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Asian Breeze 113号

目次

  1. 女性に対する暴力撤廃に向けて
  2. 女性への暴力ゼロ運動特別講座 身近に潜む盗撮の手口 ~どうすれば見抜けるか~
  3. ネットの罠に囚われて:セクストーションと盗撮がいかにバングラデシュ女性を沈黙させるか
    ファリン・ビンタ・ザヒル(バングラデシュ)

女性に対する暴力撤廃に向けて

毎年11月25日は、国連が定めた「女性に対する暴力撤廃の国際デー」です。また、同日から12月10日の「人権デー」までの期間は、UN Womenを中心に「女性に対する暴力撤廃の16日間運動」が実施されます。2025年のテーマは「すべての女性と少女に対するデジタル暴力の撤廃に向けて団結(UNiTE)しよう」でした。この期間中は、暴力の根絶に向けた意識啓発と行動を呼びかけるため、世界各地でオレンジ色をシンボルとしたキャンペーンが展開されます。

一方、日本では、毎年11月12日から25日まで、内閣府主唱による「女性に対する暴力をなくす運動」が全国で実施され、この期間中は、女性に対する暴力根絶のシンボルであるパープルリボンにちなみ、各地でタワーや公共施設を紫色に照らす「パープルライトアップ」が行われています。北九州市立男女共同参画センター・ムーブにおいても、この趣旨に賛同し、毎年ライトアップを実施しています。

こうした取組の一環として、公益財団法人アジア女性交流・研究フォーラムと北九州市立男女共同参画センター・ムーブは、令和7年11月8日、女性への暴力ゼロ運動特別講座「身近に潜む盗撮の手口 ~どうすれば見抜けるか~ 」を開催しました。

Asian Breeze 113号では、本講座の報告と、関連して、令和7年度海外通信員のファリン・ビンタ・ザヒル(Farin Binta Zahir)さんによる、バングラデシュにおけるセクストーション(性的脅迫)と盗撮の状況に関するレポートを併せてお届けします。

 

女性への暴力ゼロ運動特別講座 身近に潜む盗撮の手口 ~どうすれば見抜けるか~

令和7年11月8日に開催した「女性への暴力ゼロ運動特別講座」では、北九州市で「盗撮をさせない社会づくり」に取り組む 盗撮防犯Wc代表山内千春さんを講師にお迎えしました。講座では、盗撮の現状や具体的な手口についての講義に加え、小型カメラの実物を手に取って確認する体験や、会場内に設置した盗撮疑似体験ブースにおいて、実際に盗撮カメラを探すワークショップを行いました。また講師からは、「知れば防げる」というメッセージが強調され、正しい知識を持つことの重要性が示されました。

参加者は講師の話に熱心に耳を傾け、終了後のアンケートには「自分の防犯意識の低さを実感した」「盗撮や対策、注意点について家族や友人に情報共有したい」といった感想が寄せられ、盗撮被害防止への意識を高める有意義な機会となりました。

≪講座内容抜粋≫

地域における盗撮防犯活動
 盗撮防犯Wcは、2016年から駅や公園の公衆トイレ、公共施設などを対象に、盗撮カメラが設置されていないかを確認するパトロール活動や、防犯ステッカの配布などを継続的に行っています。

「盗撮」とは、被写体となる人物に気づかれないよう、カメラでこっそりと撮影する行為で、「盗み撮り」「隠し撮り」とも呼ばれます。本人の同意を無視した卑劣な行為であり、年齢や性別に関係なく、誰もが被害に遭う可能性のある性暴力です。しかし、身体に直接触れない非接触型であることから、盗撮は性犯罪であるという意識が低いという現状があります。

 

テクノロジーの進化と盗撮被害の深刻化

 

 近年、テクノロジーの進化により、盗撮に使われるカメラは高性能かつ小型化し、インターネットで容易に入手できるようになっています。置き時計型、メガネ型、ネジ型、モバイルバッテリー型など、一見しただけではカメラが仕掛けられていると気づきにくい機器も少なくありません。

 

 盗撮された画像や映像はインターネット上で売買され、その市場規模は数百億円にのぼるとも言われています。中には、遊び半分で撮影していた高校生が、高値で売れることに気づき、売買へとエスカレートした事例も指摘されています。

 

