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女性をエンパワーすることは、バングラデシュをエンパワーすること:女性労働者の権利を守る闘い

-ファリン・ビンタ・ザヒル(バングラデシュ)

 

 

労働者なくして国家や社会は進歩できません。労働の価値はお金に限られるものではなく、労働者への敬意や公正な賃金、安全な労働環境、社会的尊厳、そして人権など多岐にわたります。労働を適切に評価することは、正当で公平かつ繁栄した社会を築く上で不可欠です。労働者は国家の原動力であり、バングラデシュ社会の形成において女性労働者は常に先駆的な役割を果たしてきました。

 

 

バングラデシュにおいて、女性は総人口の約51%を占めています。最近の統計によると、バングラデシュの労働力に占める女性の割合は42.7%です。しかし、女性は依然として社会のさまざまな場面で差別に直面しています。例えば、バングラデシュの女性は平均して1日6.2時間を家事に費やしていますが、男性はわずか1.4時間にすぎません。さらに、既婚女性の約70%が夫から何らかの暴力を受けており、約54%が身体的または性的虐待を受けています。また、女性は依然として相続法において平等な権利を認められていません[1]

 

 

農業分野における女性の貢献も過小評価されています。バングラデシュ農業情報サービス局(Department of Agricultural Information Services)のデータによると、女性の農業労働の45.7%は無報酬であり、残りの54.3%も市場価格より低い賃金しか受け取っていません[2]

 

 

「バングラデシュにおける既製服産業の技術向上(“Technology Upgradation in Bangladesh’s RMG Industry”)」という調査によると、2023年には衣料産業における女性労働者の割合が53%まで減少し、2014年の56%から低下、また産業初期の80%と比べると大幅な減少となっています。工場経営者は女性労働者を搾取することで利益を得ていますが、労働条件も賃金も女性労働者にとって有利なものではありません。さらに、ジェンダー不平等、セクシュアルハラスメント、発言の自由の制限、賃金格差、家庭の制約などにより、女性労働者は労働市場で不利な立場に追いやられています[3]

 

 

バングラデシュ統計局(BBS)の労働力調査によると、2023年の女性就業者数は2,451万人だったのに対し、2024年には2,288万人に減少しました。また、労働に従事していない女性の数は3,564万人から3,801万人に増加しました。つまり、2024年の就労女性は2023年と比較して約163万人減少したことになります[4]

 

 

COVID-19パンデミック以前は、毎年10万人以上の女性が仕事のために海外に移住していました。しかし、2022年以降、その数は徐々に減少しています。政府の海外雇用プラットフォームによると、2025年1月1日から12月6日までに移住した女性は約56,292人で、2022年と比べて約47%減少しました[5]。女性移民労働者の数は大幅に減少しましたが、彼女たちの経済的貢献は依然として非常に大きいままです。通常、女性移民労働者は男性移民労働者よりも低賃金ですが、この賃金格差にもかかわらず、女性は収入の90%を母国に送金しているのに対し、男性は収入の50%しか送金していません[6]

 

 

つまり、バングラデシュにおける働く女性の数は驚くべき速さで減少しており、これは国の経済と女性のエンパワーメントの両方にとって大きな後退です。2025年5月に国連ウィメンの支援を受けて発行された「ジェンダーの視点から見たバングラデシュ経済の現状 (“The State of Bangladesh’s Economy from a Gender Perspective”)」という報告書によると、昨年度前半(7月~12月)に約210万人が職を失い、そのうち約180万人が女性で、全体の85%を占めています。現在、労働市場で活動している女性はわずか19%で、ここ数年で最も低い水準です[7]

 

 

安全で信頼できる交通手段へのアクセスが限られていることから、女性の移動は大きく制限され、労働力への参加が妨げられています。バングラデシュでは女性に配慮した交通手段が不足しているため、女性は特に夜間にハラスメントなどの深刻な安全上の脅威にさらされています。ある調査によると、ダッカでは通勤女性の約79%が公共交通機関の中で性的ハラスメントを経験しており、6人に1人は毎日ハラスメントを受けています[8]。こうした安全面の懸念は、女性の経済的自立の直接的な障壁となっており、ハラスメントの恐怖から、仕事を探す際に多くの女性が徒歩圏内の仕事に限定したり、夜間勤務を伴う仕事を避けたりしています。

 

 

来たる第4次産業革命は、バングラデシュの女性労働者にとって大きな課題となっています。これは、労働市場における自動化、人口知能(AI)、ロボット工学、デジタル技術の導入が加速するためです。バングラデシュにおける状況として、女性の教育には一定の進展が見られるものの、高等教育への参加は依然として低い水準にあります。例えば、科学・技術・工学・数学(STEM)分野では女性の占める割合は依然として非常に低く、STEM分野の卒業生のうち79.4%が男性で、女性はわずか20.6%に過ぎません[9]。女性の行政トップ層の参画も限られています。トップレベルの行政職に就いている女性の割合はわずか7.6%に過ぎません。さらに、事務次官および事務次官の補佐レベルでは、その割合はわずか1%以下です[10]。こうした障壁は、バングラデシュでは依然として51%の少女が18歳未満で結婚し、意図しない妊娠率が48%に達し、その結果、安全でない中絶により多くの女性が命を落としているという現状によってさらに強化されています[11]。このような状況により、バングラデシュの女性労働者は永続的に不利な立場に置かれ、経済的・社会的な機会において遅れを取り続けています。

