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KFAWアジア研究者ネットワーク開催セミナー

KFAWアジア研究者ネットワークセミナー 2009年度 第5回(2009年10月14日)
「現代台湾における看護師と看護教育―ジェンダーの視点から」

KFAWアジア研究者ネットワーク 第5回研究会
「現代台湾における看護師と看護教育-ジェンダーの視点から」

  • 日 時    2009年10月14日(水)18:30~20:00
  • 場 所    福岡女子大学 A棟2階 A23
  • 講 師    福岡女子大学文学部人文学系 准教授 宮崎 聖子
  • 参加者     10人

【報告】
急速に少子高齢化が進む台湾では、介護職や各家庭のメイドとしてインドネシアやフィリピンからの外国人労働者が働いている。一方、台湾国内の看護師養成については、需要と供給のアンバランスにより看護教育をおえた者が職につけなくなっている。台湾政府は看護労働を外国人に開放することにも看護師の国外送り出しにも積極的ではない。しかしグローバル化は台湾の看護教育や看護の現場にも影響を与えており、今後どのような方向をめざすべきか研究が始まったところである。

台湾における看護師の現状
1967年、考選部(公務員や専門職の試験を掌握する政府機関)は「護士」(看護専門学校、看護職業学校卒業程度)と「護理師」(大学卒業程度)の資格試験を開始し、合格者に正式な免許を発給するようになり、看護の専門職としての地位が確立した。
2008年10月現在、台湾で働く本国籍の看護師の数は護理師94,891人(78.0%)、護士26,389人(21.7%)、助産士314人(0.3%)で、女性が99.2%を占め、看護は女性の職業といえる。近年の資格の高度化を反映し護理師が毎年16%の伸びを示している。ただし看護師(有資格の護士、護理師)の離職率は高い。ICN(国際看護協会)の121か国の加盟国の52%で看護師が不足しているにもかかわらず、教育機関の増加と就職先の減少により、台湾では看護系卒業生の供給過剰となっている。ただし聞き取りによれば、臨床の現場では、常に看護師不足を感じているという。

台湾の看護師の教育程度については34.2%が看護職業校(2005年より募集を停止)を卒業、23%が2年制看護専門学校を卒業、25%が5年制の看護専門学校を卒業している。
大学卒あるいは在職で2年または4年生の課程をおえたものの16.8%である。修士以上では1%以下である。
台北医学大学の林佳静によると「看護関連の高等教育機関は増加しているが看護師の質と量に関する需要と供給がアンバランスである上に教育資源の適正配置ができていない。 看護労働の肉体的、精神的負担が大きく、労働環境も悪化しているために定着率も悪い。
医療の高度化に伴い、入院患者の病態も年々重いものになっており多くの人が病院で亡くなるので看護師1人が看る患者の数が多く深夜勤であれば先進諸外国の3~5倍であるためストレスになっている。」という。


グローバル化のもとでの看護教育と看護師
看護師は供給過剰であるため、台湾政府は外国から受け入れる必要性を感じていない。2002年WTOへ加入した後、人材獲得において優秀な台湾人看護師が国外に出ていくことを懸念して看護教育を高度化し「量より質」をめざす改革に着手し、2006年に内科や外科などの分野ごとの専門性を高める「専科護理師」((Nurse Practitioner NP)という資格が創設された。12月に第1回の試験が行われ、1,658人が受験し、875人が合格した。


アメリカ看護師資格の取得と渡米する理由
少数ではあるが看護師、または看護学生が国外に移動する先はアメリカである。主として親戚や知己などのつてを頼っている。アメリカは深刻な看護師不足に見舞われており2005年外国人の看護師資格試験合格者数の1位はフィリピン人で6,852人、台湾人は8位で222人である。台湾から看護師になる目的で留学、就職のために渡米した人数が多かったのは1980年代で、台湾の政情を不安視して台湾全土で移民熱が高かったことも関連している。近年は国内に看護の博士課程、修士課程が増え、看護行政職や看護師長などのポストに就くことができるようになったため国外に出る必要がなくなっている。
しかし、看護師経験者にインタビューすると、彼女たちはアメリカでは台湾よりも看護師の待遇が良いと認識している。特にアメリカでは看護師が医師の指示に従う度合いが低く、職務に自律性があり、勤務時間に弾力性があるため、資金に余裕がない人にとっては働きながら学歴を高めることができるのが台湾にない魅力であるという。
現在、台湾の看護師の給与は女性の一般事務職より高い。しかし、看護師の多くは過酷な勤務のため将来展望を持てないでいる。それは長時間過重労働、労働内容を考えると低い給与、長期間勤めても昇給は少ないこと、自律性の低さ、教育研修、昇進の機会が少ないなど、ジェンダーの問題と深く関連している。