 また、オンライン上に一度流出した画像や映像は完全に削除することが難しく、「デジタルタトゥー」として被害者に長期的な苦痛を与え続けます。

加害者も被害者も生まない社会を目指して

 盗撮を防ぐためには、子どもたちへの性教育や倫理教育が重要です。自分の行為が相手にどのような影響を与えるのかを考える力を育むことが、加害を生まない社会づくりにつながります。

 また、施設管理者には、日常的に利用される施設や職場、学校などにおいて、カメラが設置されにくい環境を整備することが求められます。併せて、大人一人ひとりにも、トイレなどを利用する際にカメラが設置されていないか周囲へ意識を向けることが求められます。これらの行動は、自分自身を守るだけでなく、他の誰かを守ることにもつながります。

 

 日本では、2023年に「性的姿態等撮影罪(撮影罪)」が新たに施行され、盗撮行為の検挙数も増加傾向にあります。盗撮は「知れば防げる」犯罪です。盗撮について正しく理解し、日常の中で意識を高めることで、防ぐことができる犯罪があります。被害者も加害者も生まない社会の実現に向けて、地域・企業・行政が連携した取組と、市民による啓発活動の重要性はますます高まっています。

 

盗撮防犯Wcは、今年度のムーブフェスタにも参加予定で、令和8年7月9日(木)にムーブ1階交流広場にて、小型カメラの展示や盗撮の疑似体験ブースを出展します。ぜひ会場にお越しいただき、盗撮防犯Wcの方々のお話を聞いたり、小型カメラをご覧いただいたりして、盗撮に関する防犯意識を高める機会としていただければ幸いです。

ネットの罠に囚われて:セクストーションと
盗撮がいかにバングラデシュ女性を沈黙させるか

KFAW 第33期 海外通信員
ファリン・ビンタ・ザヒル

 

プロフィール

教育と科学技術の分野で12年以上の経験を持つ教育者。バングラデシュの国家教育政策に積極的に関わり、女性のエンパワーメント支援にも取り組んでいる。

 

 

 

 バングラデシュでは、性やセクシュアリティに関する話題は依然として強い社会的タブー[1]とされています。そのため、セクストーション(性的脅迫)や盗撮といったサイバー犯罪が頻発しています。バングラデシュ電気通信規制委員会(BTRC)のデータによると、2026年1月時点で同国のインターネット加入者数は1億2,899万人に達しており、こうした犯罪が起きやすい環境が拡大しています。その背景の一因として、言うまでもなくジェンダー不平等があります。バングラデシュ警察によると、サイバー犯罪の被害者の70%は15歳から25歳までの女性および18歳未満の未成年者であり、加害者の多くは17歳から25歳までの若い男性です。十代の若者は、サイバー犯罪において最も狙われやすい層です。


 バングラデシュでは、多くのティーンエージャーが親に交際関係を隠そうとするため、プライベートな写真を共有したり、性的なメッセージをやり取りする場としてインターネットに依存しがちです。これが彼女たちを脆弱な立場に置き、容易に標的にされる状況を生み出しています。その結果、「セクストーション」のような犯罪が拡大しています。セクストーションとは、被害者のプライベートな写真やメッセージを公開すると脅し、金銭やその他の要求[2]に応じさせる犯罪行為です。さらに深刻なのは、交際相手や夫、パートナーが、テクノロジーを悪用して女性に対する権力や支配力を示すために、女性の親密な画像や動画をオンライン上で共有するケースがあることです。被害はオンライン空間にとどまらず、生涯にわたって続きます。個人の生活、家族生活、社会生活と言ったあらゆる側面に残酷に影響を及ぼし重大な経済的損失を被る人もいます。2021~2022年の調査では、女性に対するサイバー暴力の3分の1が元恋人によるもので、さらに20%はデジタル上の「友情関係」に起因していたことが明らかになりました。被害者は、信頼がいつ罠に変わったのか見抜くことができません。こうした犯罪は、教育水準の低い人や読み書きのできない人にだけ起こるわけではありません。バングラデシュで注目を集めた事件がこれを明確に示しています。あるバングラデシュ人女優のプライベートな動画が元婚約者によって流出した事件では、彼女が監視や嘲笑、道徳的非難にさらされた一方、裏切った男はほとんど、あるいは全く批判を受けませんでした。女性を公平に扱う[3]という点において、社会はまだテクノロジーに追いついていません。


