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Asian Breeze

Asian Breeze 99号


目次

  1. 仁川デジタル性犯罪防止センターのワンストップ総合支援を中心とした韓国におけるデジタル性犯罪の被害者支援
    -キム ハンソル(仁川女性家族財団 (IFWF))
  2. GCFP の活動を通じた自己変革と地域住民への影響
    -ソナム ドルジ(上級法務官 ゲレフ市行政区)
  3. 日常業務とその”発展”
    -イェシェイ ラム(ブ-タン女性と子どもの国家委員会 副チーフカウンセラー)
  4. ブ-タンの女性にかかわる困難な課題について
    -ラデン ワンモ(CSO RENEW プロジェクトマネージャー)

※1 CSO (Civil Society Organization 市民社会組織)

※2 RENEW (CSO Respect, Educate, Nurture, Empowerment Women 女性を尊重し、教育し、育成し、エンパワーメントする

I to T(Internet to Things あらゆるモノがインターネットに接続される)が世界的な潮流となり、それに伴い、深刻なネット犯罪も多く発生していますが、近年韓国では、n 番部屋事件などのデジタル性犯罪が大きな問題となっており、被害者保護について、北九州市の姉妹都市である韓国・仁川広域市から報告していただきました。

ブ-タンからは、JICA の研修で今年の5月から 6 月に来日された 2 名の行政官と、CSO職員の方に、日常業務に関連して、ジェンダー問題について語っていただきました。

仁川デジタル性犯罪防止センターのワンストップ総合支援を中心とした韓国におけるデジタル性犯罪の被害者支援

– キム ハンソル
 仁川女性家族財団(IFWF)

(仁川女性家族財団/IFWF)
仁川家族財団は、仁川における男女平等の実現を目指している。2013 年仁川開発研究女性政策センタ-と仁川女性文化センタ-が統合して、発足した。当財団は 10 年前から、地域特性や女性の社会教育に即した女性・家族政策に関する研究を行ってきた。また雇用推進プロジェクトも先導している。2021年からは、ダ-ダルム・ジェンダー平等資料館とデジタル性犯罪防止対応センタ-、男女共同参画の文化を広めるために、「子ども愛&夢広場 運営支援団体」を運営し、市民との距離を縮めようとしている。

今後、財団は仁川市政府との協力体制を強化し、仁川女性の声を政策や事業に取り入れ、地域とのコミュニケーションのハブとしての役割を担いながら、私たちは仕事、生活、休息の調和のとれた仁川を創造するよう努めていく。

韓国では、「ソラネット事件」を皮切りにデジタル性犯罪に対する国民の意識が高まり、ウェブハードカルテル、ダークウェブ運営、n 番部屋事件*1など、さまざまなプラットフォームでデジタル性犯罪が繰り返し発生しているため、現在も国民の意識がさらに高まり続けています。 n 番部屋事件により子ども・青少年を対象としたデジタル性犯罪の深刻さが改めて浮き彫りとなり、韓国社会を震撼させ、デジタル性犯罪関連法(通称「n 番部屋予防法」)の改正につながりました。(仮訳)「性暴力犯罪の処罰等に関する特別法」及び(仮訳)「児童・青少年の性保護に関する法律」の追加・補完により加害者処罰の法的根拠が強化され、被害者を保護するための法的枠組みが整備されました。*2

法律で処罰されるデジタル性犯罪は、「違法撮影、同意のない配信、脅迫による配信、営利目的の違法撮影素材の所持・購入・保管・配信およびその扱い」、「フェイク映像の制作および配信、児童・青少年を 対象としたグルーミングや性的搾取素材の制作」、「サイバー空間におけるセクハラ」に大きく分類されます(キム・ヒジョンとパク・クァンミン、2020年)。*3 *4

しかし、これからの法規定にもかかわらず、法律で罰せられないタイプの犯罪が依然として存在し、発生し続けています。仁川デジタル性犯罪防止センターは、法律で定められたデジタル性犯罪に限定されない、被害者への総合的な支援を行っています。

仁川デジタル性犯罪防止センターは、韓国の自治体である仁川広域市が運営するデジタル性犯罪の被害者支援機関です。同センターは、支援過程における被害者のエンパワーメントに焦点を当て、2021 年 6 月 14 日に業務を開始しました。デジタル性犯罪によって困難に直面した個人に対して、カウンセリング、立ち直り、必要な支援などのさまざまなサービスを提供し、日常生活に戻れるようにすることを最終目標としています。

