活動報告
第2回KFAWデートDV防止プログラム開発 公開講演会(講演要旨)
「デートDVを防ぐには ~効果的な方法と実践~
アウェアのデートDV防止プログラム」
- 日 時 2009年11月10日(火)18:00~20:00
- 場 所 北九州市立男女共同参画センター5F 大セミナールーム
- 講 師 アウェアDV加害者プログラム&デートDV防止プログラム
代表・ファシリテーター 山口のり子
- 参加者 37人
デートDVは誰にでも起こりうる身近な問題です。デートDVはどのようにして起こるのか、どうしたら防げるのか、起こってしまった場合どうしたらよいのか。自称「女男平等・協働参画社会クリエーター」として女性をエンパワーするために活動し、DV加害者プログラム、デートDV防止のためのプログラムを実施している山口のり子さんにお話しをお聞きしました。
【報告】1.DVは「力と支配」
暴力の種類
① 身体的暴力…殴る・投げつける・突き飛ばす・蹴る
② 言葉による暴力/精神的暴力…怒鳴ったりしてこわがらせる・勝手に決める・馬鹿にする・無視
する・他人と連絡を取れないようにして孤立させる・携帯のメールをチェックしたりアドレスを勝手
に消す・監視して行動を制限する・馬鹿、死ねなどとメールをしてくる・自分の暴力はたいしたこ
とはないとして相手の所為にする
③ 性的暴力…相手が望まないのに性行為を強要する、応じないと不機嫌になる・いやがるのに
ポルノを見せる・避妊しない
④ 経済的暴力…お金を貢がせる・お金を払わせる・借金をさせる・アルバイトをさせるあるいは辞
めさせる・お金を取り上げるなどがある。
2.デートDVの特徴
① 若い人たちの交際中におきるDV
② 嫉妬を理由にDVする
③ カップル幻想(カップルでいたら周りから認められる)
④ 仲間からのプレッシャー
⑤ 恋愛についての思い込み ⑥ 支配も嫉妬も束縛も愛情の表現だと思い込んでいる
⑦ 暴力容認度が高い 暴力=愛情表現
⑧ ジェンダー(彼女・彼氏役割の期待と縛り)にとらわれている
⑨ 彼を悪者にしたくない、彼をかばいたい。
⑩ 性的暴力を自覚できない、避妊をしないSEXを強要する
⑪ 自分のことを知られているので別れるのが怖い
⑫ 親に相談しない。するとしたら友だち
⑬ 大人たちに理解してもらいにくい
⑭ 誰に相談していいかわからず被害者が一人で悩む
⑮ DV被害者のための相談機関があることを知らない
⑯ 知っていても行けない
⑰ DV防止法に適用されない(配偶者、元配偶者が対象)
⑱ 被害者支援が難しい、その家族への支援も必要
3.デートDVの要因
① 力と支配…家庭には児童虐待、学校には体罰や部活のしごき、いじめがあり会社ではセクシ
ュアルハラスメント、パワーハラスメント、リストラがあり力を持つ人は持たない人を力で押さえ
つけようとする。
② 暴力を容認する風潮…社会に暴力が溢れているため暴力で問題を解決していこうというメッセ
ージが社会に充満している。
③ ジェンダー・バイアスと男女平等・共同参画でない社会…ジェンダーとは社会や文化によって
つくられた社会的な性別で、バイヤスは偏見である。男らしさとは勝つ、泣かない、感情を外
に出さない、自分は正しい、リーダーシップを持っているなど自己中心的で攻撃的で独占的。
女らしさは優しい、控え目、おとなしい、かわいい、か弱い、気がきくなど受動的。
以上のような危険な価値観のある家庭や社会で、子どもたちは見て、聞いて、体験して学習しながら大きくなっていく。このような環境で育った若い2人が出会いつきあうようになると、男の子は、リードしなくてはならない、言うことを聞かせなければならないと考え、自己中心的で自分が優先されてあたりまえと思い、攻撃的、威圧的になる。
一方、女の子は甘えたい、頼りたいと考え、はっきりと自分の考えを言わなくなる。2人の間に力の差ができ、関係性は対等、平等ではなく支配し、支配される関係、すなわち主従の関係になる。しかし、愛し愛されているからと思いこみ、デートDVだとはなかなか気がつかない。支配も嫉妬も束縛も愛情の表現だと思い込みやすい。デートDVがエスカレートすると、ストーカーや監禁や殺人なども起きる。
被害者は自信を失い、自尊心を失くし、自己肯定ができなくなり自分らしさを失い心が深く傷ついて混乱する。このような状況から回復するには時間がかかる。
4.デートDVの予防
デートDVする人は、相手を自分の思い通りに動かそうとして、相手の心へのダメージだけでなく、生活、部活や勉強、友人とのつき合いなどにもダメージを与える。また避妊をしないSEXを強要することで、妊娠させる恐れもある。望まれず生まれた子どもへの虐待につながる可能性もある。
デートDVは親密な関係の人への暴力である。デートDVは人権侵害であり、虐待であり、犯罪である。デートDVは、力と支配や暴力容認、ジェンダー・バイアスなどの危険な考え方、価値観から起きることなので、まずそれに気づいて捨てる、すなわち、学び落とす(unlearn)ことが重要である。そして自分らしさを大切にする、つき合う相手を対等、平等な人として尊重する、相手の気持ちを思いやり、共感する、自己決定権を尊重するという価値観を学んでいかなくてはならない。誰にでも起こりうる問題なので、子どもたちには、自分のことだと感じてもらえるようなやり方で、授業として防止教育を広めていく必要がある。学校、教育、社会全体の問題として考えなくてはいけない。
☆
親を含めてまわりの人はどうしたらいいのか(被害者に対して) ① 根気よく話を聞きましょう
② 批判的にならないようにしましょう。あなたのせいではないと繰り返し伝えましょう
③ 質問攻めにするのではなく、対話を通じてやりとりしましょう
④ 「はい」「いいえ」で答えてすんでしまうような質問ではなくて、「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「な
ぜ」「どのように」など、次の話題につながるような質問をしましょう
⑤ 怒りを表すのではなく、心配していることを表わしましょう
⑥ 加害者を悪者扱いしたり、別れることを強いたりしないようにしましょう
⑦ 身の安全を確保するための計画をいっしょに立てましょう。緊急事態が発生した場合にどうした
らよいか理解しているか確認しましょう
⑧ 助けが必要な場合はいつでも(できる範囲で)連絡を取ってかまわないと伝えましょう
⑨ ふたりの間に実際は何が起きているのか、相談するのに一番よい所はどこかなど、情報を収
集しましょう。
⑩ デートDVの情報をできるだけ伝えましょう
⑪ 警察やDV被害者専門機関へつなげましょう
⑫ 近所の人たちや家族や学校の職員たちに気をつけてほしいことを伝えておきましょう
⑬ 別れる場合、別れない場合、それぞれどうするのか、自分で判断するよう力を貸しましょう。そ
して何らかの判断を下した場合はそれを応援しましょう
⑭ その人をコントロールしたり、アドバイスを押しつけたりしないようにしましょう
⑮ 自分の長所に目を向けて自信を取りもどしたり、交際相手以外に友人や家族がいることや、
交際を始める前の生活などを思い出したりするよう働きかけましょう
⑯ どなったり、命令したり、最後の条件(別れないなら勘当だ!など)を出したりしないようにしま
しょう
⑰ その人の力を信じましょう
☆
まわりの人はどうしたらいいのか(デートDV加害者に対して) ① 話をよく聞きましょう
② 相手にも責任があるなどと言って、暴力を肯定しないようにしましょう
③ 暴力をふるわれた相手の痛みや苦しみに気づくよう促しましょう
④ 加害者はたいてい自分の暴力を正当化し言い訳をします。暴力は自分で選んだことだとはっき
り伝えましょう
⑤ 交際相手への暴力も犯罪であり、逮捕される可能性があることを伝えましょう
⑥ 暴力は問題解決の方法にならないし、ふたりの関係を壊すだけだと伝えましょう
⑦ 相手に会うのをしばらくやめるよう勧めましょう
⑧ 女性蔑視の考えをもっているようであれば、その考えを捨て女性を尊重するように話しましょう
