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調査・研究

第29回KFAW研究報告会(2018年3月25日)

1.日時  2018年3月25日(日)14:00~16:00
2.場所  北九州市大手町ビル5階小セミナールーム

報告① 「日本における外国人ケア労働者の受け入れと育成をめぐる現状と課題:ジェンダーの視点からの分析」
東京福祉大学国際交流センター 特任講師 鹿毛理恵
佐賀女子短期大学准教授  前山由香里
報告② 「アジアにおける性的マイノリティの人権と市民社会:台湾、シンガポール、日本の比較研究を中心に」
北九州市立大学法学部教授 田村慶子
鹿児島県立短期大学准教授 疋田京子


   KFAWでは、アジア太平洋地域を中心とする世界各国のジェンダーや男女共同参画に関するさまざまな課題について客員研究員による調査・研究を行っています。これは、国際的な動向や視点から見ることによって、国内の課題を明らかにすることができ、ひいては北九州市の男女共同参画の実現に貢献するものです。 今回、2016/17年度の2年間にわたる客員研究員による研究報告会を開催しました。

    報告1では、ジェンダーの視点から、①要介護者が男性でも、女性介護者を選択することが多い、②要介護者が女性(特に閉経前)では女性介護者を選択、③要介護者が女性であっても、体力と安定感を理由に男性介護者を選択することケースもある、④要介護者は、生活の多くの場面で自立が困難な状態が死ぬまで続くため、介護者に「依存」し、それが「負い目」意識を生み、援助を与える側の勢力下におかれる(社会的地位の劣位性)、⑤要介護者の「負い目」意識は、自分よりも劣位における者に介護を求める。例えば、男性優位社会において、女性介護者(夫は妻、母は娘)が選択される、グローバル社会の到来において、外国人介護者が選択される、などの分析がなされました。日本では、超高齢社会を迎え、国内で介護人材の確保が難しいため、外国人材の受入れも始まっている状況の中で、外国人介護福祉士候補者を受け入れている日本の施設の訪問調査や、インドネシアの看護大学の学生調査の結果、介護福祉士をめざす留学生を対象にした日本の養成校における育成の事例などについて、報告していただきました。
  
   報告2では、台湾の性的マイノリティの権利擁護運動の歴史的な分析と、その流れの中で、「同性カップルの婚姻制度を認めないのは違憲、2019年5月までに同性婚を合法化すること」とする2017年3月の司法院大法官会議(憲法裁判所)の判断が下され、アジアで初めて同性婚の合法化が実現される見込みであることが報告されました。
   
   シンガポールでは、「愛する自由」を訴えるピンクドット集会が2009年から開催され、参加者が増えていくなか、2016年には、主催者から「もう人数を増やす段階は終わった」と、法律相談などを開始することになりました。一方で、「ラブシンガポール・ネットワーク」「白を着る運動」など、反ピンクドットの運動もあり、性的マイノリティの権利拡大がなかなか進まない状況です。
   
   一方、日本では、1998年に国内で性別適合手術が医療行為として合法的に実施されるようになり、性の多様性への法的対応として、「性同一性障害特例法」が2003年に制定されました。また、性別適合手術の症例数の増加、立法的解決を促す裁判所の決定、テレビドラマ(「金八先生」等)で性同一性障害が題材化された、性同一性障害当事者が地方議会に出馬・当選する動きが出た、学術・実務団体から立法を求める動き、自民党の中にこの問題に取り組もうとする動きなどから、性同一性障害者の戸籍の性別変更の立法化へ向けた動きが出ています。こうしたなか、同性パートナーシップを公的に認証する地方自治体も現れており、今後の動きが期待されます。

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*各研究員の報告は『KFAW調査研究報告書』をご覧ください。