当センターの「ワンストップ総合支援」プログラムは、相談支援、デジタルデータの削除支援、個々のケースに対する支援、法的支援、医療費補助、ヒーリングプログラム支援など、さまざまなサービスから構成されています。相談支援では、電話や面談による相談を通じて被害者の心の悩みに対応し、被害者のニーズを把握し、適切な支援計画を立てます。デジタル削除支援サービスでは、被害者の同意なく撮影され、国内外のプラットフォームで配信された映像などを監視しています。配信された動画が捜査に利用されることを想定し、配信の様子を記録してから、早急に削除するよう要請しています。また、他のユーザーがアクセスできないようにブロックすることも要請しています。

仁川デジタル性犯罪予防センターが提供するケース支援プロセスは、警察や検察の捜査過程で被害者が情報から排除されないように、被害者が各段階で適切に対応できるようサポートします。刑事手続き中の弁護権を確保するために、被告には事件の進行状況や論争中の問題に関する情報を提供しています。

しかし、刑事手続きが 1 年以上と長期にわたることから、被害者は加害者の処罰状況などの情報から排除され、より不安を増幅させることがあります。さらに、裁判の過程で被告人が虐待行為を否認したり、被害者が証人として係争中に出廷するよう求められたりすることもあり、継続的な支援が必要となります。本センターは、刑事手続き全体を通じて担当弁護士と協力して専門的な法的支援を提供したり、被害者が保護され、自身の置かれている立場が理解できるようサポートしています。

最後に、本センターの重要な支援は、被害者の回復です。被害者が日常生活に復帰するためには、身体的外傷や心理的困難を克服することが非常に重要です。そこで、被害者の心身に対する治療費を直接支援するとともに、デジタル性犯罪被害者の日常生活への復帰を支援するために、被害者に合わせたヒーリングプログラムを運営しています。また、デジタル性犯罪の被害者は未成年であることが多いため、メディアを使ったアートや砂遊びなどのプログラムを実施し、被害者のニーズに対応しています。*5

さらに、仁川デジタル性犯罪予防センターでは、デジタル性犯罪の構造的な本質は、女性蔑視、子どもおよび青少年の性的虐待、性的搾取産業を組み合わせたジェンダーに基づく暴力であると認識しています(Kim, Han-gyun, 2020)。*6 したがって、当センターは、デジタル性犯罪の本質が女性の身体を商品化する社会構造の問題であるとの理解を促し、啓発に努めています。さらに、青少年をデジタル性犯罪のリスクにさらす主な発生形態や手口の共有、デジタル空間の安全な利用に関する教育など、デジタル性犯罪の防止に向けた活動も行っています。本センターは今後もデジタル性犯罪の撲滅に向け、被害者の声を反映した予防・対応活動を継続していきます。

デジタル性犯罪には地域や国の境界がないため、デジタル機器が普及し、オンライン環境へのアクセスが普遍化すれば、空間的な制約を受けずに問題が発生し続けることになります。それゆえ、私たちは国際連携の必要性を強く感じており、デジタル性犯罪撲滅のための韓国と日本の国際的な連携を期待しています。

*1 講談社現代ビジネスFRAUのHPより引用

https://gendai.media/articles/-/97088?page=1&imp=0

*2 「性暴力犯罪の処罰等に関する特別法の一部を改正する法律案」第377回韓国国会 第2024883号(2020年4月29日)。

*3 キム・ヒジョン、パク・クァンミン. (2020).「デジタル性犯罪の概念・類型・実態と改善方法.成均館法学論集」32(4), 237-276。

*4 韓国法務省「デジタル性犯罪の類型」生活法情報、

https://easylaw.go.kr/CSP/CnpClsMain.laf?csmSeq=1594&ccfNo=1&cciNo=1&cnpClsNo=1(最終閲覧日:2023年5月7日)。

*5 センターの支援詳細については、ビデオ「A Day in the Life of Daon」(https://youtu.be/whKJBoj6ExQ)をご覧ください。