⑨ その人の人格を否定するようなことや全面否定をしないで、暴力行為を人としての価値とは切
り離して見ましょう
⑩ 暴力や虐待は学んでしまった価値観からすることであり、暴力的・虐待的態度や行動が習慣
化しているということに気づくよう働きかけましょう
⑪ 自分のDV行動について責任をとること、つまり相手の決断(別れるなど)を受け入れたり、自
分を変える努力をしたりするよう助けましょう
⑫ 暴力をふるうような態度・行動は、本人が決意し努力したら変えられるということに気づくよう助
けましょう
⑬ その人の怒りや落胆などの気持ちにも耳を傾けましょう
⑭ デートDVの情報をできるだけ伝えましょう
⑮ その人が信頼できる大人や専門家に助けを求められるよう支えましょう
おわりに
DVは社会が起こしている問題。人々の間違った意識、価値観がDVを生み出している。一人ひとりが自分の問題だということに気づいて価値観を変えなければ、DVはなくならない。
相手の暴力的態度の見分け方
デート相手は… ☐ 1. あなたのことを「きたない」「バカ」など人をおとしめるいやな言い方で呼びますか
☐ 2. あなたが他の用事で会えなかったりすると、自分を最優先にしないと言ってふてくされたり
怒ったりしますか
☐ 3. あなたが誰と話すか、家族や友だちの誰といっしょにいるかなど、何でも知りたがって聞
いてきますか
☐ 4. しょっちゅう携帯に電話してきて、あなたがどこで誰と話したり会ったりしているかチェック
しますか
☐ 5. 怒ったとき物にあたるなど、あなたが怖いと感じるような態度・行動をしますか
☐ 6. あなたへ怖い態度や行動をしたあと謝ることが多いですか
☐ 7. すごくやさしいときと、すごくいじわるでいやな態度のときとが極端ですか。具体的には
「俺(私)には君(あなた)しかいない」とやさしく言ったかと思うと、「おまえ(あんた)は本当に
ばかだ」とばかにしたりするなど
☐ 8. ふたりがけんかしたとき、あなたが怒らせるようなことを言ったからだとか言ってあなたを
責めますか
☐ 9. あなたが何かについて話そうとすると話をそらしたりして、あなたの話をちゃんと聞いてく
れないことが多いですか
☐ 10. よく約束を破りますか
☐ 11. あなたの携帯を勝手にチェックして、男(女)友だちのメールやアドレスを消せと命令した
り消してしまったりしますか
☐ 12. 「僕(私)のことが好きならいいだろう」とあなたが気が進まないことをさせます
☐ 13. あなたの希望や考えを尊重しないで勝手に決めることが多いですか
*****ひとつでも該当する項目があったらデートDVではないか考えてみましょう*****
自分が暴力的な態度をとっていないかチェック
あなたは… ☐ 1. デート相手が自分の意見に従わないといらいらしたり怒ったりしますか
☐ 2. 相手が自分だけでなく、他の人とも仲良くしているのに嫉妬して責めたりしますか
☐ 3. 相手がどんな人とどんな話をしているのかとっても気になって聞いたりしますか
☐ 4. 相手に何をするか、誰と話すか、どこへ行くか、何を着るかなどについて指示し、それは
相手のためだと思っていますか
☐ 5. 相手に向かって「俺(私)とあいつ(ときに人、物、ことがらなど)のどっちが大事なんだ!」
という言い方をしますか
☐ 6. 腹を立てたとき、相手の目の前で物をたたいたり、壊したり、投げたりしますか
☐ 7. 腹を立てたとき、相手の腕や肩をつかんだり、押したり、たたいたりしますか
☐ 8. あなた自身の問題や自分がいらいらしていることを、相手のせいだと責めますか
☐ 9. 相手がしたことをとがめるとき、相手をたたいたりしますか
☐ 10. いつも相手をリードしなければと思っていますか
☐ 11. 二人のことでも、相手の考えや希望を尊重しないで、自分ひとりで決めることが多いで
すか
☐ 12. 相手は自分より劣っていると思いますか
☐ 13. 付き合っている相手を「自分のもの」だと思っていますか
*****ひとつでも該当する項目があったら自分の態度・行動を見直しましょう*****
【質疑応答】Q1 加害者にはDV家庭に育ったというように被害者体験があると聞くけれど、そういう問題はどのように取り扱っているかA1 アウェアの加害者プログラムは間違った価値観を改めるための教育だ。精神的な病気で、あるいは心因的な問題をかかえているからDVをするのではない。虐待を受けた人が必ずしも加害者にはならない。虐待された経験を反面教師としてDVをしない人もいる。子どもの頃に虐待されたことがトラウマになっている参加者には、1対1のカウンセリングなどを勧めるが、アウェアの加害者プログラムはそれがメインではない。
Q2 加害者はアウェアの加害者プログラムにどのようにしてたどり着くのかA2 ① 社会の介入…アメリカ(ex.カリフォルニア州)ではDVは犯罪である、大きな社会問題であるという事で40年間取り組んできている。通報があればポリスが飛んできて、状況証拠があれば積極的に逮捕するように義務づけられている。逮捕された加害者は、裁判所命令で更生のプログラムに参加しなければならないようになっている。アメリカでは社会が加害者に更生を迫る。残念ながら日本には社会からの突きつけはない。
② パートナーからの突きつけ…被害者が支援を受けて自立し、変わるか離婚かどちらかしかないと加害者に突きつけなければ、加害者は更生プログラムを受けにきたりしない。
Q3 加害者のまわりの人とはどういう人を想定しているのかA3 デートDVの場合は仲間や親、教師など。そういう人たちが介入しないといけない。
Q4 中学校、高校で限られた時間内に効果のあるデートDV防止教育を実施する時、どこに重点を置けばよいかA4 日本の教育現場では、防止教育を90分という時間内に、学年全体あるいは学校全体、ときには1,000人を対象に実施するのが現状。これがベストであるとは思わないが、やらないよりやった方がよい。充分ではないが気づきのきっかけになるのではないかと思う。ロールプレイをしたり、グループで話し合ったりして、子どもたちに自分の問題として考えるようにしてもらう。デートの経験のない子どもにも情報を与え、気付いてもらう。予防接種のようなものである。
Q5 体育館で1,000人を対象にDV防止教育を実施する時場合、どのようにするとよいかA5 1,000人位でも男女ペアで出てもらってロールプレイをする。100人ぐらいだったらグループワ-クをして意見を交換し合う。あとで子どもたちの意見を拾う。話すことは意識変革につながるので有効である。グループワークができない時は用意した台詞を読んでくれた生徒に意見を言ってもらう。アウェアは、人数が多くても具体的に分かりやすく実施することを大事にしている。
Q6 DV防止教育を実施している時、男子生徒は下を向いたり、眠ったりまじめに聞いていないようだが、男子生徒を引きつけるにはどうしたらよいか。A6 男子生徒だけを責めるように話さないよう工夫する。しかし統計では加害者は男性の方が多いという事実を伝え、なぜそうなのかを知ることが大事だとも伝える。参加態度はあまり気にしないでいいと思う。子どもたちは交際やSEXには興味も関心もあるし、学ぶ必要のあるテーマである。テーマに関心があるから私語も多くなるが、結構、耳を傾けている。しかし実施者の工夫は大切である。
アウェアの加害者プログラムについてお知らせ アウェアでは加害者プログラムも実施しているので、関心のある方は東京で開催する講座にぜひご参加ください。
アウェアの加害者プログラムに通って気づきを重ねた加害者の男性たちの中には、一般の人たちの前で自分の体験や気づきについて話してもいいと思うようになる人が出てくる。また、取材も受けていいと思う人も出てくる。なぜこのようなことを私が男性たちに勧めるかというと、DVをした人はパートナーに山のような責任があるけれど、社会にも迷惑をかけていて、社会に対しても責任があるから。社会に対する責任の取り方の一つとして、体験談を話すなどして周りの人や社会を変える努力をしてほしいし、それができる人になってほしいと男性たちに常に話している。