 近年、多くの女性が、試着室やその他の私的空間で撮影された動画を通じて、恐喝や性的搾取などさまざまなタイプのサイバー犯罪の被害者となっています。この種の犯罪は盗撮として知られています。盗撮の一般的な例としては、窓越しにのぞき見する、隠しカメラを使用する、私的な行為を盗み見する、鏡や反射物を使用する、ウェブカメラをハッキングする、不適切な角度から撮影する、鍵穴からのぞき見するなどが挙げられます。多くの場合、被害者は自分が撮影・記録されていたことに気づいていません。盗撮は、単に歪んだ気質や復讐行為から行われるものではなく、今日ではオンライン上で取引される商業活動となり、その市場規模は数百億ドル規模に達するとされており、この形態の搾取がいかに広範で、かつ利益を生んでいるかを示しています。さらにディープフェイクや人口知能(AI)といった高度技術へのアクセスが容易になったことも、こうした犯罪の増加に拍車をかけています。


 ダッカのグルシャン、バナニ、ミルプール、ウットラ、ダンモンディといった地域には、大型店舗や有名な美容サロンが数多く立地しています。2011年には、ある有名な美容サロンがバナニ支店の更衣室[4]にCCTVカメラを設置していたことで、大きな批判を受けました。2016年にも、ウッタラにある高級美容サロンで、利用者が施術を受けている私的な場面が、本人の知らないうちにCCTVカメラで撮影されていたという類似の事件が発生しています。

 

 当初、サロンの経営者は、共用スペースを含む複数の部屋に設置されていたカメラについて「照明」だと主張していましたが、後にそれが「カメラ」だと認めました。ただし、「作動していない」と主張しました。さらに追及されると、「カメラの映像はサロンのスタッフが管理しているので、心配する必要はない[5]」と述べました。2023年にデイリー・スター紙のインタビューに応じた36歳の女性客は、美容サロンの特定の支店を何度も利用していたが、複数の部屋にカメラが設置されていることを知りショックを受けたと語っています。


 これは、2011年の時点で高等裁判所が全国すべての美容サロンの施術室からCCTVカメラを撤去するよう命じていたこと[6]を踏まえると、特に深刻な問題です。2025年にも、再び類似の事件が明るみに出ました。ダッカのウッタラにある衣料品店の試着室の中で、女性が不適切な形で撮影されていた疑いが浮上したのです。バングラデシュの著名なテレビ俳優がこの問題を公に取り上げ、SNS上で強い憤りを表明しました[7]。さらに2026年1月には、ある大学病院で女性医師が使用するトイレに隠しカメラが設置されたという疑いにより、警察が男性研修医の身柄を拘束しました[8]。一般的に、被害者非難が蔓延する社会的風潮の中で、多くの被害者やその家族は警察に助けを求めたり、法的措置を取ったりしません。


 バングラデシュでは、サイバー犯罪に取り組み、サイバーセキュリティを強化し、オンライン上の虐待被害者を支援するため、複数の組織が積 極的に活動しています。中心的な役割を担っているのは政府機関で、国の緊急ヘルプライン(999)、ダッカ首都圏警察(DMP)の対テロ・サイバー犯罪捜査ユニット( CT-Cyber Crime Investigation Unit)、サイバー警察センター(CPC)、犯罪捜査局(CID)のサイバー犯罪・特殊犯罪部門(CyberCrime & Special Crime Division)、そして女性や未成年者のオンラインハラスメント被害者支援に特化した女性と子供のためのサイバーサポートデスク(Cyber Support for Women & Children Desk)などがあります。国家レベルでは、バングラデシュ電子政府コンピュータ緊急対応チーム(Bangladeshe-Gov CIRT)、デジタルセキュリティ庁(Digital Security Agency)、そして新設された国家サイバーセキュリティ庁(NCSA)が、インシデント対応と全国的な被害報告を担当しています[9]。これらに加えて、バングラデシュ法律扶助サービストラスト(BLAST)、サイバー犯罪啓発財団(Cyber Crime Awareness Foundation ) 、ナリポッコ(Naripokkho)、BRAC、Cyber Teensなどのデジタル権利団体のような市民社会団体が、啓発活動、被害防止、法的支援の面で重要な役割を果たしています。