*6 キム・ハンギュン(2020 年)。デジタル性犯罪の阻止と対処 – テクノロジーを介したジェンダーに基づく暴力の犯罪化。「The Justice」韓国法学院、178、369-392

GCFPの活動を通じた自己変革と地域住民への影響

– ソナム ドルジ
 上級法務官 ゲレフ市行政区

【はじめに】
私はブータン王立政府の上級法務官で、現在はゲレフ市行政区に勤務しています。行政区の GCFP(Gender and Child Focal Point、ジェンダーと子どものフォーカルポイント)を任されてから、もうすぐ2年になります。フォーカルポイントとして、私は国内の女性と子どもに対する暴力に関するさまざまなワークショップや研修に参加する機会に恵まれました。このようなプログラムや、参加者仲間、特に CBSS(Community Based Support System コミュニティベースのサポ-トシステム)のボランティアたちと分かち合う経験を通じて、女性と子どもに関するさまざまな問題を理解することは、私にとって大いに意義ある経験でした。さらに、私は日本で女性と子どもの保護とケアに関する国別研修に3週間参加する機会に恵まれました。これまでに得た知識と経験を通じて社会的弱者に貢献することを目的に、私もボランティアとして CBSSに参加しています。

【GCFPの役割】
GCFPとして、私は以下のような多くの責任を担 っています:
a. 保護オフィサー:DVや児童虐待のサバイバーのアセスメントを行う。
b. 保護観察官:法律に抵触する児童の虐待に対処する。
c. TWCC:スロムデ行政区女性と子どもの委員会女性と子どもに影響する重大な問題や課題に着手する。
d. 調整役: NCWC (女性と子どものための国家委員会) 、PEMA (ペマセンタ-, ブ-タン女王の名前を冠した王命により設立されたメンタルヘルスを担当する機関)事務局、ブータン王立警察、地方自治体、RENEW (CSO)/CBSS ボランティアなど、他のサービス提供者との連携。

【自己変革】
自己変革とは一般的に、自己成長、自己改善、望ましい状態への達成を目指し、自分自身に重大かつ永続的な変化をもたらすプロセスを指すことが多いと思います。しかし私は、GCFP として果たす役割という観点から、私にとっての自己変革とは何かを簡単に述べたいと思います。保護やケアを必要とする女性や子どもたちとは、一体感や相互のつながりがあります。私は偏見のないアプローチを身につけ、女性や子どもたちの課題を、健全な地域社会を築くための不可欠な要素としてとらえるようになりました。私は、困難な状況下でも耐え抜く情熱と、解決策の一端を担う誇りを身につけることができました。私は GCFP の役割を単なる仕事ではなく、むしろ共感をもって地域社会に奉仕する機会として受け止めています。重要性と緊急性を考慮し、週末も対応できるようにしています。

【異なることをする】
ブータンには女性や子どもたちが直面する課題に対処するための関連法や政策があることは誰もが認めるところですが、あらゆる課題、言い換えれば、ひとつひとつに特化した法律の規定はありません。それゆえ私は、本来、法律が DV サバイバーや困難な状況にある子どもたち、法律に抵触する子どもたちを救い、全面的に支援するためのものであることから、共通の基盤に立ったアプローチで問題に取り組んでいます。その際、法律の規定に根本的に触れることなくサービスを提供するために、計算づくでリスクを取り、行動に移すようにしています。そうでなければ、支援やサポートが遅れ、サバイバーの心理的な幸福感がさらに損なわれてしまうからです。

【社会心理学的支援の補完】
心理学が進歩し、カウンセラーが素晴らしいサービスを提供するようになった現在、トラウマからのをヒ-リング望む一握りのサバイバーと加害者が、私が提供する双方の合意による解決策を求めています。そこで私は、親密なパートナーとの間にしこりが残らないように、間に入り、友好的に問題を納める提案をしています。サバイバーと加害者から提起され、ヒアリングされた懸念を双方が認めるということは、当事者間のコンセンサスを得る上では、十分な注意を払い慎重に対処していかなければなりません。