なおデートDV防止教育プログラム・ファシリテーター養成講座は、東京と関西で毎年開催しているので、そちらにもぜひご参加を。
PDF版は、
こちらからダウンロードできます。
© aware アウェア DV加害者プログラム (無断で転載・コピー等しないようお願いします。)
KFAWアジア研究者ネットワーク 第5回研究会
「現代台湾における看護師と看護教育-ジェンダーの視点から」
- 日 時 2009年10月14日(水)18:30~20:00
- 場 所 福岡女子大学 A棟2階 A23
- 講 師 福岡女子大学文学部人文学系 准教授 宮崎 聖子
- 参加者 10人
【報告】急速に少子高齢化が進む台湾では、介護職や各家庭のメイドとしてインドネシアやフィリピンからの外国人労働者が働いている。一方、台湾国内の看護師養成については、需要と供給のアンバランスにより看護教育をおえた者が職につけなくなっている。台湾政府は看護労働を外国人に開放することにも看護師の国外送り出しにも積極的ではない。しかしグローバル化は台湾の看護教育や看護の現場にも影響を与えており、今後どのような方向をめざすべきか研究が始まったところである。
台湾における看護師の現状1967年、考選部(公務員や専門職の試験を掌握する政府機関)は「護士」(看護専門学校、看護職業学校卒業程度)と「護理師」(大学卒業程度)の資格試験を開始し、合格者に正式な免許を発給するようになり、看護の専門職としての地位が確立した。
2008年10月現在、台湾で働く本国籍の看護師の数は護理師94,891人(78.0%)、護士26,389人(21.7%)、助産士314人(0.3%)で、女性が99.2%を占め、看護は女性の職業といえる。近年の資格の高度化を反映し護理師が毎年16%の伸びを示している。ただし看護師(有資格の護士、護理師)の離職率は高い。ICN(国際看護協会)の121か国の加盟国の52%で看護師が不足しているにもかかわらず、教育機関の増加と就職先の減少により、台湾では看護系卒業生の供給過剰となっている。ただし聞き取りによれば、臨床の現場では、常に看護師不足を感じているという。
台湾の看護師の教育程度については34.2%が看護職業校(2005年より募集を停止)を卒業、23%が2年制看護専門学校を卒業、25%が5年制の看護専門学校を卒業している。
大学卒あるいは在職で2年または4年生の課程をおえたものの16.8%である。修士以上では1%以下である。
台北医学大学の林佳静によると「看護関連の高等教育機関は増加しているが看護師の質と量に関する需要と供給がアンバランスである上に教育資源の適正配置ができていない。 看護労働の肉体的、精神的負担が大きく、労働環境も悪化しているために定着率も悪い。
医療の高度化に伴い、入院患者の病態も年々重いものになっており多くの人が病院で亡くなるので看護師1人が看る患者の数が多く深夜勤であれば先進諸外国の3~5倍であるためストレスになっている。」という。
グローバル化のもとでの看護教育と看護師看護師は供給過剰であるため、台湾政府は外国から受け入れる必要性を感じていない。2002年WTOへ加入した後、人材獲得において優秀な台湾人看護師が国外に出ていくことを懸念して看護教育を高度化し「量より質」をめざす改革に着手し、2006年に内科や外科などの分野ごとの専門性を高める「専科護理師」((Nurse Practitioner NP)という資格が創設された。12月に第1回の試験が行われ、1,658人が受験し、875人が合格した。
アメリカ看護師資格の取得と渡米する理由少数ではあるが看護師、または看護学生が国外に移動する先はアメリカである。主として親戚や知己などのつてを頼っている。アメリカは深刻な看護師不足に見舞われており2005年外国人の看護師資格試験合格者数の1位はフィリピン人で6,852人、台湾人は8位で222人である。台湾から看護師になる目的で留学、就職のために渡米した人数が多かったのは1980年代で、台湾の政情を不安視して台湾全土で移民熱が高かったことも関連している。近年は国内に看護の博士課程、修士課程が増え、看護行政職や看護師長などのポストに就くことができるようになったため国外に出る必要がなくなっている。
しかし、看護師経験者にインタビューすると、彼女たちはアメリカでは台湾よりも看護師の待遇が良いと認識している。特にアメリカでは看護師が医師の指示に従う度合いが低く、職務に自律性があり、勤務時間に弾力性があるため、資金に余裕がない人にとっては働きながら学歴を高めることができるのが台湾にない魅力であるという。
現在、台湾の看護師の給与は女性の一般事務職より高い。しかし、看護師の多くは過酷な勤務のため将来展望を持てないでいる。それは長時間過重労働、労働内容を考えると低い給与、長期間勤めても昇給は少ないこと、自律性の低さ、教育研修、昇進の機会が少ないなど、ジェンダーの問題と深く関連している。
まとめ看護職は専門職とされながら、過酷な労働条件のもとで働いている。そのため、より豊かな国では看護職が敬遠されて看護師が不足する。それを埋めるために、より貧しい一部の国においては、看護師の国外移動(流出)が起きてくる。その際、受け入れ国と送り出し国の経済格差が大きいほど経済的インセンティブは大きく、制度的な規制など障碍が少ないほど移動は起きやすいであろう。
台湾からアメリカへの看護師の移動については1980年代と違って政治的要因や経済的要因が小さくなった現在でも存在する。台湾では看護師のほとんどを女性が占めていることから、看護労働にまつわるジェンダーの問題が反映しているのではないかと推測される。
そのためアメリカの看護職の「待遇の良さ」を信じ、より高い学歴を求めるための移動はなくならない。
【質疑】Q1 RN(Resisterd Nurse-正看護師)とNP((Nurse Practitioner-専科護理師)の 違いについてA1 RNは日本でいえば正看護師ですべての科で仕事をしていくがon the job でトレーニングし、力をつけていく。RNの資格がないとNPにはつけない。NPは医者がいないときでも患者がどういう治療を受けたらよいかという判断ができるような専門性を持っている。台湾の行政院衛生署の護理及健康照護処(看護と健康促進課)では専門化と職務の自律性を高め、看護師の権限を向上させるためにNP制を創設した。
Q2 看護師は女性が多いが医師はどういう状況かA2 医師は男性が多い。医師と看護師の権力格差の上にジェンダー問題も起こっている。
例えば2001年に感染力の強いSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したとき、妊娠している看護師が死亡した。当時、医療従事者についた手当が医師1万元、看護師3千元で、このような命の格差、医師との格差、ジェンダーの格差に看護師たちは怒りを覚えた。大学教員のA氏も、これをきっかけに2003年、看護者権益促進会を立ち上げた。
A氏はまた、アメリカのエージェントが台湾の看護学生をリクルートに来ても、実際にはアメリカと台湾の看護の仕事には大した差はないとして、アメリカに行くことを学生に勧めないという。むしろ、看護学生がエージェントの搾取の対象になっているということを危惧している。
Q3 シンガポールの状況についてより豊かな国では看護師が敬遠されて不足し、より貧しい一部の国では看護師の国外移動がおきているという。シンガポールは豊かな国だと思うが看護師の受け入れも送り出しもしているというのはどういう状況なのか。