 

 

一方、バングラデシュでは売春に従事する女性は法的に認められておらず、売春に関する明確な法律もありません。そのため、彼女たちは労働者として扱われず、法的な支援や保護を受けられないどころか、警察によるハラスメントや社会的差別の被害に遭っています[12]

 

 

2024年11月18日、バングラデシュの暫定政府は「女性改革委員会」を設立し、女性の参画と権利の再定義に取り組みました。この委員会は、法的、社会的、経済的、政治的構造における女性差別を見直し、必要な改革を提案することを目的としました[13]。しかし、国内の女性の権利擁護団体や人権活動家たちは、暫定政府発足から1年が経過した現在でも、女性たちの期待は満たされていないと主張しています。女性改革委員会は設立されたものの、その報告書は批判を受け、委員長や委員は軽視され、提言の実施に向けた目立った取り組みも見られません。活動家たちによると、働く女性の減少に加え、女性への暴力や不処罰の文化が状況をさらに悪化させています[14]

 

 

バングラデシュにおける女性の平等な権利の実現は、社会正義の問題であるだけでなく、国際的に認められた基本的人権です。バングラデシュが真に包摂的で持続可能な未来を築くためには、女性の尊厳を守り、あらゆる分野で女性の参画を確保し、搾取から保護することが不可欠です。女性労働者が権利を奪われたり、声を上げることを封じられたりするのではなく、国家の繁栄を共に築く対等なパートナーとして力を発揮できる社会を築くことが、私たち全員の責任であることを理解しなければなりません。

 

[1] নারী সংস্কার কমিশনের প্রতিবেদন নিয়ে রাষ্ট্রের দায় কী | প্রথম আলো

[2] Barriers to Ensuring Women’s Land Rights and the Way Forward | The Daily Star

[3] কেমন আছেন বাংলাদেশের নারী শ্রমিকরা?

[4] দেশে উদ্বেগজনক হারে কমেছে নারী কর্মজীবীর সংখ্যা

[5] Skill gaps, abuse and stigma: The untold story behind the drop in Bangladeshi women migrants | The Business Standard

[6] কেমন আছেন বাংলাদেশের নারী শ্রমিকরা?

[7] দেশে উদ্বেগজনক হারে কমেছে নারী কর্মজীবীর সংখ্যা

[8] 79% female commuters in Dhaka experience sexual harassment on public transport: research says | The Daily Star

[9] women reform commission full report-20250504093259.pdf p.97

[10] কর্মক্ষেত্রে নারীর অংশগ্রহণ ও টিকে থাকা | বণিক বার্তা

[11] women reform commission full report-20250504093259.pdf p.14

[12] women reform commission full report-20250504093259.pdf p.132

[13] নারী সংস্কার কমিশনের প্রতিবেদন নিয়ে রাষ্ট্রের দায় কী | প্রথম আলো

[14] দেশে উদ্বেগজনক হারে কমেছে নারী কর্মজীবীর সংখ্যা

[15] Women Farmers Working on a Rural Farm · Free Stock Photo

[16] File:Working conditions of Garment workers in Bangladesh.jpg – Wikimedia Commons

[17] Bangladesh Women Workers Carrying Sand on Head · Free Stock Photo

 

農村の農場で働く女性農家 [15].
(写真 : Rakibul Alam Khan / Pexels)

 

バングラデシュの縫製労働者の労働環境 [16].
(写真 : Fahad Faisal, CC BY-SA 4.0)

 

砂を頭に載せて運ぶバングラデシュの女性労働者 [17]

(Image courtesy of Rakibul Alam Khan via Pexels)

 

【プロフィール】

 

ファリン・ビンタ・ザヒル

 

教育と科学技術の分野で12年以上の経験を持つ教育者。バングラデシュの国家教育政策に積極的に関わり、女性のエンパワーメント支援にも取り組んでいる。

 

≪KFAW 第33期海外通信員≫

 

 

パキスタンにおいて災害は単なる自然現象ではない
━きわめて社会的なものだ

-ジャワリア・A・カシフ(パキスタン)

 

 

パキスタンでは、洪水、鉄砲水、地滑り、氷河湖の決壊によって起こる洪水、熱波など、気候変動に起因するさまざまな災害が発生し続けています。2025年には深刻な災害がすでに複数発生しており、災害が女性と少女、そして社会的に疎外されたジェンダーの人々に特に影響を与えていることが明らかになっています。その影響は単に被害を受けやすいと言う問題にとどまらず、生活再建や復興に参加する機会が制限されることや基本的な支援を受ける機会が限られること、災害対応に声が反映されないなどの点にまで及びます。