まとめ
看護職は専門職とされながら、過酷な労働条件のもとで働いている。そのため、より豊かな国では看護職が敬遠されて看護師が不足する。それを埋めるために、より貧しい一部の国においては、看護師の国外移動(流出)が起きてくる。その際、受け入れ国と送り出し国の経済格差が大きいほど経済的インセンティブは大きく、制度的な規制など障碍が少ないほど移動は起きやすいであろう。
台湾からアメリカへの看護師の移動については1980年代と違って政治的要因や経済的要因が小さくなった現在でも存在する。台湾では看護師のほとんどを女性が占めていることから、看護労働にまつわるジェンダーの問題が反映しているのではないかと推測される。
そのためアメリカの看護職の「待遇の良さ」を信じ、より高い学歴を求めるための移動はなくならない。



【質疑】
Q1 RN(Resisterd Nurse-正看護師)とNP((Nurse Practitioner-専科護理師)の 違いについて
A1 RNは日本でいえば正看護師ですべての科で仕事をしていくがon the job でトレーニングし、力をつけていく。RNの資格がないとNPにはつけない。NPは医者がいないときでも患者がどういう治療を受けたらよいかという判断ができるような専門性を持っている。台湾の行政院衛生署の護理及健康照護処(看護と健康促進課)では専門化と職務の自律性を高め、看護師の権限を向上させるためにNP制を創設した。


Q2 看護師は女性が多いが医師はどういう状況か
A2 医師は男性が多い。医師と看護師の権力格差の上にジェンダー問題も起こっている。
例えば2001年に感染力の強いSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したとき、妊娠している看護師が死亡した。当時、医療従事者についた手当が医師1万元、看護師3千元で、このような命の格差、医師との格差、ジェンダーの格差に看護師たちは怒りを覚えた。大学教員のA氏も、これをきっかけに2003年、看護者権益促進会を立ち上げた。
A氏はまた、アメリカのエージェントが台湾の看護学生をリクルートに来ても、実際にはアメリカと台湾の看護の仕事には大した差はないとして、アメリカに行くことを学生に勧めないという。むしろ、看護学生がエージェントの搾取の対象になっているということを危惧している。


Q3 シンガポールの状況について
より豊かな国では看護師が敬遠されて不足し、より貧しい一部の国では看護師の国外移動がおきているという。シンガポールは豊かな国だと思うが看護師の受け入れも送り出しもしているというのはどういう状況なのか。
A3 制度的にかっちりとされていて、一定期間になると永住権をあたえられ、統計上、外国から来た人もシンガポール国籍になって統計的には不明になるようだ。インドネシアやフィリピンからきた看護師は経験を積んだ後、待遇の良い中東で働き、レベルアップしているのかも知れない。外国人労働者には就業許可が与えられ、看護師は中級レベルの許可証が与えられる。いったん受け入れるとシンガポール国籍も与えるなど、ほとんどの権利も得られるので多くの人は定着しやすいという事情があるようだ。


Q4 シングルの看護師の割合について
A4 勤務時間上、恋人を見つける時間がないというのが実情だ。シフト制があるので、警察官と結婚する人が多い。かなりの収入もあるので無理に結婚しなくてよいという考えの人もいる。台湾の看護師の66.5%がシングルである。
O1 日本では看護師は結婚すると辞めてしまう人が多い。情熱があってやる気はあるのだが、重労働で大変な仕事だというのが理由。企業の診療所の看護師で夜勤がない人も同じ意見である。
O2 労働時間、報酬、職務の自律性などのファクターがなかなか突破できない。


Q5 日本の看護師の実情と看護教育について調査報告はあるか
A5 調査して比較できればよいと思っている。


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