A3 制度的にかっちりとされていて、一定期間になると永住権をあたえられ、統計上、外国から来た人もシンガポール国籍になって統計的には不明になるようだ。インドネシアやフィリピンからきた看護師は経験を積んだ後、待遇の良い中東で働き、レベルアップしているのかも知れない。外国人労働者には就業許可が与えられ、看護師は中級レベルの許可証が与えられる。いったん受け入れるとシンガポール国籍も与えるなど、ほとんどの権利も得られるので多くの人は定着しやすいという事情があるようだ。
Q4 シングルの看護師の割合についてA4 勤務時間上、恋人を見つける時間がないというのが実情だ。シフト制があるので、警察官と結婚する人が多い。かなりの収入もあるので無理に結婚しなくてよいという考えの人もいる。台湾の看護師の66.5%がシングルである。
O1 日本では看護師は結婚すると辞めてしまう人が多い。情熱があってやる気はあるのだが、重労働で大変な仕事だというのが理由。企業の診療所の看護師で夜勤がない人も同じ意見である。
O2 労働時間、報酬、職務の自律性などのファクターがなかなか突破できない。
Q5 日本の看護師の実情と看護教育について調査報告はあるかA5 調査して比較できればよいと思っている。
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KFAWアジア研究者ネットワーク 第4回研究会
第2回KFAW日韓国際シンポジウム(要旨)
「大地から食卓へ-ジェンダーの視点で食の安全を考える」
- 日 時 2009年9月13日(日)13:00~15:30
- 場 所 北九州市立男女共同参画センター5F 小セミナールーム
- パネリスト
塚本 薫子 地元農業女性
田原 幸子 グリーンコープ生活協同組合ふくおか理事長
大石 紀代子 北九州市食生活改善推進員協議会会長
閔庚子 (Min, Kyong-ja) 元韓国忠清南道女性政策開発院研究員
- 参加者 40人
食料の安定供給と安心・安全な食物の生産・流通は市民の暮らしの重要な課題の一つです。生産地から消費者の食卓までの安心・安全な食料供給がどのような仕組みと考え方で行われているか、日韓比較の形で検証しました。また講演の後は、地元北九州産の野菜の販売や、韓国料理のチヂミの試食会なども行われ、楽しみながら食の安全について考えることができました。
【報告1】 地元農業女性 塚本 薫子
160年続いている農家で夫の父、夫と3人でこかぶ、みずな、小松菜、ピーマン、枝豆、いんげん、トウモロコシなどの野菜を栽培している。現在は冬野菜を植える準備中である。映像で見ると納屋が優雅にみえるが自分にとっては野菜を束ねるきつい労働の場所である。台風でビニルハウスの天井が破れたが張り替えると採算が取れなくなるので夫がテープを貼って修理した。これが現状である。
消費者との交流会で「安心、安全に気をつけているか」という質問を受けるが、この質問には戸惑うとともに、落胆する。家族の夕御飯のおかずに安心、安全な食品を提供することと同じ感覚で、安心、安全な野菜を栽培している。真剣に作っている姿を発信していかなくてはならないと思っている。虫に食われた野菜はこれ以上食われまいと苦い成分を出して美味しくなくなるので、農薬は適度に使用している。
後継者については、3人の息子がいるが現在の状況では継がせたくない。泥を扱うのは楽しいが、生活をしていけるだけの収入がない。 1
【報告2】 「グリーンコープ生協ふくおかの食べもの運動」グリーンコープ生活協同組合ふくおか理事長 田原 幸子
1.グリーンコープ生協ふくおかについて(2009年4月現在)
- 組合員数 171,797人
- 出資金 72億3千4百万円
- 事業内容 供給事業(共同購入・店舗)、福祉事業、生活再生事業など
- 総事業高 290億920万円
- 役員 理事・監事 52人
- 職員 正規職員263人、定時職員592人、組合員事務局123人、ワーカーズ1,893人
- 事業施設 共同購入センター(18)、店舗(21)、福祉センター・用品店舗(17)
2.グリーンコープは「自然と人の共生」「人と人の共生」「女と男の共生」「南と北の共生」という4つのテーマのもと、助け合う仕組みを作ることで連携している。
3.食べもの運動のあゆみ
(1)安全・安心を求めるために進めてきた8つの約束
- 生産者と手をつないでいきます。
- 日本の農業を守り、食料の自給率の向上をめざします。
- 手づくりの拡がりをめざします。
- 多様化にも応えていきます。
- 添加物の点検を徹底します。
- 放射能の検査を実施し状況に対応していきます。
- プラスチック包材を減らします。(環境ホルモンが溶出しない包材に切り替えています。)
- リサイクルに取り組み、貴重な自然と資源を大切にしていきます。
(2)組合員による商品開発、リニューアルの取り組みは商品開発リニューアル委員会やGREEN Kid,s委員会、Ms.グリーン委員会で行う。
(3)組合員による産地・生産者との交流は体験田、料理会、若とりの捌き方講習会、「グリーンあさくら」に出向く、牛乳生産者女性部会と交流を持つなど積極的に取り組んでいる。
4. いのちを育む食べ物を通して日本の農業・環境を守るとり組みへ繋げていく。
【報告3】 消費者から見た食の安全―ボランティアとしての食育推進活動を通して―
北九州市食生活改善推進員協議会会長 大石 紀代子
北九州市食生活改善推進員協議会は昭和47年に発足した。「私達の健康は私達の手で」をスローガンに、地域に根ざした食育活動をすすめている。毎年、各区役所で養成教室を開催し、修了者が食生活改善推進員となる。会員数は2,070人で各区協議会の中に各地区グループを構成し、市民センターや公民館を拠点に活動している。
北九州市食生活改善推進員協議会の食育活動
- おやこの食育教室
- 親子ですすめる食育教室(北九州市事業)
- スポーツ少年(サッカー)と食育教室 スポーツをしている小学生と保護者にスポーツにおける食を中心に食育活動を行う
- 地域農産物を活用した親子体験料理教室
- 子どもと共に学ぶ食生活とふるさとの食文化
- 子どもの手作りおやつの提供と食育
- よい食生活をすすめるためのグループ講習会
- 牛乳・乳製品料理講習会
- 味噌料理講習会
- ふれあい昼食交流会65歳以上の高齢者を対象に会食を通して食生活改善と生きがいづくりを行う
- シニア料理教室(北九州市事業)
- 在宅介護食ボランティア講習会家族の家庭介護を支えあうため、会員自らが学び、地域での活動を広げていく
- 食育月間推進事業
- 食育の日普及啓発イベント
食育基本法により定められた6月の「食育月間」と毎月19日の「食育の日」に、食育普及を図る
※ 食生活改善推進員は食育アドバイザーで「消費者一人ひとりが食に対する知識を深め、食を選択する力を高めることが、食の安全・安心に繋がる」ということをアドバイスし、「作る人と食べる人の顔の見える関係をつくることは、食の安全・安心につながる」という信念に基づいて地産地消の推進に取り組んでいる。
人は食事に始まって食事に終わり、愛撫に始まって愛撫に終わるといわれている。この二つの行動を限りなく優しく、美しく、心をこめてできる人を育てることが食育と考えている。食生活改善推進員も食育の基本である「家庭」を支える地域のパワーとなり、北九州市が健全な食生活を取り戻し、健康で元気なまちとなるように活動していく。
【報告4】 「食品安全と農業、女性:韓国の事例」
元韓国忠清南道女性政策開発院研究員 閔庚子 (Min, Kyong-ja)
1. 韓国の食品に対する不安の実態
韓国も食品安全の問題が深刻である。食べ物は豊富でも安心して食べられるものは非常に少ないのが現実で、食卓の安全性が最大の関心事として取り上げられ、食品安全に関する研究や市民運動が展開されている。特に主婦たちの不安は大きく、問題解決のために環境に優しい農産物の生産および流通に関心を持ち、安全な食品づくり運動に参加している。
(1) 食品問題の事例
1980年代からほぼ毎年、豚肉口蹄疫の発生、豚肉ダイオキシン、鳥インフルエンザ、魚から発がん性物質マラカイト検出、中国産菓子からメラミン検出などと食品問題が起こっている。2008年アメリカ産輸入牛肉の狂牛病問題によって国民の不安は最高潮に達した。「狂牛病ろうそくの火文化祭」といわれる大規模な輸入反対デモは女性学生や子育て中の母親も参加した。