 

 

パキスタンでは災害時に女性や少女は、次のようなリスクに直面します。ジェンダーに基づく暴力の激化、ケア労働や家事負担の増加、資源や人道支援への利用制限、妊産婦医療サービスの中断、そして早婚や人身取引に対するリスクの増加などです。この問題は、従来から存在するジェンダー不平等、避難生活、また社会インフラの崩壊によるものであり、女性の安全と福祉を確保するためには、ジェンダー視点を入れた災害管理戦略の実施が不可欠です。

 

 

パキスタンの避難所や仮設住宅では、特に少女に対する性的ハラスメント、暴行、搾取のリスクが高まります。女性がケア労働の役割を担うという慣習から、女性は不安定な状況下で家族を支えることを余儀なくされ、食料・燃料・水を得るため一層の労働を強いられます。また文化的制約や貧困により、特に農村部女性は、食料や清潔な水、衛生用品などの必需品を入手しづらくなっています。災害は医療サービスにも混乱をもたらし、妊婦や幼い子供を持つ母親、慢性疾患など健康上のニーズがある人々は、災害時に医療を受けることが困難になります。過密状態にある避難所は感染症の拡大リスクを高め、月経衛生や妊産婦ケアはしばしば軽視されます。災害による貧困と被災リスクの増加は、経済的負担を軽減するため、家族が少女や女性を結婚させる要因にもなります。少女たちは遠い場所にある水を汲むために学校を退学させられ、教育や将来の機会がさらに制限されます。

 

 

パキスタンに従来からある社会的・文化的なジェンダー不平等は、災害時にさらに深刻になります。その結果、女性が危険にさらされやすく、災害にうまく対応するのが難しくなります。さらに、災害によって経済状況が悪化すると、搾取や性的虐待、人身取引といった問題が起こる可能性もあります。

 

 

2025年に起きた多くの災害では、死亡者の多くは子どもや女性であり、これは文化的規範により移動が制限されていたり、育児や介護をしていて避難が遅れたりするためです。例えば、国家災害管理庁(NDMA)によるモンスーン期のデータ [18] によると、数百人の死亡者のうち多くが子どもでした。死亡者数は報告されますが、ジェンダー別のデータが一貫して入手できるわけではなく、そのためジェンダー視点を入れた対応策の設計が難しくなっています。国家災害管理庁(NDMA)[19] や州災害管理局(PDMA)[20] の災害報告書には、性別(データ収集が可能であれば、男性、女性、ノンバイナリー)、年齢、妊娠の有無、障がいの有無などの情報を含める必要があります。この情報によってより適切な対応が可能になります。

 

 

2025年6月から9月初旬にかけてのモンスーン期に、パンジャブ州だけで440万人 [21] 以上が被災し、そのうち240万人が避難しました。大規模な避難の中で、女性たちはプライバシーの確保や避難キャンプでの安全性、生理用品へのアクセス、安全な空間、男女別のトイレや衛生設備など、様々な問題に直面しています。

 

 

パキスタンでは、女性は公式な災害対策機関にあまり参加しておらず、地域の災害対応でリーダーになることも少ない傾向にあります。過去の災害や2025年の洪水時の事例から、多くの地区で緊急対応の計画や地方行政が男性中心であり、救援や復興計画にジェンダー視点から見た特有のニーズが十分に反映されていないと指摘されています。

 

 

洪水の多い地域では、政府は女性の声を地域の防災委員会に反映させ、避難経路やキャンプ地、避難所の設計において、安全性やプライバシー、文化的規範を考慮する必要があります。また、避難キャンプでは、男女別の衛生設備、女性のプライバシーの確保、安全な就寝スペース、生理用品へのアクセス、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)、そして清潔な水を提供する必要があります。

 

 

パキスタンが真にすべての人を守る災害に強い社会を築くためには、計画、警報、対応、復興といったあらゆる段階にジェンダーの視点を組み込む必要があります。2025年の災害は、災害が単なる自然現象ではなく、社会的な要素と深く結びついていることを強く示しました。

 

[18] 65 die, 118 injured in rain-related incidents across country – Pakistan – Business Recorder

[19] National Disaster Management Authority (NDMA)

[20] Provincial Disaster Management Authority – PDMA

[21] Rescue operations continue as death toll from floods in Punjab nears 100

 

【プロフィール】

 

ジャワリア・A・カシフ

 

家族事件弁護士、ジェンダーに基づく暴力の専門家、法務トレーナー、女性の権利活動家、パキスタン・ラホール地区女性保護センター任意弁護士パネルメンバー。

 

 

≪KFAW 第33期海外通信員≫

 

 

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