【変革の担い手】
地域社会や家族の平和は、公正で調和のとれた社会の不可欠な要素です。女性と子どもの問題について研修を受け、理解し、人間の行動の弱さを受け入れてきた私の責任は、加害者の態度、行動、プロセスを検証して、アドバイスを与え、前向きな変化を促進し、改善することです。人々を励まし、人々との協力・共存を受け入れる動機づけを行っていく必要があると思っています。問題に対処するために、代替的な解決策を探し出し、前向きに考えることを厭わないと自負しています。私が提供するサービスの信頼と信用を築きあげることで、私の行動によって影響を受ける人々の視点や懸念を理解できるようになります。共感し、加害者だけでなくサバイバーの感情面にも積極的に働きかけることが不可欠です。
加害者と同様に、サバイバーに変化をおこすた めには、効果的なコミュニケーションが不可欠です。問題意識をもった個人個人が変革の担い手であることは、現状のコンフォート・ゾーンから一歩踏み出し、新しい経験を受け入れることでもあると思っています。

【現場の現実】
とはいえ、女性や子どもの問題に取り組む際、一見どんなに些細なことであっても、ケースを総合的に評価すると、問題の複雑さに気づくことがあります。それゆえ、友人、家族、指導者、専門家などの支援システムと関わることが、指針を与えてくれます。多くの場合、ケース対応には協力や協調も必要となるものです。それゆえ私は、関連するサービス提供者や関係者と良好な人間関係を保ち、包括的な方法で問題に対処するようにしています。

【昔からある伝統の価値観で遠回りをしてみる】
ブータンは CEDAW(女子差別撤廃条約)とConvention on the Rights of the Child(子どもの権利条約)という 2 つの重要な条約を批准しているため、それらに明記されている国際的なベストプラクティスからインスピレーションを得ることは少なくありません。従って、私たちはそれぞれの地区 の支援を受けて、女性と子どもに対する暴力を予防し、彼らを保護し、ケアするためのサービスを提供するために、仏教界の代表者・指導者を積極的に活動するメンバーとして関わってもらうことを検討しています。

【結論】
地域社会のダイナミックな特徴や、それらが人間関係に直接的な影響を与えること、またその逆も然りであることを考えると、女性と子どもが直面する課題は、今後さらに複雑になっていくでしょう。しかし、自分の職責を超える献身的な個々の活動は、弱い立場の人々に大きな影響を与えると思っています。

注:略語

GCFP(Gender and Child Focal Point ジェンダーと子どものフォーカルポイント)

CBSS(Community Based Support System コミュニティベースのサポートシステム)

TWCC(Thromde Women and Children Committee スロムデ行政区女性と子ども委員会)

NCWC(National Commission for Women and Child 女性と子どものための国家委員会)

PEMA(PEMA,「The Centre was established upon the Royal Command of Her Majesty the Queen of Bhutan to spearhead Bhutan’s national response to mental health」ブータン女王陛下の勅命により、ブータンのメンタルヘルスに対する国家的対応の先頭に立つために設立されたセンター)

RENEW (CSO Respect Educate, Nurture, Empowerment Women 女性を尊重し、教育し、育成し、エンパワーメントする)

日常業務と、その”発展”

– イェシェイ ラム
 ブ-タン女性と子どものための国家委員会副チーフカウンセラー

右側が筆者

私はブータンの女性と子どものための国家委員会(NCWC)で専任カウンセラーを務める、イェシェイ・ラムです。自身の職務に対しては全力で尽力しています。 保護サービスの責任者として、主な責務は、法で守るべき子どもを含む困難な状況にある子どもと女性を保護するための体系的かつ確立されたサービスを確保することです。

私は、ジェンダーに基づく暴力防止と子どもの保護のための標準的な業務規程にある手順に従って、関係機関に適切な介入や安全な円滑な手続きを行い、ジェンダーに配慮した働きかけと子どもに配慮した視点を通じて、女性と子どもの権利が確実に守られ、高められるよう尽力しています。

最近私の所属している計画立案部門は、女性と子どもの保護サービスの監視に加え、その法的、政策的、制度的、能力構築の強化を含め女性と子どもの権利を促進し保護する機能を果たしています。ブータンの女性と子どものための国家委員会は、ジェンダーと子どものフォーカルポイント(GCFP)と緊密に連携しており、現場でジェンダーと子どものケアの問題を主流化して対処していく上で重要な役割を果たしています。より良いサービスを提供するためには、十分な技術と知識が必要であることを認識し、女性と子どもに関連する課題に対応するために GCFP の専門性を強化することが極めて重要であると思います。