韓国農産経済研究院の調査によると、食品安全事故関連に対して政府の発表を信頼しないという回答が、国民の47.2%(2007年)、農産物購入に際し安全性を考慮するという回答が63%であった。生産過程に対する信頼度は48%、流通過程に対する信頼度は32%、輸入農産物に対する信頼度は9% となっている(2008年)。現在、飲食店では顧客を安心させるために食材の原産地を明記するように義務付けられている。
(2) 食品問題の背景
世界農食品体制の問題が指摘されている。新自由主義のグローバル体制のもと生産、流通構造が世界化されて少数の超国籍食品企業(transnational agrifood complexes)が全世界の食糧を支配するようになった。韓国も例外ではなく1995年の世界貿易機構体制の発足により、農水産物市場が全面的に開放され、食品の75%を輸入に依存するようになった。
市場論理に立脚した政府の政策が食品の市場化を強め、地価は上昇し、都市中心の生産・ 競争が加速化され、小規模な農家の没落や農村共同体破壞を加速化させた。その結果、国内の農水産物の価格が下落し、農水産物、農漁村、農漁民が没落の道を歩むことになった。輸入農産物だけでなく、国内の農食品の安全性も脅かされ、バクテリア、遺伝子組み換え、残留農薬、抗生物質などの不安も生じている。食糧自給率は51.6%、穀物の自給率は27.2%、米以外の穀物の自給率は5%と深刻な事態になっている。
2. 食品の安全政策と民間の対応
(1) 政府の対応
- 07年「農業農村および食品産業基本法」を制定し安全な農産物の安定的な供給に取り組む。
- 08年「食品安全基本法」により安全な食品の管理体制を構築。
- 08年 アメリカ産牛肉の無制限輸入に対する国民の不安と抵抗により、食品安全総合対策をたてる。
- 08年 食品安全管理先進化法案を成立。
- 09年 3月22日から学校関連の不良食品から子どもを守るために「こども食生活安全管理特別法」を 施行。
(2) 民間の対応
国民の健康は国民自らが守るという民間運動が活発に展開された。消費者が良い食べ物に固執すれば生産者・流通業者も変わるという考えに基づき、安全な食品を安定的に供給することで農村の経済を向上させ、農村共同体を回復させる、消費者中心・直接取引中心・地域中心の戦略を選択した。
民間レベルの代表的実践事例は生活協同組合(生協)運動と、地域食品運動 (local food system)である。
- 生活協同組合(生協)運動
生協は安全な食品消費運動組織であり、同時に環境に優しい農産物の安全流通の代表的な組織として、安全な食品の生産者と消費者を繋ぎ、食品に対する消費者の不安を解消している。1986年、ハンサリム運動から始まり、2000年代に急成長した。環境有機食品流通認證協会(生産者、物流センタ―、消費者管理)と生産流通認證システムを導入し、生産者と消費者が出会う都市と農村交流プログラムや直接取引システムを運営している。
- 地域食品運動 (local food system)
生産者と消費者の距離が食品の安全を左右するという観点から始まり、大都市を中心に多様な集団で様々な実験がなされている。その一つが食品安全と農協保護のための社会協約運動で、消費者・生産者・企業が事実的に協約を提携し、食品加工・流通・外食産業を発展させるというもので、全羅同で18の公共機関・生産者・消費者・市民団体が参加した国産麦の消費の社会協約が実験的に推進されている。
3. 食品問題と女性との関係について
ジェンダーによる分業体系により、女性の主な活動の舞台は日常的な生活の場である。子育てや家族の食生活の責任を負う役割である女性は食品安全問題の最大の被害者であると同時に最大な関心を持っている。また、食品問題は女性のみの問題ではなく男性を含む社会構成員すべての問題である。
食品問題の本質は何か、社会的背景は何かを考察するとき、深刻な社会問題すなわち権力および資源の配分問題、そして人間と自然の関係の問題と関連することが分かる。
女性は子どもを育て、家族の食生活の責任を負う役割を持っているため、人間と自然の調和を主張する女性が、自然の破壊によって発生した食品問題を女性によって解決するという主張は説得力を持つ。
問題意識と解決能力を持つ女性が、このような内的関連性による考察を通して、人間と自然の関係、社会的関係を変化させる主体になることができる。生協全体の組合員の中で 專業主婦の比率が約50%程度、活動家は全て專業主婦ということはこのような内的関連性を反映していると思われる。
このような理由によって女性は生産・流通販売・消費者運動など多様な活動を通して環境に優しい食品を消費者に提供し、繋げる重要な役割をしている。
環境に優しい食品を消費者に提供する生協活動と産地で加工食品を消費者に販売するgreen tourismの観点から女性の役割を紹介する。
(1) 女性運動と生協
1989年、‘韓国女性民友会’が生協を組織し、女性運動と生協運動がつながった。
生協運動と女性運動の共通点は協同の価値、エコロジー的価値、生命安全に対する価値、および社会的弱者を守ることでこれらの共通の価値を中心に專業主婦の社会参加を促進させ、変化と成長を誘導し、女性を專業主婦から社会の主婦へと変身させた。このような変身を通じて学校給食運動を主体的に行いながら草の根運動の主役として成長した。
(2) green tourism事業を通して女性は農産物の直接取引および加工食品の販売の主役として活躍している。
1980年代から進められてきた農村を生き返らせなくてはならないという意識ある若者たちの運動は帰農運動、生協運動などに繋がっていった。農村の競争力を高めるための様々な努力が進められ、その一環として農村の経済的基盤を生産だけでなく観光、加工、販売などに発展させていった。
green tourismは一次的には都市の人たちに休息と自然体験の機会を提供する一種のサ―ビス産業であり、副次的には地域の特産品の現地販売および加工食品販売をしている。
食品安全問題が社会的関心事となることで、農村の食品生産者としての価値が浮き彫りになり、green tourismが觀光産業だけでなく地域食品体系形成の一つの手段にならなければならない。
green tourism事業の一環としてのfarm-stayプログラムは全国276か所で運營されている。farm-stay機能は、宿泊以外にも農家経営体験、農産物直接取引および加工食品の生産・販売、伝統食品体験などがある。 農家の主婦たちが主体となって現金を確保する主要な手段である。
おわりに
食の問題は女性たちに不安と同時に社会参加、経済活動および意識の拡張の機会をもたらすきっかけとなった。女性は食の問題を中心として共同体の価値の回復、持続可能な発展を追求する主体となっている。
食品安全問題の解決を通じて、女性の力で安全な世の中、平等な世の中を作ることを共に期待しよう。
【質疑応答】Q1 韓国女性民友会について。A1 韓国女性民友会は1989年、生活資材に対するエコロジー的接近を通じ社会改革をするという目的で設立され、多くの政治家を輩出している。女性主義的な緑の生協として女性の健康や生活に適した生活材の供給に主力を置き、女性組合員の要求に適した商品の開発をしている。食品問題はグローバル化による政治社会的問題と深く繋がっているという認識を共有している。 生活材に対するモニタリングや改善法案の提示などを通じて安全性の確保に取り組んでいる。
食品問題だけではなく環境問題(ごみ問題、水汚染問題等)にも関心を持っている。
Q2 韓国の子ども食生活安全管理特別法について。A2 2009年3月22日から施行された法律。小・中・高校の半径200m以内を子どもの食品安全保護区域としている。この区域では子どもの肥満や栄養の不均衡をもたらす食品は売ることができない措置をとっている。高カロリーで栄養の低い食品、すなわちパンやお菓子、ピザ、ハンバーガーなどがその対象である。これには限界があって食品業界から反発があり規制対象から外れた店が営業していることもある。