 しかし、写真や動画がオンライン上に流出すると、完全に消し去ることは不可能です。被害者を適切に保護するためには、政府機関の職員がサイバー犯罪案件に対応できるよう、より高度な研修を受ける必要があります。多くの被害者が最初に何をすべきか、どこに助けを求めればいいのかわからないからです。また、女性の安全確保のため、政府は国際的なテクノロジー企業と協力し、隠しカメラを検知できる、手頃で使いやすい機器の開発にも取り組むべきです。


 2014年から2022年の間に、ダッカのサイバー犯罪裁判所が評決を下したのは、2,000件以上提出された案件のうち、わずか200件余りにすぎません。つまり、有罪判決率は10%未満です。中には、判決が出るまでに何年も要する事件もあれば、解決されないまま静かに消えていく事件もあります[10]。その背景には、バングラデシュの法制度が極端に遅いことが挙げられます。警察は、一般日誌(GD)や第一情報報告書(FIR)を提出した後でなければ、デジタル鑑識を行うことができません[11]。

 

 バングラデシュでは、女性及び児童抑圧防止法( Women and Children Repression Prevention Act , 2000 ) 、情報通信技術法( ICT Act, 2006)、電気通信法(Telecommunication Act, 2001 ) 、ポルノ規制法( Pornography Control Act, 2012)、サイバーセキュリティ法(Cyber Security Act, 2023)など、サイバー犯罪や一部のオンラインハラスメントを処罰するための法律が存在します。しかし、これらの法律だけでは、ジェンダーに基づくオンライン暴力、特にソーシャルメディア上の性的ハラスメントに十分対応できていません。さらに、汚職や権力者の影響力といった問題によって、その実効性も弱められています。サイバー犯罪裁判所が存在しているにもかかわらず、約90%の事件が通報すらされず、被害者が正義を得ることがいかに困難であるかを示しています[12]。


 加えて、別の深刻なリスクも存在します。いくつかのセクストーション事件では、被害者自身が、搾取に使われた行為によって、逆に法廷で処罰される可能性があるのです。具体的には、セクストーション被害を申告することで、パートナーと親密な画像を共有していた事実が明らかになりますが、それ自体がバングラデシュでは禁止されている行為です[13]。総じて言えば、現行の法律だけでは被害者を守ることも、拡大し続けるジェンダーに基づくオンライン暴力の問題に対処することもできません。この問題に効果的に立ち向かうためには、社会全体での連携と意識向上が不可欠です。


 セクストーションや盗撮といったサイバー犯罪は、バングラデシュにおいて拡大する深刻な脅威であり、現行の法制度や制度的枠組みは被害者を完全に保護するには十分ではありません。オンライン上の虐待に対処するため、複数の政府機関や非政府組織が活動してはいるものの、恐怖やスティグマ(汚名)、情報不足といった要因から、多くの事案がいまなお報告されていません。試着室に設置された隠しカメラや、美容サロンにおける盗撮、デジタルプラットフォームの悪用は、女性や少女が日常の空間においていかに脆弱な立場に置かれているかを示しています。隠しカメラを検知できる装置、法的枠組みの強化、通報体制の改善、そして現場で対応にあたる全ての関係者に対する適切な研修は、不可欠な対策です。最も重要なのは、デジタル空間における性的ハラスメントを取り巻く沈黙を社会が打ち破り、被害者が安心して支援や正義を求められるようにすることです。より実効性のある法律、確かな執行、そして社会全体の意識向上があってこそ、バングラデシュはこれらの犯罪を効果的に取り締まり、すべての人にとってより安全なオンライン環境を構築することができるのです。

 

[1] Online sexual extortion: Why can’t we protect the most vulnerable?│The Daily Star
[2] 同上

[3] Cyber Violence Is Silencing Women in Bangladesh│South
Asia Monitor

[4] CCTV in Women’s World raise safety concerns│The Daily
Star
[5] িবউটি পাল

[6] 同上
[7] ট্রায়াল রুমে ক্যামেরা বসিয়ে গোপনে করা হতো নারীদের ভিডিও: ইরফান সাজ্জাদ

[8] Intern detained over hidden camera in female doctors’
washroom│The Daily Star

[9] The National Cyber Security Agency (NCSA) has introduced around-the-clock helpline service to provide swift assistance to the public in combating cyber crimes│Dhaka Stream
[10] 同上
[11] 同上

[12] Invasion of privacy: Sharing Non-Consensual image and
Video Peddling in Bangladesh
অনলাইেন অন্তরঙ্গ ছিব প্রকাশ িনেরােধ আইন চাই
[13] 同上

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