まさにこの目的のために、またさらなる協力とパートナーシップを構築するために、日本の独立行政法人国際協力機構(JICA)と NCWC は共同で、GCFP、NCWC 職員、その他の関係者を対象に、女性と子どもの保護とケアに関する1ヶ月間の能力開発プログラム研修を開催しました。

この研修のおかげで、ジェンダーに基づく暴力家庭内暴力、そしてそのサバイバーへの影響についての理解が深まり、より大きな観点から持続可能な開発に向けた取り組みも高まってきました。また、女性や子どもを取り巻く、日本の法制度や体制のベストプラクティスを学ぶことができたのも大きな利点です。

JICA がこの研修プログラムをアジア女性交流・研究フォーラム(KFAW)に委託したことで、ブータンの現状に合った申し分のない研修が出来たと思います。よく考えられた研修プログラムは参加者のニーズに合っていましたし、2回に分けて実施された研修は、JICAにとって実に大きな投資であったはずです。その重要性を理解し、私たち参加者は、それぞれのコミュニティで日本から学んだ経験を生かし、計画やプログラムを実行する決意を表明しました。

NCWCとUNFPAが合同で、WHOの資金援助を受けて、全国から集まった関係者を対象に3日間の対面研修を開催しました。日本で得た経験は、研修でのセッションに大きな自信を与えてくれました。

最近の私の任務は、ブータンにある国連出先機関事務局(UNFPA、WHO、UNICEF、UNDP)と連携し、女性に対する暴力を防止するための「RESPECT フレームワーク」の実施に焦点を当てたワークショップを展開することでした。

この取り組みは大成功を収めました。3日間のワークショップを2回に分けて行い、GCFPだけでなく県のキーマンに対しても知識とガイダンスを提供し、効果のある実践例を紹介しました。女性に対する暴力を防止するためのエビデンスに基づいた戦略をスケールアップするためのリソースやツールへのリンクも共有できました。RESPECTの各文字は、7つの戦略のうちのそれぞれを象徴しています。

日本での研修のおかげで、このワ-クショップのセッションでは、自信を持ってプレゼンテ-ションの展開をする事が出来ました。

同様に、北九州市の児童虐待防止への取り組みや犯罪者更生制度に関するプログラムも、他のプログラムと相まって、法律と抵触する子どもたちの調整と支援における私の取り組みを強化し、非行少年の更生と安全な社会復帰を後押しすることに役立ちました。この充実した講義は、2023 年に新たに選ばれた地区教育担当官や学校長を対象とした、国内の子どもたちの状況についてプレゼンテーションを行う際や、最近、教員や保健師を対象に実施した非行少年や児童虐待などの早期発見や、女性や子どもの安全を保ちつつ専門医などに紹介する研修の際にも役立ちました。

最後に、ブータン王国NCWCを代表して、このような機会を与えてくださったJICA事務所に感謝の意を表するとともに、素晴らしい研修コースを企画してくださったKFAWに心からお礼を申し上げます。

注:略語

NCWC(National Commission for Women and Children 女性と子どものための国家委員会)

GCFP(Gender Child Focal Point ジェンダーと子どものフォ-カルポイント)

UNFPA(United Nation Population Fund 国際連合人口基金)

WHO ( World Health Organization 世界保健機構)

UNICEF (国際児童基金 ユニセフ)

UNDP (United Nations Development Programme 国際連合世界開発計画)

ブ-タンの女性にかかわる困難な課題について

– ラデン ワンモ
 CSO RENEW プロジェクトマネージャー

ブ-タンはセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、青少年、ジェンダー平等に関する法律の制定や政策・規則の策定において前進を遂げてきました。強力な政治的コミットメントと支持的な法的・政策的枠組みがあるにもかかわらず、ブータンではジェンダーに基づく暴力が依然として問題となって、政策と法律の確実な実施という課題に直面しています。

女性と少女に対するジェンダーに基づく暴力は、健康や福祉、生産性、国家開発などに広範な影響を及ぼす、今まさに最も重大な社会問題のひとつです。家庭内暴力を防止し、サバイバーに必要な支援を提供するため、2013 年にブータンの家庭内暴力防止法が制定されました。それ以来、女性と子どものための国家委員会(NCWC)が「主務官庁」として、市民社会組織や関連パートナーと協力して、この法律の実施に向けて多くの取り組みが行われています。