Q3 紹介された韓国のgreen tourismを推進している地域は、その発祥の地なのか、今も続いているのか。A3 模範的な地域で発祥の地ではない。農林水産省の役人が初めて訪れた地域である。観光の場、癒しの場でもあるが食品問題が浮き彫りになった現在、安全のための学習会を重ねた結果、さらに食べ物に対する安全性への取り組みを強めている。
Q4 行政をバックに韓国でも食生活改善運動は行われているか。A4 政府は関心を持っており、地方公共団体のもとで農協の女性団体が安全な食品を作り流通する運動を進めている。
Q5 塚本さんに近所の農家や農業従事者の状況、農業委員会について質問したい。A5 21年間、農業をしているが100軒あった専業農家が現在は2軒になった。女性は農業の仕事もするが、家事もするので男性は休憩できるが女性はできない。以前は女性は内にこもっていたが、現在は意見を聞かれることもあるし、自分は農業女性アドバイザーとして
福岡県の会議に出かけて行く。男性の視点は野菜の作り方という技術面になりがちだが、食などの安全性を考える女性の視点も必要だと思う。
Q6 女と男の共生をどのように考えているか。A6 共生とは人が人を支配しない、征服しない、お互いを認め合って、命を大事にするという視点を持つことだと考えている。
PDF版は、
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第1回KFAWデートDV防止プログラム開発 公開講演会(講演要旨)
「デートDVを知っていますか?」
- 日 時 2009年8月9日(日)13:00~14:00
- 場 所 北九州市立男女共同参画センター5F 小セミナールーム
- 講 師 窪田 由紀 九州産業大学教授 「デートDVってなあに?」
- 参加者 31人
2007年の調査結果の分析を基に、デートDVの加害に繋がる要因と、デートDV防止のワークショップ・プログラムとその効果の一部を紹介していただきました。
【講演要旨】
DVとデ-トDV
Dating Violenceはアメリカでは80年代から注目され、調査研究や防止の取り組みが始まった。日本では2003年に山口のり子氏によって紹介されデートDVと命名された。
デートDVは交際中の若いカップル間の暴力のことである。デートDVは経済的な依存関係、パートナーの家族との関係、法的な結びつきがないという点でDVとの構造的な違いがあるが、そのためにDV防止法の対象にはならない。しかし、身体的、精神的、性的、社会的、経済的暴力による支配の存在はDVと同じである。深刻なDV被害者の中には、恋人時代からの暴力も少なくない。
アンケート結果 デートDVにあたる言動の暴力認知
2007年に北九州市の市民グループ、メイプルリーフの会が市内の大学・短大・専門学校・高等学校の学生2,555人にアンケート調査を行った。その結果、叩く・蹴る・殴るは暴力として認知されやすいが、携帯への頻回な電話や監視を暴力と認知する人は5割を切ることが分かった。性的なことの強要、叩く、蹴る、ものを投げる、大切なものを壊すなどの行為についての暴力としての認知度は、女性は高いが男性は低い。
デートDVにあたる言動の被害体験と加害体験
(1) 嫌な呼び方や無視
(2) 携帯への頻回な電話や監視
(3) 叩く、蹴る、物を投げる
(4) 大切なものを壊す
(5) 性的なことの強要
(6) メールチェック
(7) いずれか一つでもある
という質問の結果、「男子の19人に1人、女子の9人に1人は被害にあっている」また「男子の5人に1人、女子の6人に1人が何らかの加害をしている」ことが判明した。
相談しない理由
相談相手として友人、先輩、先生、親、兄弟姉妹、その他 とあるが男子の4人に3人、女子の2人に1人は誰にも相談していない。相談しない理由は「言動が愛情の表現だと思った」、「自分にも悪いところがあった」、「自分が我慢すればよい」などがあり、DVに当たる行為を暴力と捉えておらず、恋人同士であれば相手を支配しても良いという誤った価値観を持っている。
デートDV加害を促進する要因と抑制する要因
加害に繋がる促進要因として過去の性被害体験、学校での暴力遭遇、両親の対等でない関係などがあるが、ジェンダー平等意識、デートDV暴力認知度が高ければデートDV加害を抑制することができる。過去に性被害の体験を持つ女子は痛ましいことに、さらなるDVの被害に遭いやすい。また男性による支配を容認するなど、ジェンダー平等意識の低い女子は、被害にあいやすい。
過去の性被害体験についてはジェンダー平等意識の抑制効果は見られない。性被害体験を持つジェンダー平等意識の高い女子は、加害が最も多いという特異な結果で、人格の中枢を破壊されるような体験を受けたことにより、対人関係にゆがみが生じていると考えられる。性被害の影響の深刻さが窺われる。
まとめ
1.
デートDVの実態はかなり高い発生率と、相談しない人が多いという理由で、潜在化・長期化・深刻化の危険性をはらんでいる。
2.
デートDV加害に関わる要因としては、は家庭、学校での暴力への遭遇、過去の性被害体験、ジェンダーバイアス、暴力としての認識の乏しさがある。
3.
家庭、学校で暴力に遭遇していても、ジェンダー平等意識やデートDVにあたる
言動の暴力認知が高いと、デートDV加害は抑制されるという結果から、ジェンダー平等意識を高めること、デートDVにあたる言動の暴力認知を高めることでデートDV加害を防ぐことができる、すなわち、暴力の連鎖を断ち切ることができる。
4.
デートDV防止ワークショップ後は、デートDV暴力認知が上昇することでから、デートDV防止ワークショップには、デートDV防止効果が期待される。
5. 早い段階からのジェンダー平等教育、デートDV防止教育、及び互いに相手を尊重するコミュニケーション・スキル訓練が必要である。
第1回KFAWデートDV防止プログラム開発 公開講演会(講演要旨)
「デートDVを知っていますか?」
- 日 時 2009年8月9日(日)13:00~14:00
- 場 所 北九州市立男女共同参画センター5F 小セミナールーム
- 講 師 中田 慶子 NPO法人 DV防止ながさき代表 「デートDV防止プログラムについて」
- 参加者 31人
NPO法人「DV防止ながさき」は、DV防止の啓発と被害当事者の支援のために、2002年9月市民グループとして発足、翌2003年5月にNPO法人化(8月認証)、2004年からはデートDV防止活動を開始し、高等学校150校(延べ26,000人)、中学校13校で、デートDV防止に関する授業を保健の先生や養護の先生、臨床心理士と連携して行っています。その活動内容、手法などについてご講演いただきました。
【講演要旨】
DV行為はパートナーを一方的に力で支配する関係で、身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力がある。自尊心や権利を奪い、恐怖心を与え、逆らえない状態にする。日本におけるDVの現状(2008年、内閣府調査)は夫婦間では夫から妻に対して身体的暴力が24.9%、精神的暴力が16.6%、性的暴力は15.8%という報告がある。恋人間では身体的暴力が7.7%、精神的暴力が7.8%、性的暴力は4.8%である。恋人間では相手の反応が怖かったなどの理由で、3分の1以上が別れたかったけれど別れられなかったという回答している。2001年に配偶者暴力防止法が制定されたが、恋人同士はこの法律の対象には含まれていない。したがって加害者への監視、カウンセリングなどができないために接近自体を防ぐ手立てがないという限界がある。
文部科学省がデートDV防止教育プログラム開発を始めたということだが大いに期待している。
どんな人が暴力をふるうのか?
