑視することなく良いとする労働観がある。日本は明治時代から大卒者の技術者が生産現場に入り、自ら手を汚して生産を指導することもあることから、製造業の生産現場が優れている。


Q.韓国の徴兵制度について、教えてほしい。

 

A.女性は志願者のみだが、男性は心身共に健康な高卒以上の人は全員対象となる。陸軍の場合、徴兵期間は2年であるが、自分の目標をしっかりと持っている人にとっては、2年徴兵されるのは非常に大きいロスだと思うようだ。


Q.日本、韓国ともに失業率が高いが、韓国では仕事を求めて海外移住をする人は多いか。また、韓国の英語教育について教えてほしい。

 

A.韓国では、特に若年失業率が高く、就職ができない若者は大学を休学して公務員試験準備など就職準備をする傾向もあり、大学所要年数が男子6年5ヶ月、女子4年4ヶ月とながい。図書館を24時間開館しており総合大学が多いほど、就職勉強のために勉強している。
最近の移民といえば、仕事を求めてというより、子供の教育のために移住する人が特に知識層の中で多いと思う。
また、韓国では公用語を英語にしようという動きがあり、それほど英語教育がさかんである。大学在学中に1回は海外に行って来ないと卒業ができない大学もあるようだ。英語教育といえば、幼稚園から、1週間に1回はネイティブから教えてもらうほどであり、英語のみの幼稚園も人気があり、中学校で英語による授業が普及している。また、アメリカ国内の留学生で一番多いのは韓国人である。


Q.韓国の人事制度は年功序列か、成果主義か。

 

A.韓国では大卒者のみが年功序列であるといえる。しかし、年齢賃金曲線の傾きが日本ほど急ではなく、日本の高卒者と韓国の大卒者の傾きがほぼ同じである。また、近年では年俸制や成果給が主流になりつつあり、契約制も増えている。

                          <以上>

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