私は、RENEW(Respect, Educate, Nurture, Empower Women 女性を尊重し、教育し、育成し、エンパワ-メントする)組織でプロジェクト・マネージャーとして働いています。私の個人的な考察や、自国の女性と少女へのサービス提供者として働いて経験したことを書き留めておけることは、私の特権です。今日、ここでお話しすることは、私の個人的な経験と、RENEW組織での継続的な奉仕活動で観察したことに基づくもので す。私は 2012年1月から 2023年1月までアシスタント・カウンセラーとして働いています。私個人的として、1,000人以上のDVやジェンダーに基づく暴力のサバイバーを見てきましたし、多くの少女や女性にサービスを提供してきました。

RENEWは、DVやジェンダーに基づく暴力の影響を受けている家族に力を与えるために、特に弱い立場にある女性や子どもたちに焦点を当て、ギャリュム・サンゲ・チョデン・ワンチュク王太后陛下によって設立された市民社会組織(CSO)です。RENEW はブータンで、最初で唯一のこの種のCSOであり、個人、夫婦、家族のカウンセリング、法的支援、生活技能訓練、セーフハウス(隠れ家)、医療支援、教育奨学金、ケースマネージメントサービス、SRHクリニックなどのサービスを開始しました。

RENEWは、このような暴力の蔓延と影響についての認識を高め、サバイバーに支援サービスを提供し、政策変更と法改正を提唱するために、たゆまぬ努力を続けています。地域レベルでの意識向上と感化に向けた RENEW組織の努力により、ジェンダーに基づく暴力のさまざまな形態、女性の生活への影響、必要に応じて適切なサービスを受けることの重要性についての知識と理解が深まったことが、大きな成果につながっています。また、女性や少女に対する暴力の根本的な原因や背景・動機について、周囲の人々や地域社会が理解を深めました。

RENEWはまた、ブータンのあらゆる場所でサービスを提供するために、全国のボランティア、関係者、私たちのパートナーのために、研修や能力開発プログラムを実施しています。2021年だけでも、ソーシャルメディア、ウォークインクライアント、ヘルプライン、全国のボランティアからの紹介といったプラットフォームを通じて、774件のDV/GBV(Gender Based Violence ジェンダーに基づく暴力)ケースにサービスを提供してきました。私たちが扱うケースに関しては、経済的虐待、身体的虐待、性的虐待、精神的虐待といった様々な形態の虐待を含む、あらゆる異なる状況に対してサービスを提供しています。

ほとんどのブータンの女性は、経済的に配偶者に依存していること、恐怖や安全への懸念、サポート体制の欠如、感情的な愛着や愛情、文化的・宗教的要因などから、その関係というのは虐待関係のまま留まっています。私は在職中、私たちのサービスを利用し、心の癒しやエンパワーメント、法的支援へのアクセス、経済的自立、支援ネットワークの構築、虐待の連鎖の断ち切りなど、人生に前向きな変化をもたらした多くの女性や少女に出会ってきました。

サービスには個人差があり、すべてのサバイバーが同じ良い変化を経験するわけではないことを知っておくことは重要だと思います。

しかし、RENEWが提供した支援とサービスは、女性たちが生活を立て直し、明るい未来に向かうための大きな助けとなりました。

ブータンの女性が直面する問題は、複雑かつ多面的であり、前向きな変化をもたらすためには、私たちの関心と全体的で共同の努力が必要です。近年進展が見られるとはいえ、ブータンのジェンダー平等を達成するためには、まだやるべきことがたくさんあることは明らかです。国民総幸福量(GNH)へのコミットメントで知られるブータンは、ジェンダー平等の推進をリードする可能性を秘めています。

さらに、政府機関、市民社会組織、個人を含むすべての利害関係者を、女性の問題をめぐる会話に参加させることが不可欠です。意識を高め、固定観念に挑戦し、変化を提唱することで、私たちは一丸となって、女性が成長し、潜在能力を最大限に発揮できる環境を作ることができます。

今回のWeb版Asian Breezeはいかがでしたか。ぜひご意見、ご感想をお聞かせください。

Eメール→info@kfaw.or.jp


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