加害者はごく普通に(立派)に見える人で、妻や恋人だけに暴力をふるう。女性蔑視の考え方をし、女性と対等な関係を持つことなどできない、妻や恋人は自分の「所有物」という価値観を持っている。また、暴力に効果があると考えており、自分自身への低い評価や自尊心のなさを暴力でしか表現できない。暴力をふるう原因としてはDVを見聞きし、虐待を受けるなど暴力的な環境に生育したことも影響している可能性がある。
2004年から2008年に長崎県で高校生の女子10,786人、男子5,689人を対象に調査した結果、男女交際経験者は女子57%、男子45%であった。女子の5人に1人は被害経験があり、そのうち身体的、性的な被害も3分の1ほどあり、相手の男子に恐怖を感じている。男子の加害経験は10人に1人で被害経験は7人に1人あるが、相手の女子に恐怖は感じていない。
平成19年の20歳から24歳の女子対象の調査によると、全国では110万人の出生、26万件の中絶、福岡県では4万6千人の出生、1万5千件の中絶という結果が出ている。対等な関係がないことが、人工妊娠中絶や性感染症の増加に関連があると考えられる。
DVがなくならない社会的背景として、
(1) 落ち度があれば多少の暴力は仕方がない、お酒が入っていたら仕方がないなどの暴力容認文化
(2) ジェンダー平等意識が浸透していない結果、男性らしさは身体的・性的・経済的な力を持っていること、女性らしさは男性に従うことなどといった、偏った過度の性別役割分担意識
(3) コミュニケーション力の不足がよくいわれるが、コミュニケーション能力は高くても、妻や恋人にはその能力を使う必要が無いと思っている場合がある。
デートDVの特徴は
(1) 虐待、支配、嫉妬を「愛情」と勘違いしやすい。
(2) 恋愛は苦しいもの、ロマンチックでドラマチックなものと思っている。
(3) おとなと子どものはざまの年代で独立心が強く、干渉されたくない、秘密を持ちたい、自由でいたいと思っている。
(4) 親子関係より彼氏や友人との関係が大事であると考えている、などが挙げられる。
デートDV解決には
(1) 同じ学校の場合、被害者が転居や寮へ入るなど物理的に距離をとることが有効である。
(2) 一緒に住んでいる場合や社会人との恋愛の場合は、引き離すことが重要である。
解決の手段として、
(1) メールや手紙などで別れることの意志の表明。
(2) 1人にしない工夫。
(3) 相手の親との話し合い。
(4) 相手の停学や休学を求める。
(5) ストーカー規制法の適用、接近禁止の仮処分申請などがある。
セイフティリスト(気持ちを整理するためにも有効)として、
(1) 言葉や行為の記録を残しておく。手紙やメールを保存し、メールは転送して保存しておく。
(2) 携帯は壊される恐れがあるのでデータの保存、予備が必要である。
(3) 傷の写真や診断書を取っておく。
(4) お金、身の回りの品などを他の場所に保管しておく。
(5) 友人、親戚、シェルターなど隠れる場所を確保しておく。
(6) DVセンターや警察などの相談実績を作る。
DV防止教育の目的は、
(1) 将来のDVカップルを減らすため、若い世代での被害を減らす。
(2) 被害・加害の自覚と暴力からの脱却。
(3) デートDVの被害に遭った際の相談相手として、3分の2が友達に相談していることから(2004年の調査結果)、生徒に知識を持たせる。
(4) 相談先の一覧表などの情報を知らせる。
実際の授業の流れ
(1) 質問表で自分のDV神話をチェックする。
(2) ロールプレイによって生徒同士で実演・実感する。
(3) パワーポイントスライドで基礎知識と対策、相談先の情報を学ぶ。
(4) 対等な関係を作るためのワークショップを行う。
(5) まとめ。
(6) 大学生が作ったDVDを視聴する。
(7) アンケートを実施する。
DV神話と二次被害
DV神話
(1) ストレスや飲酒が暴力の原因だ。→素面でも暴力をふるう。
(2) 身体暴力だけがDVだ。→いろいろなDV行為がある。
(3) 学歴や職業で差がある、失業などでおこる。→学歴や職業、失業が原因ではない。 4
(4) 叩かれる女性も悪い、女性の努力で暴力は減らせる。→努力しても効果が無い。
(5) 暴力がいやなら逃げるはず。→逃げられない。
(6) よく話し合えばよい。→話し合えないのがDV関係。
(7) 子どもに父親は必要だから離婚すべきではない。→子どもにとってDV環境は虐待だ。
※根拠のない、有害な思い込みが二次被害を招く。
二次被害の内容(相談先での二次被害が多い)
(1) 夫婦には我慢も必要、あなたも反省すべきだ。
(2) どこの夫婦(恋人)にもあることだ。
(3) あなたの態度が暴力を誘発しているのよ。
(4) あなたが変わらないと相手も変わらないよ。
(5) やきもちは愛しているからだ。
(6) どうして我慢しているの、別れるべきだ。
(7) こんなに助言しても聞き入れないあなたが悪い。
※DVの構造を理解することが必要である。
授業実施で配慮していること (1) DV家庭や、暴力を受けて育った生徒に配慮するために「非暴力の生き方を選べる」というメッセージを与える。
(2) 被害当事者を責めないなど配慮する。
(3) 加害当事者へ気付いて止めることができるというメッセージを与える。
(4) 傷ついても必ず回復する力があると伝える。
(5) 学校や先生と信頼関係を作るために時間を厳守し、守秘義務を果たす。
(6) 事前の打ち合わせや事後の報告を丁寧に行い、次年度につなげ、他学校へ広がるように努力する。
授業者に必要な資質
(1) DVについて理解を持ち、DV神話を払拭し、相談経験があることが望ましい。自己の問題を抱えていないこと。周囲との調整能力が必要である。
(2) 非暴力への確信を持つ。
(3) ジェンダーについて理解を持ち、ジェンダーバイアスを持たない。
(4) さまざまな状況の生徒へ気配りができる。
(5) 学校現場の教師と信頼関係を作ることができる。
今後の課題
(1) より早い啓発に効果があるので中学3年生へ広げる。
(2) 授業だけでなく、必ず相談・支援の窓口へとつなげる。
(3) 地域で支援のネットワークを構築していく。
(4) DVによる転入、転出への理解や、問題行動のある児童や生徒の背景にあるDVを察知するなど、DVについて学校全体が理解を深める必要性がある。
子どもたちに日頃から家族として大人として伝えておきたいこと
(1) つきあう相手を尊敬すること。
(2) 男女は平等、対等であること。
(3) 気持ちを言葉にして伝えることを習慣にする。
(4) いやなことにNOと言えるようにする。
(5) 非暴力の社会環境づくりをする。
(6) 親子の風通しをよくするために、日常の生活、食事、会話を大切にし、耳を傾け、信じ、味方になれる親になるよう努力する。
PDF版は、こちらからダウンロードできます。
KFAWアジア研究者ネットワーク第二回研究会(講演要旨)
「八幡東区における高齢者の居住問題」
- 日 時 2009年7月15日(水)18:00~20:00
- 場 所 北九州市立男女共同参画センター3F 会議室
- 講 師 九州国際大学副学長 湯浅 墾道
- 参加者 12人
北九州市の中でも特に人口流出と高齢化が進む八幡東区の現状と、今後どのような問題が発生するのか、それに対し行政や自治組織はどのように対応しようとしているのかについて発表していただきました。
【講演要旨】
問題点
1. 人口減少
2035 年の北九州市の人口は83万人になると予想されている。モノレール地区、折尾地区(学研都市)以外の地区の人口は減少している。人口は将来、都心から拡散し2地域に集積されるだろう。八幡東区は55,000人で2005年の人口の73%になると予想される。
2. 少子高齢化
八幡東区の老人人口の割合は2005年は28.3%であったが、2035年には37.5%となる。老人が老人を支える状況になっている。大蔵・皿倉校区などの10年間の推移を見ると世帯数は変わらないが人口は減少している。これは独居老人数が増えているためである。唯一、高見地区の人口が増加しており、これは新日鉄の旧幹部社宅跡地の再開発の成果であると考えられる。
3. 地形・急斜面地住宅
八幡東区には急斜面地住宅が多い。少ない平野部の大部分を製鉄所などの工業地帯が占め、平野部住宅地は新日鉄社宅などが利用し、民間利用余地が小さい。人口増加に伴う都市化の圧力は、山裾から斜面地へと移動し、高度成長期に開発された斜面住宅地の多くは道路基盤が脆弱であり、現在の建築基準法では建て替えが不可能である。特に枝光地区では空き家・空き地が増加しているが、犯罪の温床になるので行政の費用で菜園として貸し出すなどの取り組みがなされている。
4. 安全で安心な治安へ向けた枠組み
平成20年度の八幡東署刑法犯認知件数は999件と公表されており、人口比で割ると最も治安が悪い地域も示唆される。地域住民による空き地対策や、町づくりには限界がある。しかし自治体財政悪化のため、地域に行政コストを投入することも難しい。中期的に考えるとこの地域に暮らす住人に、平地に降りて来てもらわなければ対応ができないが、現在の法令上、高齢対策のために集団移転するというスキームはない。小泉政権以降の規制緩和のため行政サイドから規制をかけて集団移転させることは困難である。何らかのインセンティブをつけて移転してもらうということが考えられる。
対応へ向けた枠組み
1 住み替えインセンティブ意識調査
(平成18年度全国都市再生モデル調査「長寿命ストック型市街地地形の事業化調査」に関する意識調査のデータから 八幡東区内事業所に勤務する住民を中心として実施)
- 経済力の状況…世帯収入の状況は中央値が500万円~800万円
- 「郊外志向」が強く、中心市街地志向は弱い
- マンションに対する意識は、低層階は最も否定的で高層階は評価が二分される
- 定住意識は強い
- 自然との親和性の重視
などの結果がでた。住み替えはなかなか簡単にいかないことがわかる。
2 エリアマネジメントについて
定義は「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者などによる主体的な取り組み」(国土交通省ガイドライン)である。
ディベロッパーが快適で魅力に富む環境の創出や美しい街並みの形成、資産価値の保全・増進など、町全体の維持管理をし、ブランド力の形成、安全・安心な地域作り、伝統・文化の継承など、ソフトな領域や住民の自治活動など、地域全体のマネジメントを行う。日本では千葉県佐倉市のニュータウン、ユーカリが丘が最大規模である。八幡東区の桃園地区では新日鉄土地開発が新日鉄のアパート群跡地を再開発し、戸建分譲をし、管理をしている。(エリアマネジメントによる戸建分譲)
3 交通対策(平成21年度地方の元気再生事業)」
幹線交通を補う交通手段の工夫が必要である。
自治のあり方と多世代型の町づくり
1 団地・ニュータウンの失敗
全国的に都市の中の「限界集落」が問題になっている。高度成長期時代の団地やニュータウンでは65歳以上の高齢者が50%を超える地域も出てきている。(千里ニュータウン・多摩ニュータウンなど)。
北九州市企画市民局は「開発から数十年が経過したニュータウンを中心に、世代の偏りが顕著になっている。高齢化で弱まりつつある地域の機能を下支えする対策が必要になっている」と指摘している。
2 ワンルームマンション規制
東京23区ではワンルームマンション規制を打ち出した。地域に住んでいる住民の町づくりの担い手としての役割を考えた際、単身者は地域活動に参加しない傾向がある。エリアの年代が均一化すると地域の人口活動がいびつになってきて町づくりが成り立たない。そのために世帯人口構造の均質化を防ぐ方策が必要になってくる。
3 自治基本条例
自治基本条例が各自治体で作られ、北九州市も検討している。
住民の高齢化や、役員のなり手がないために解散する町内会も出てきており、地縁的団体による自治に限界が生じている。自治体は財政危機により自治体サービスの水準を下げているため、住民自治を促し、町づくり参画に責任を持つように条例に謳われている。自治基本条例は行政サービス低下の部分を住民参加で補うという方向性を持つ。
質疑応答・意見
(Q=参加者からの質問、A=湯浅先生回答、O=参加者の意見)
Q1 住み替えインセンティブ意識調査において中心市街地とマンションの低階層が不人気なのはなぜか。
A1中心市街地を繁華街とイメージしたのではないかと思う。マンションを好まないのは自然の豊かな所に住みたいという戸建て志向があるからだ。調査対象の中央値が50代だったので、もう少し世代を広く調査する必要があったと思う。30代の住居の決め方は子どもの学校の環境問題が重要な課題だ。
Q2 コンパクトシティのエリアサイズは。 A2 歩ける範囲、自転車で動ける範囲、公共交通機関で移動できる範囲などが考えられる。
コンパクトシティの考え方はヨーロッパからの直輸入で、城塞都市が基礎にある。
日本ではなかなか根付かないが、富山市と青森市が熱心に取り組んで成功している。富山市は路面電車の活用、青森市は市民を中心地に呼び戻すことを目的にしているが、成功の一因は両市とも積雪地域だということだ。除雪という行政サービスを通して地域拡大を防止している。
コンパクトシティの考え方の基礎は。
- 中心市街地空洞化防止
- 行政施設を集めて利便性を高める
- 道路コストがかからないようにする ④ 自然や環境保護のため低炭素社会を強調する、などである。
Q3 エリアマネジメントについてお聞きしたい。自治会や町内会の機能が限界に達したと言われ、子ども会も解散している現状で、民間のディベロッパーにマネジメントを任せるとなると財源はどうなるのか。A3 タウンマネジメント、エリアマネジメントなど、お金をかけてマネジメントをすることによって地価が上がり、財産価値が出てくる。高所得者が入ってくることが前提で開発している。新日鉄都市開発の戸建分譲は高所得者が対象となっている。月々の管理費もかかるが新日鉄がマネジメントをするということに安心感があって5000万円以上の戸建がよく売れている。東田地区も高見地区も同様で、マネジメントを上手にやれば、売れる。しかし開発する会社が潰れれば町は破綻する。
Q4 住宅は資産の一部だが、住み替えをする時の資産の値踏み、保障はどうなるのか。
住み替えたあとの資産価値はないに等しいため、火災時の消防車の進入や救命救急も困難だと感じていても、住み替えに至る道筋が見えずに住み続けている状況だと思うが。A4 固定資産税税制の見直しも必要になってくる。世代間ローンの場合、現状では住み替えの第一世代の負担が大きい。災害対策のスキームで考えなければならないという問題もある。
O1 北九州市の女性史を編纂した際、平地の少ない地域に官営の製鉄所を作ることについてさまざまな討論がなされたと聞いたが100年経った今、こういう形で露呈しているのかと思う。
O2 限界集落では医療や介護スペース、ライフサイクルの機能が限界に来ていると思う。
Q5 国土や、森林を守り災害を防ぐためにも、山村、過疎地に住み続けるべきだと思う。
山村、過疎地への行政サービスは市町村合併によって減少している現状で山村、過疎地の住み替えについてのお考えを聞きたい。A5
- 日本では国土が対などな条件で競争することは不可能だと思う。平野部に立地している大都市から何らかの財源を移転しなければ地方は自立できない。
- 自治体レベルで山村を保全している例がある。(例:横浜市の水源がある山梨県の道志村に、横浜市は財政支援をしている。)都市部の環境を守るためには山村保全の必要がある。都市は自立できないということを知ることができる。
- 限界集落の問題は人口の再生産ができるかどうかという点にある。大都会、特に東京は再生産ができていない。高齢世代が居なくなると廃村になるというのではなく、持続可能な集落であることが重要だ。限界集落が出てきたのは近世になってからで、江戸時代初期には耕地面積が限界に達したそうだ。人口圧力が減少すれば人が集まらなくなるのが自然とも言える。
Q6 有人離島が急速に無人離島になることは国土安定の視点から、どのように思われるか。A6 離島と山村地域の問題は分けて考える必要がある。無人離島は安全保障上の問題のためにも国が費用を投下していく必要がある。
O3 かつて、入り会いという制度があった。山里を共同で運営しながら生き延びてきた。特別、贅沢をしなければやっていける。そういう仕組みを見直す時ではないか。生きるという意味を見直す必要がある。
O4 むしろ、離島や過疎山村は医療保険サービについて緊急に意思決定しないといけない。医療者は人権を侵害する問題だと考えている。
O5 外国に流失している資金を国内の再整備のために還流できないかと思う。
O6 住民自治活動は引き受ける仕事が多すぎる構造になっている。やる気以前の問題で育児、仕事をしているものにはかなりの負担になる。
O7 行政がすべきことと住民がすべきことの洗い直しが必要だ。
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